Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

銃撃テロから一年

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コペンハーゲン市中央図書館の向かいにあるユダヤ礼拝堂にて。2月14日は、連続銃撃テロから一周した日。どのくらい関連があったのかはわからないけど、ここでも同日に銃撃事件があり、犯人が死亡している。たくさんの花が捧げられていた。

賑やかな通りもすぐ近くで、春の頃のピリピリした雰囲気はすっかり消えているようにみえるけど、右傾化するひとつのきっかけでもあったのだろうな。

 

沢山の人がこうして花を捧げているのを眺めていると、“その人のことをどこかのだれかが覚えているまでは、その人はこの世に存在している”という話を思い出す。

 

本物のハッカースペースの匂い:Labitat

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2月9日(火)の夜、コペンハーゲンに本格的なハッカースペースがあると噂を聞いてやってきた。ホントにここなのかな?というような人気のない通りを抜けたビルの半地下の案内看板を発見。ここがあのLabitatか。

怪しげな倉庫のような中を潜っていくと・・・。

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中はかなり気合いの入った開発の現場!ハッカー達が秘密基地の中でワイワイと集まってなにやら制作してる。この人達からは本物のコンピュータオタクの匂いが充満している。実に暑苦しい。

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この日は火曜で、19:00からビジターのためのガイドツアーがあったので、僕もそれにあわせて訪問したんだが、なんと他のオタクの方々に混じって女子中学生も二人参加している。この子達はきっとスーパーハッカーになるだろう。

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あちこちに面白い仕掛けが自作されている。冷蔵庫に入ってるコーラを重さで認識してお金を払う仕組み。いろいろ自動化していてハイテクだが、結局は内側にある缶に小銭を投入するというオチまで面白い。

ステッカーにチームラボを発見。メイカーの高須さんが来られたことがあるのか(下の記事)。

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ハッカーの皆さんの夕食はピザ一枚とか、ポップコーンボール一杯とか不健康そうで笑った。でも僕らのような一見さんでも気軽に会話できて楽しかったし、デモベースでどんどん会話が弾んでいるのは素晴らしかった。ここにはいいコミュニティができているようだ。

 

なにやら秘密基地のような場所かと思っていたが、たまたま今日のランチ会でここに出入りしているという話をきいたので、地元では結構知られているようだ。

 

codezine.jp

 

youtu.be

 

語りにくいものを"遊び"化する

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先日,エグモントホイスコーレンに行った際に紹介してもらったゲーム.デンマーク語なのでなにかは分からないが,ちゃんと大きな箱に入っていて一見普通に市販されているボードゲームに見えるだろう.実はこれ,社会性に障害のある人達のための「性教育のためのボードゲーム」で,デンマーク性教育が専門の先生達が自主的に企画してつくったものなんだそうだ.対象年齢は思春期の13歳から18歳.

spektrumshop.dk

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箱の中には質問カードと基盤のボード.サイコロを振ってコマを進めていく.クエスチョンマークのコマに止まったらクエスチョンマークのカードの山から一枚ひく,カードには,性の知識に関する質問が書かれていて自分が答えなくてはならない.また,ダイアログマークのコマの場合には,ダイアログマークのカードの山から一枚引いてみんなで議論する,というシンプルなルールである.質問カードの内容はここに書けないほど実にきわどいが,確かにちゃんと知っておかなければならないことだ.

 

・通常の社会性を持っている子ども達の場合は,性に関する知識は普通に友人や恋人の間などで非公式に学んでいくことができるが,障害のある場合はなかなかそういう(一般人には当たり前かもしれない)知識をもつことも難しいことが多い.

 

・そういうこと(性に関する知識)を先生が教えた時にはクラスの雰囲気が気まずくなるし,先生も教えたくないけど,ゲームにして生徒達に主導権を与えると,みんな途端に盛りあがるらしい.先生は学生達が出した答えを再度問い掛けながら正しい知識に導く,という役回りに変わることになる.何よりも先生の重い心の負担がハッピーになるというのは実に興味深い.

 

・障害の有無とは関係なく,普通の子達でも,さらには男女混成のグループでやっても,デンマークの生徒達は実にオープンに「性」について語り合って盛りあがるらしい.ここは建前とか世間体を気にする日本の子とはちょっと状況違うかもな,と思った.でも今日本でも少子化が問題になっているが,こどもを産める時期やそれに関連した人生設計に関しては早いうちから知っておく必要があるだろう.だからこういうゲームは日本でも重要な意味を持つかもしれない.

 

・さてこれを翻訳して日本で展開したい,とエグモントの先生はおっしゃっているが,日本でこのゲームに関心を持つ先生方はいらっしゃるだろうか?

(もし,いらっしゃいましたら,メールでご連絡ください)

 

 

 

北欧でCoDesignを学ぶには

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先日,ブログを読んでいただいている方からお便りを頂いた.

最近はブログのようなオープンな場で情報を公開することが下火になっていることもあり,日本語で読める留学関連の生の情報は多くないと思う.というわけで他にもそういうことに関心がある人がいると想定して,そのままお返事するのではなく,ちゃっかりブログのコンテンツにしてしまおうという作戦である.

 

 

質問は二つあったので,まず第一弾.

「(北欧で)実践的にCo-Designを学べるコース・教育機関について」

Co-Designや参加型デザインはデザインアプローチであって,サービスとかプロダクトとかのアウトプットを指しているわけではありません.そういうわけで純粋に学べるところは限られていますが,関連在りそうな教育機関をリスト化してみたいと思います.

 

■デザインスクールで学ぶ:

デンマークには伝統的なデザインスクールは3つしかありません.いずれも難関のようですが,日本人も時々在籍している(いた)人を聞くので,それなりに可能性はあるのだと思います.

 

1)王立デザインスクール CoDesign専攻

ここは伝統的な美大カラーが強いところですので,理論も多いCoDesignは特殊な位置づけとして存在していると思います.しかしながら教授のThomasもEvaも第一人者で,学生もあちこちの国から集まっています.

※残念ながらCoDesign専攻はデンマークの国の教育予算削減を受けて2017年夏をもって閉鎖されてしまいました。

 

2)コリングデザインスクール

ユトランド半島のコリングという小さな街にあるデザインスクールです.近年学長のリーダシップのもとでソーシャルイノベーションに力を入れていて,学校全体で社会性のある問題に切り込んでいます.アウトプットがとてもレベル高くて個人的にはとても評価している学校です。

※ここの学校改革で成果を上げた学長のエリザベスが2019年夏で退任したようで、その後同じような路線になるかは不明です。

 

3)オーフス建築スクール Social innovationスタジオ

デンマーