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みえないものを、みる視点。

【ミャンマー訪問記#2】日常に根付く「祈り」

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ヤンゴン滞在でもっとも印象に残ったのは、シュエダゴン・パゴダ(Shwedagon Pagoda)で見た人々の姿である。シュエダゴン・パゴダは、ミャンマー仏教の総本山としてミャンマー人の聖地であり、最も有名な観光地でもある。夜に訪れると中央の塔がライトアップされていてとても美しい。この外壁は全部、金!さらに最上部には大量のダイヤが大量に埋め込まれているそうで、凄まじい豪華絢爛さ。

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中に入っていくと、いろんなタイプの仏像が設置されている。

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仏像の後光がLEDでチカチカと点滅している。このセンスはなんだか独特だが、それにしてもテクノロジーの取り入れ方がなんというか・・・言葉にならない怪しげな雰囲気である。

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ディスプレイを通した仏様に、現地の人々はみんな一心不乱に祈りを捧げている。宗教を媒介するメディアは時代とともに変わる。古くは印刷された教典もそうだったわけだしね。

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みんな座り込んで祈るだけでなく、のんびりとくつろいでいる様子がみえる。ミャンマー人は9割が仏教徒だそうで、みんな信心深い。スパイスワークス・ミャンマー社の若手社員たちも、週末に普通に祈りに来るんだそうだ。祈りにいくことはあたりまえに恋人達と出かけるデートコースでもあるそう。それくらいミャンマーの人々には、仏様にお祈りすることが日常に溶け込んでいる。そして寄付して徳を積んでいくそうで、なんと給料の半分ぐらいを寄付したりする人も多いとか。

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みんなの真剣さが伝染して、僕も思わず祈ってみた。

ちょっと離れたところには関根社長。

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出家して祈りを捧げる少年達。出家の仕組みはいろいろあるんだろうけど、多くの子供達は一生仏門に入るわけではなく、2〜3週の間だけ出家して、そこからまた俗世間の生活に戻るんだそうだ。

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涅槃仏もいくつか。とてもじゃないが、ジョークで寝転んで記念撮影できるような雰囲気ではなかった。恍惚として祈っている人達をみると、聖地に来て祈っているという、イマココの体験に没入していることがわかる。不謹慎を承知で言えば、このシュエダゴン・パゴダにたくさん設置されているさまざまな仏像群は、某テーマパークみたいなものなのかもしれないな。

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円陣でセルフィーする若者達。なお、スマホ率はとても高い。ここ2年ぐらいで急速に社会に浸透したそうだ。

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途中の通路は土産物屋が並んでいる。一通りゆっくりと見て寺院を後にした。

実に不思議な体験をした。日本では、特に我々の世代は宗教が起こした事件の影響もあって宗教に対して距離を置く人の方が多いが、ここまで当たり前に宗教が根付いている社会を見ると、自分の信仰心の無さが申し訳ない気にもなってくる。

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遠くからみたシュエダゴン・パゴダ。丘の上にあってその途中はずっとお店が建ち並んでいる。表参道みたいなものか。

 

ミャンマーは急速な経済発展によって急速な格差が生まれつつあるが、国民の不平不満が暴発したりしていないのは、こういった宗教という社会システムが機能しているからでもあるんだろう。その反面で、この国が抱えるロヒンギャの問題が示すように、信心深さは時として争いの種にもなる。宗教の存在は、実に人間らしさを示す。共通する物語を組織的に信じる力こそが、人類がここまで繁栄したり争ったりすることに直結しているのだ、と改めて思わされる。

 

【ミャンマー訪問記#1】ミャンマーでデザインワークショップを実施してきた

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2/20(火)、東南アジアのミャンマー連邦共和国でIA(情報設計)のワークショップを実施してきた。昨年から審査でお手伝いしているWIT Awardという若手クリエイター発掘のコンペの関連企画という位置づけである、昨年審査してながら表彰式に行けずに残念がっていたら、主催しているスパイスワークス社の関根社長が僕が行けるタイミングで場を用意してくださった。

 

WIT Award 2018 公式サイト

witaward.com

まだまだ発展途上中のミャンマー。安価な人件費を活かして先進国のIT企業によるオフショア開発は活発に行われている一方で、付加価値の高い仕事を生む機会、例えばクリエイターを育てるような教育の機会は極めて少ないという。そこで関根さんは、若手の人材発掘も兼ねてミャンマーの若者らを刺激する目標をつくり、彼らがクリエイティビティを発揮して自分たちの文化をつくっていくことをめざして、このWebデザインのコンペを立ち上げたそうだ。漢だ。

 

この日、朝からまず向かったのは、Spiceworks Myanmer社。

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社員の皆さんはみんな20代の若者達で、普段はWebのコーディング等を担当しているとのこと。彼らに僕が研究室でつくったカードソーティングゲームを体験してもらった。これは50種類の犬のカードを、犬カフェを企画するとしてどのようにまとまりと意味をつくりだすか、というIA(情報設計)のトレーニング用キットとして5年ぐらい前につくったもので、今もフリーで公開している。Webの実務に近くてあまり学習の機会が無いものが良いだろうな、と思ってチョイスしたのだけど、よく考えれば背景となる文化がそもそもだいぶ違う。

「犬カフェ・・・がそもそもわからないのでは」

「野犬ならその辺にいっぱいいます」

「犬とカフェで触れあうってのは身近ではなさそうですね」

「そもそもワークショップというものもほとんどありません」

「それは・・・どうなるんだろ」

「とりあえず、やってみるしか」

と関根さん達と悩んだあげく、「失敗上等、どんと来い」の精神でやってみることに。

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心配は杞憂に終わったようで、社員のみなさんはとても盛りあがっていた。ワークショップが盛りあがってくると、全員が自然に立ち上がってフロー状態になることがあるが、女の子チームは実際にそうなっていた。

 

その後、本番のワークショップ。こっちは公募なので他人同士のグループワークとなり、ぐっとハードルがあがる。

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今回のワークショップはFacebookで告知・参加者募集していた。なんと「興味有り」が1465人と、関心持つ人多いようで驚かされる。平日開催でこの数字。年齢24才以下という制限に怒りのコメントしている人もいた。この参加希望者からさらに絞って30数名に来てもらった。

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会場のMelia Yangonは、超がつく高級ホテル。隣では医学系の学会が開かれていたりする。ここの一室で開かれるという。

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ご覧の豪華さである。すごいw 

僕は日本でもこんな会場でワークショップやったことないぞ。

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通訳してくれたMyatminさん。Spiceworks Myanmerのマネージャーである。彼は日本語含めて5カ国語話せるそうだ。僕が適当に話したことの意を汲みながら上手にミャンマー語に翻訳してくれているようで、参加者のみなさんは混乱せずにすんだ。実にありがたい。

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そして午前中にリハーサルした際に体験してくれた社員の子達が、これまた上手にファシリテータをしてくれている!素晴らしい。

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このキットはかわいらしいイラストに騙されがちであるが、抽象的な「関わり合いの体験」を扱うため、けっこう頭をつかうワークである。でも、とても盛りあがっている。

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最後にグループごとにプレゼンテーション。みんな堂々とマイクで自分たちの企画を説明している。僕も一生懸命コメント返した。彼らにとっては未知のサービスでありながらも、ここでデザインすべきポイントは的確に伝わっていたようで嬉しい。

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えーっと、この若者達凄すぎないか(汗)

盲導犬視覚障害者の関係に見るように、犬と人間は相互関係を深めていくことができるわけだが、そういった「犬は傷ついた人間を勇気づけ、良きパートナーとなることができる」という着眼点を展開して、精神的な障害を持った人へのセラピーとなるような犬や、身体障害を持つ人と一緒に遊べるような小型の犬などにソートし直して、Beyond Impossibilitiesというさまざまな障害者を対象とした犬カフェサービスを提案している。プレゼンも圧倒的で、ところどころ翻訳してもらっただけでもしっかりと筋が通っていることがわかる。人間側の都合による消費的な体験ではなくて、それぞれの犬の持つ役割や関係性まで踏み込んでいるのが本当に素晴らしい。

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終了後、みんなで集合写真。

ミャンマーの若者達には、「きみらがミャンマーを紹介するコンテンツを作る場合でも、大事なことは同じだよ、観光名所の情報をただ羅列するのではなくて、ちゃんと見る人への価値を見出した上で編集しようぜ!」とメッセージ送った。

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そして帰り間際に、さきほどの優秀な若者達から記念撮影をお願いされた。聞くとYTU(ミャンマーで最も優れた学生の集まるヤンゴン工科大)の学生だそう。エンジニアの卵でありながら、初めて体験するデザインのワークショップでも才能を発揮するとはすごいね。

 

海外から呼んでもらってワークショップして現地に貢献できるというのは僕の人生でも大きな経験で、素晴らしい一日だった。参加者も喜んでくれたし、とりあえず成功したと言えるだろう。

通訳してくれたMyatminはデザイナーで、とても賢い人なので、今後は一人でもこのカードソーティングゲームのワークショップを実施できるはずだ。(すでにカードもスライドも翻訳済み。)でも外国からまるごと輸入するのではなく、ミャンマーの人々の身近な題材で作ったキットでやりたいね、それが自分たちのデザインの文化をつくることにつながるはずだから・・・とスタッフで振り返り、それを次の目標としておいた。

 

ミャンマーは急速な経済発展の最中で、今回の参加者達にもミャンマーをどんどん引っ張っていくような熱気が溢れていた。ミャンマー人の平均年齢は25才だという。そして日本は45才。熱気を感じる背後では、なんだか冷気を感じる。老いていく日本の今後のために、何か手を打っていかなければ、と思わされる。

 

 

デザイン態度論2018

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2/17(土)に、昨年度に引き続き、「デザイン態度論」(産業技術大学院大学履修証明プログラム人間中心デザイン:発展的知識編)を担当してきた。10:40〜18:00の4コマ連続という長丁場である。

 

最近少しづつ関心を持つ人が増えているような気もする、この「デザイン態度論」。日本で講義が行われているのは(今のところ)この産技大だけという状況なので、けっこう希少価値のある内容かとおもう。というわけで2限分のスライドをフルバージョンで公開してみる。「デザイン態度」とはいったい何のことか、おおまかに見えてくる・・・かもしれない。

 内容もまだまだβ版ながら、いつもは口頭で説明していることも今回はスライドで要点はわかるように書くことを増やしてみた。写真の版権は許諾取ってないものも多いため、1ヶ月ぐらいで消す予定。公開に踏み切っているのは、周囲から改良のためのフィードバックもらうためである。興味ある人はお早めにどうぞ。

 

以下授業のスナップ。3限は恒例のインプロ体験(上の写真)である。4限にはさまざまなデザインアプローチや問題対象を解説したのち、ウィキッド(厄介)な時事問題として「高校におけるデザイン教育」に関する社会的ジレンマを解説する。

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そして、履修生のみなさんに、僕がつくった高校の先生向けワークシートを試してもらった。

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名付けて、「先生たちが出題する前に、問題を見渡し、問いの粒度を検討することを支援するとともに、何をどこまでデザインするのか、を考える」ためのワークシート。産技大のみなさんはさすがにこういう系は手馴れているようで、みんな上手に進めている。テストしてみて、そこそこは使えそうなことは見えてきたので、もうちょっと検討してから、先生達に使ってみてもらう予定である。

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その後、グループでの対話を通して、子供達へのデザインの学びの場に自分の立ち位置から
できることを提案してもらう、というショートワークショップを実施。一人では限界のある様々な角度からのアイデアが一斉に聞けて役得である。

 

この日いろいろ用意したことは、決して業務にすぐ役立ちそうな話ではない。それでも履修生のみなさんが「大学院の講義らしく、普段暗黙になっていることが問いかけられるのがよい」ととても喜んで下さったことは、有り難いことである。死にそうになりながらも引き受けた甲斐があった・・・心から嬉しい。この場だけでなく、もうすこしスケールするようにちゃんと文章にすることを目指したい。

 

表紙デザイン決定!

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Motion Galleryのアップデートに書いたのを転載したものです。

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来週の入稿に向けて、ブックデザインが急ピッチで進んでいます。特色をアクセントに使った表紙のビジュアルは、渡辺先生が亡くなられた6月の星空と星座がモチーフになっており、きらめく星はひとつひとつ手作業で丁寧に並べられています。デザイナーの富田真弓さんの力作です。

 

見る人によって見え方や意味が変わる星空というモチーフは、さまざまな人と人によって作られるコミュニティのメタファとして、とてもマッチしているように思います。私(上平)は、このビジュアルを見て、「真砂なす 数なき星の 其の中に 吾に向ひて 光る星あり」という正岡子規の短歌を想起しました。書籍の中に収録されている渡辺さんの文章は、読む人それぞれにとって響く箇所は異なるでしょう。ご自分に向けて光るフレーズをつかまえるような気持ちで、表紙の星空を眺めて頂ければと思っております。

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先日行われた世話人会のミーティングの様子です。自分たちで本を作るというのはかなり大変な仕事で、上に掲載した表紙だけでなく、本文の文字組みなどを含めた書籍のデザイン、原稿の構成・細部の修正など編集作業などのスキルが必要になります。みなさまから頂きました資金は、印刷費だけでなくこういった専門的スキルへの謝金にも使わせて頂きたいと考えています。

クラウドファンディングの期間も残り1週間ほどとなりました。お陰様で多くの寄付を頂いていますが、普段SNSを見ない人には届いていないようで少々困っています。みなさまの身近に渡辺さんとご縁があった方がいらっしゃいましたら、是非このプロジェクトのことをお伝えしていただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いします。

 

motion-gallery.net

 

人をファンにさせるものは

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先日、渋谷を通った際に、ふと思い出して池尻大橋の住宅街の中にあるアパレルショップを訪問してみた。以前代表の木村昌史さんのインタビューを読んで気になっていたのだ。 ALL YOURSという名前の、びっくりするぐらい小さなお店である。試しに一着購入してみて、 着心地の良さも気に入ったけれども、それ以上に、多くの人がうすうすと感じていることを見抜いてそれを具体化していく木村さんのアクティビティが素晴らしくていっぺんに気に入ってしまった。

 

木村:例えば私服を着る回数って、最近では週2から週7になっている人が多いと思うんです。

長橋:確かに、働く際にスーツを着ない人が増えたかもしれません。
木村:はい。とはいえ、もともとアパレルウェアもファッションウェアも、基本的には休みである土日に着られる服として作られています。それが、産業構造の変化や働き方の多様化によって、スーツを着ない仕事の人が増えて、週7で私服を着るようになった。その結果、洋服の選び方が変わってきているんですよ。

 

人が何かを始める時のエネルギーって素晴らしいなって思ってて、うちの商品ってモチベーションをあげる服だと思ってる。
人が行動するきっかけが作りたいんですよね、生活の問題点を解決するきっかけを与えると言うか。そういうことをやりたいなぁって。

 <中略>

機械で作ってはいるけど、大量消費じゃない。ハンドメイドは幸せになれる人の人数が少ないんですよ。自分で作って売るから、自分しか儲からないし、買える人が超少ない。それをちょっとマスプロダクションにしてあげると、それで飯が食える人がすごい増えるんですよね。作ってる人、販売してる人、経営してる人。さらに買える人が増えるから、それで幸せになる人がすごく多い。

 

localdata.jp

 

ALL YOURSとDEEPER’S WEARは、「LIFE-SPEC」というコンセプトを提案する、世界で一番ダサいブランドです。
 

・外装のデザインをしない。
・トレンドを追わない。
・難しいことはしない。
・無駄なモノを作らない。

 
この事に細心の注意を払ってモノを作っています。
 
これは多分、他のブランドと大きくベクトルの違う考え方をしていると思います。
 
それは、僕らが洋服を「ファッション」として捉える事をやめて「洋服」=「道具」として考えているからです。

beinspiredglobal.com

 

引用したところだけでなく、どの発言も深いところを鋭く突いていていてとても面白い。改めて読み直しながら、こういう人がつくるものなら、次も購入しようかな、と思った。そして珍しく洋服買うときにそんなことを考えた自分の気持ちの変化を考えてみた。これが「ファンになる」という気持ちなのか?僕の場合は、自分の言葉を持っていてそれをアクティビティとして実践している人に弱いことに気付いた。その活動を応援したいのもある。つまりは、人をファンにさせるのは、購入者の背景ふくめ関係的になり立っていることであって、ブランド側が提供する要素に還元できるものではないな・・・というところまで考えた。

 

学食というサービスの明暗

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大学に入っている学食の運営会社が急遽倒産したそうで、野次馬根性丸出しで見に行ってみた。パートさんたちの怒号が飛びかい現場は混乱していた・・・ということもなく、春期休業中なので閑散としている。(ちょうど契約を終えたところだったそう。事業を続けられないのは事前に分かっていたのかも)

 

学食が経営厳しいというのは端から見ていてもよくわかる話だ。我々としても他人事ではない。食材も人件費も高騰しているのに学生相手に値上げするのも難しく、構造的に利益を上げにくいのは仕方ないところ。でももっと深刻に感じるのは、多くの学生にとっては「学食でも高い」んだそうで、それで昼食はどうしているかというとコンビニのでかいカップラーメン一つをスープまで平らげて済ませているのが大量にいるのである。健康に悪そうなことは言うまでもなく、あれをコンビニで定価で買うのは割高だろうに・・・。(外食費が高いデンマークの学生達はもっと工夫して食費を節約していたので、なおさら気になる)

 

まあそれはそれとして、今回書きたいのは別の話。学食といえば時々舞台裏を知る機会があって、今でもたまに思い出す記憶がある。

 

10年近く前のこと。ある演習の課題として、学生達が学食の経営者にインタビューしに行った。その時の記事に書かれていたその現場の努力に大変感動させられたことがあるのだ。(なお、それは学内ではもっとも美味しいお店の経営者(Oさん)で、今回倒産した業者ではない)

記事のデータが残っていたので、部分的に転載してみようと思う。

 

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<略>
では、学生はどのくらい学食を利用しているかご存知ですか?


 今では1万人の学生が毎日登校しているといいますよね?実際に学食を利用する人というのは、ここの食堂館と森永さんのところで300席ずつ、9号館に100席、あとはシダックスがあり、合計5000席くらいあるのかな。それらが満席になるかというと、今はどこも1回転しなんじゃないですかね。コンビニの利用が多いような気がします。昔は一日に3回転くらいしていたんですけれどね。
 はっきり言えば、学食は安く売るので最低でも2回転ぐらいしないと採算ラインに乗ってこないというのが現状で、ここも古いですけど、ここができた時にはスエヒロと森永の3つだったのです。学食が増えてきた時にコンビニができたせいで、1回転しかしなくなったので、採算ラインとしてはちょっとキツくなりました。だから、ある意味大学の協力がないとこの低価格を維持していくのは、難しくなってきています。

 

―――なるほど。確かに学食は他より値段が安くなっていて、学生でも手が出しやすくなっていますよね。その価格設定などはどのようにしているのですか?


 方向としてはいくつかあると思いますけど、まずは何を売りたいかということですね。例えば、うちのステーキ丼は500円でやっていますが、あれはたまたま偶然に安いステーキのお肉が手に入ることになったからです。まず、これをいくらで売るか。ステーキだったらスエヒロさんでは600~700円ぐらいで売っていますよね?うちでも700円で出したらどれほど売れるかって考えたら、出ないじゃないですか。それでは500円で売ったらかなり反響が出るのではって思ったので、まずは学生の感覚から見た価格を設定し、ではこれでやるには何を付けていったらいいかということを考えていくのです。だから、学生さんの感覚から見ていくらで売っていきたいかを常に考えています。
 あとは、うちがこういうメニューを出したいというのもあります。スペシャルの牛肉の赤ワインなどは、私のお店でこういうものやっていきたいということで出したメニューなのですが、そこからやっていくと550円になってしまいました。このように風なものを出したいというものから攻めていくのと、学生さんがいくらなら手を出しやすいか。370円に価格を設定したらどんなものが出せるのかと原価を計算していってそういうものは出せるのか。そういった2つの設定方法がありますね。

 

―――いつも学生視点でメニューや値段を考えておられるのですね。では、新しいメニューを作った時、どういう状況をクリアした場合にメニュー化されるのですか?


 それは中の設備にもよりますね。例えば、うちだったらスチームオーブンがなかったり、オーブンが2台中1台壊れてしまっていたりでフランスパンなどを焼く手段がなかったり、オーブンメニューがある程度限られてしまって、フライ物が多くなってしまっています。
 他には作業ですね。うちはカレーみたいにご飯をのせ、ル―をかけて終わりみたいなメニューじゃなくて、それに加えて唐揚げをのせたり、ソースをかけたり、仕上げに生クリームをかけるなどの最後の手作業が多いんですよ。だからカウンターがどうしても詰まってしまうのです。だから、本当は列が詰まらないような簡単なメニューにすればもっと早く出せるんじゃないかという気持ちもあるし、逆にひと手間ふた手間かけて美味しいメニューを作った方がやはりお客さんの視点から見たらいいのではという気持ちもあるので、相反するのですけどね。当初はカレーや定食が3つくらいとかしかなかったのですが、今は手をかけたものばかりになってきています。

 

―――手間かけるメニューが前より増えているのですね。ということは時代によってメニューも変わってきているということですか?


 そうですね。昔は定食が多かったのですが、15年前くらいに丼ブームがあって、何でもご飯にのっけていました。今時の若い人は一皿で済ませる、つまりおにぎりとかサンドイッチもそうですけど、何かをしながら食べる。そういう感覚になってきています。

 

―――ちなみに、ここでの一番人気は何ですか?


 日替わりのCランチですね。出かたは日によって違うのですが、唐揚げのおろしポン酢や和風おろしハンバーグ、ヒレカツはよく出ますね。学生さんはやっぱりお肉が好きなようです。

 

―――日替わりランチという、日によって違うメニューが一番人気であるというのは意外でした。それでは、過去に仕事をしていて思い出深かったことなどはありますか?


 長い歴史の中で色んな事がありました。今年の春に森永さんもぬけてしまったので、この大学の食堂の中でうちが一番古いんですよ。昭和22年に専大の校舎ができた時から入って一族で営業していますが、森永さんがなくなった時に時代の流れをつくづく感じましたね。他の食堂もでき、売り上げがガタンと減ってしまってガックリきたり、自分が考えたメニューが当たって喜んだりなど、やはりCABINを始めるにあたって色んな経緯がありましたが、最終的にうちにおはちが回ってきました。実はうちが手掛ける予定ではなかったのですが、設備が予定より小さくなってしまい、やる予定だった業者が「こんな小さい設備じゃ、やっぱりやっていけないよ」と言うので、オープンする半年前になって急遽うちに回ってきたのです。
 でも、うちも流石にあの設備を見て厳しいなと思いましたし、出来なかったらどうしよう、採算ベースにのらないんじゃないかなど、いろいろ考えていたら眠れなくなっていました。でも、設備が小さいことを利用して鉄板焼きをやったのです。「お客の目の前でジュージューと焼いていこうよ」、「どうせ設備が小さくてお客も少ないだろうから、じっくりとお客と向き合うようなメニューをやってみよう」ということでそれを始めた結果、本当に成功し、それと同時にこの成果が私の一つの誇りというか、自信になりましたね。ランチの中でもやはり鉄板焼きは一番人気ですね。

 

―――あの有名なメニューにも大きい思い出が秘められていることを聴き、つい感動してしまいました。<後略>

 

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学生達のライフスタイルの変化も見えて、エスノグラフィー的にも興味深いが、僕自身、このCABIN(食堂名)の鉄板焼きの話はとても印象深くて、今でもOさんの顔見るたびに思い出す。 

たしかに待っている場所からジュージューと強力な火で鉄板を炙っているのがよく見えて、それがまた食欲をそそるのだが、あれが狭さというマイナスポイントを活かすところから出発していたとは、本当に驚かされた。このような価値転換できる視点をもっているからこそ、お客さん達から長く愛されているのだろうと思う。

 

なお、ここはメニューにすかさず話題になっている時事ネタを取り入れるなど、仕事が早いことで有名でもある。

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たしか「豚キムチうどん」が話題になった翌日か翌々日ぐらい。これは食べたくなるよねぇ。

 

 もうひとつ、5年ほど前のこと。学内でのランチのサービスデザインの可能性を調べていたN君が研究室の時間にある調査結果を発表していた。学内のあちこちで販売されている弁当について学生たちに聞くと、「〜〜がダメだ」「〜〜もダメだ」「〜〜すればいいのに」と誰もがその場で数え切れないぐらいほど文句や願望を挙げる反面で、彼が自分でアポ取って話を聞きに行った業者の人は「課題に思っていること?うーん、特に何もないなぁ・・・」と他人事のように言っていたそうだ。「この両者の差!ギャップが面白すぎる」と解説するN君の話をみんなで笑ったことを思い出す。その業者こそ、今回倒産したところだった。

 

美味しく味わってもらうためにわざわざ一手間を加えたり、調理のプロセスを演出したりと経営努力を怠らない業者がおり、その一方で、全く利用客と向き合おうとしない業者がいる。今回の件は我々の大学の中だけの話でないにせよ、明暗を分けるのは結局自分たちの姿勢なのだな、と思わされる。

 

 

「FIELD MUSEUM2017:親子で遊べるカガクおもちゃのデザイン展」を開催します

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担当している2年生のデザイン演習「FILED MUSEUM」の成果発表会の準備を進めている。本年度のテーマは「カガクおもちゃ」。サイエンスの5つの領域(電磁気・光と音・動植物・力と運動・環境)について、遊ぶ楽しさから学びのきっかけをつくるおもちゃをチームで開発する、というものである。

 

演習前半で、集中的にインプットしている段階のことを10月頃に下記の記事に書いた。

kmhr.hatenablog.com

このFIELD MUSEUMは、地元の小学校およびサイエンスミュージアムとコラボしている地域協働のプロジェクトで、コミュニティを接続しながらデザインを進めていくことが特徴である。子供達と大学生の両者の関係がもっともよく表されているのが、この下の写真。

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小学生側は大学生のお兄さんお姉さんが教室にやってくることが嬉しくてたまらない。いつかこんな颯爽とした人になりたいという憧れをもつ。一方で大学生側は子供達に認めてもらえることを通して、この子達の力になりたいという気持ちが生みだされる。オーセンティック(本物)な状況だからこそ、他者との関わり合いに関する強い感情(※社会関係アージ)が発動されることになる。それがデザインに向かう「動機」を形成する。動機は最初からあるものでもなく、それを生み出す場をどうつくるかは、極めて重要である。

 

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その後、フィールドワークを含めて10種類のインプット活動を元に考察し、企画立案に進む。

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11月中旬の某日。中間プレゼンテーション。小学校の先生(提携している2年生の担任の方々)をお招きしてアドバイスをもらう。

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11月下旬の某日。学童を訪問してプロトタイプを用いて一緒に遊ぶ。予想出来ない子供達の遊び方からいろんな対策の必要に気付く。

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12月某日。リベンジとして再度学童を訪問する。うまく遊べないプロトタイプは、こどもたちからアドバイスをもらうw

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放課後の特権として、たっぷりの時間の中で真剣に遊んでくれるから、飽きないで繰り返すか、なぜ燃えるのか、そこにどんな要素があるのかをじっくりと観察することも出来る。

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そうして迎えた12/18(月)。小学校でのCoDesignワークショップ。大学生と子供達がいっしょにデザインを考える機会である。これは静電気の反発力を用いて滞空時間を競う遊び。みんな上手に浮かしていてビックリした。

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声で小さな粒を振動させ、グラドニ図形を作り出すおもちゃ。声の高低でさまざまなパターンが生成される。子供達うまく作れるのかなぁ、と大学生は心配していたが、いざやってみると、子供達の方が声は高いし肺の力も元気で、大学生より断然上手にパターンを作り出したというオチ。

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1〜4限をまるまる頂いたお陰でとても盛りあがった。記念写真をパチリ。子供達にもとても大きな経験になったようで、後日こどもたちが書いてくれた絵付きの感想文に、大学生達は思わず涙ぐんでいた。

 

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8つの「カガクおもちゃ」はこんな経緯で作られました。

この成果物の発表会を予定しています。お子様をお持ちのご家族だけでなく、どなたでも見学、体験できますので、是非お越し下さい。

 

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FIELD MUSEUM:親子で楽しむカガクおもちゃのデザイン展
2017年度応用演習(コンテンツデザイン)成果発表会

今年度は、遊ぶ楽しさからサイエンスの学びのきっかけをつくることを目的に、異なる5つの領域(電磁気・光と音・動植物・力と運動・環境)から「カガクおもちゃ」の開発を行いました。まだまだ稚拙なところもありますが、親子で楽しみながら体験的に学んでもらうことを目指して、学生たちが約5ヶ月間に渡って試行錯誤して辿り着いた成果です。

◉日時=2018年1月21日(日)10:30~15:00 
◉場所=かわさき宙と緑の科学館 2F学習室
◉主催=専修大学ネットワーク情報学部コンテンツデザインラボ
◉共催=川崎市教育委員会

◉協力=かわさき宙と緑の科学館 川崎市立N小学校 川崎市社会福祉事業団 川崎市多摩区

 

 出品作品
#1「とってこ」飛ばして学ぼうテコの原理
#2 「へんしん!あじさいちゃん」ふしぎ!色が変わるアジサイおりがみ
#3「いきもの双六」みみずからタカを目指せ!
#4 「LIGHT ADVENTURE」 くらやみから脱出しよう!
#5「プロペラクラフト」"くるぺら"をつくってとばそう!
#6「マグネスト」じしゃくマスターへのみち
#7「せいでんきっず」きみも静電気をつかってまほうつかいになろう
#8「サウンドマジック」声でつくる星空のもよう
 

 

 

 

18歳の藤子不二雄

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本棚の整理をしていて「UTOPIA 最後の世界大戦」の復刻版をみつけた。オリジナルは1958年で、これは2011年に復刻された際に購入したもの。

藤子不二雄の単行本デビュー作品として知られ、多くの逸話を持つ「UTOPIA 最後の世界大戦」。原本は世界に10数冊しか現存せず、オークションに出品されれば数百万はくだらない。この伝説といえる単行本が、小学館クリエイティブによって完全復刻された。

UTOPIA (1/3) - コミックナタリー 特集・インタビュー

 

パラパラと読んでいると、ハックスリーの「素晴らしい新世界」に着想を得ていることはよくわかるけれども、半世紀前の少年が考えたSFとは思えない話で驚いた。上のコマの「ところが、人間自身はほとんど進化しなかったんだ!」とか、半世紀経った今読んでみると、知りたくはないがまっとうな事実であることが辛い。

 

ちなみにこの漫画、藤子不二雄Aの「まんが道」の中で若き日の二人が情熱を燃やしながら描く作中漫画としても知られている。当時二人は18歳か・・・。

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(「まんが道」2巻P221より)

彼らの若き日のエピソードを読む度に、「夢中になることの意味」を改めて思い出し、中年になってしまった自分は気が引き締まるのである。

 

 

初めてのクラウドファンディングに挑戦中

motion-gallery.net

ここ数ヶ月ほどまわりの方々の力をお借りしつつ初めてのクラウドファンディングに挑戦している。故・渡辺保史さんの遺稿をオンデマンド出版するというプロジェクトで、渡辺さんと生前関係のあった方を中心に資金があつまり、なんとか当初の目標を達成できそうなところまで来ることが出来た。

 

それにしても、クラウドファンディングがこんなに大変だとは実際に経験してみて始めて知った。本のデザインはデザイナーさんに、内容は編集者さんにお願いすることができたので、あとはプロジェクト進行の雑用程度かと思っていたけれども、資金を出していただく重さと引き替えに細々したタスクが非常に多く発生する。度々心が折れそうになるが、このようなプロジェクトに関する経験値を得たことでよしとしよう。

 

何故、ただでさえ通常業務でオーバーフローしているのに、無償でそんなプロジェクトを起こしているんだろう?と時々僕は自問自答する。いろいろ混じっているので自分でもよくわからない。答えは大きく3つあるように思う。

 ひとつめは、自分自身の言動に対する責任感からである。この本を心待ちにするあまり、渡辺さんにお会いする度に「早く出して下さいよ」と催促していたのに、彼が亡くなった後、ある筋から遺稿のデータを分けていただき、ちゃっかり読んでながらその後に何も行動を起こさないというのは、さすがに心が痛んだ。彼が論じた「自分たち事」という言葉は、僕一人だけがこっそり持っていたところで全く意味がないのだ。そして数年前の空気感の中で渡辺さんが命を削りながら論じたことは、いつのまにか今の時代をぴったりと言い当てるようなキーワードになっているように僕は感じている。及ばずながら渡辺さんの後ろを追いかけ、同じようなフィールドで活動している自分としては、今の時代に生きる我々を力づけるであろう彼の文章を、できるだけ早く必要としている人に届けたい・・・という思いがあった。

 ふたつめ。人間はひとりひとりの個人の力は小さいからこそ、協働してコトを成す。何かをデザインしていくために「まずは"自発的に"誰かが動くからこそ、小さな力が連鎖して大きな動きへと変化していく」ということが僕の考えなのだが、これは渡辺さんの本の内容にも通じる話。そういった連鎖は本当に起こるのかをこのプロジェクトで実証してみるため、である。

 みっつめ。僕自身ももうすぐ渡辺さんの亡くなった年に並んでしまう。だからこそ、ゴール間際で力尽きた彼の無念は他人事ではない、ということもある。 

 

 このブログの読者の皆様も、是非ページをご覧頂き御関心ももたれましたら、どうぞよろしくお願いします。残り一ヶ月ほどは受付中です。


そして出版記念イベントも企画中です。

 

■日時 2018年3月17日(土)午後 or 夜 予定(2〜3時間程度)
■場所 都内予定
■内容 1)プロジェクトの説明、2)「自分たち事」をめぐる対談、3)みんなでつくる渡辺保史ストーリーなど。

 

「みんなでつくる渡辺保史ストーリー」は、参加者それぞれの渡辺さんとの関わりや思い出話を彼の活動タイムラインとしてみんなでつくり、共有するという試み。(渡辺さんが紹介したワーマンのLATCHの原則のひとつ、時間軸による整理でもある)

 

ドラえもんは実験漫画である

子供が借りてきた藤子・F・不二雄全集「どらえもん」をパラパラ見ていたら、あとがきのページでふと目が止まった。

のび太に起きる困難に対してドラえもんがヒョイと便利な道具を出すのが教育的に好ましくない、という批判に対してF氏が反論したもの。とてもいい指摘だったのでメモがてら一部引用してみる。

 ドラえもんは一種の実験漫画と言えます。常識的に考えられない様な珍道具が、もし日常生活の中に出てきたら・・・と、そこから空想を発展させていく漫画なのです。主題は、その珍道具が日常生活に及ぼすナンセンスな影響にあります。珍道具の入手方法ではありません。だから限られたページ数の中では、極力早く珍道具を登場させることが必要条件なのです。ポケットからヒョイと取り出すのは、この目的に沿った効率的手段です。効率的であることが悪いことであるとは思いません。社会の進歩が有史以来、労働時間の短縮とそれとは一見矛盾する所得の増加という方向に流れているのは周知の事実です。人類はそのために努力してきたと言えるでしょう。

 もし、ほんとにタイムマシンやタケコプターやどこでもドアが手に入るなら、僕はそのためにどんな努力も苦労もいとわないでしょう。親愛なる小さな読者諸君もきっとそうだと思いますよ。

 藤子不二雄自選集4(1981)より

F氏はメディアの制約の中で、道具によって新しく構成される状況こそを描いていたのだ。 なるほど。この反論を読むと、便利道具がすぐ手に入るのが「安直だ」という批判は筋が違うことがよくわかる。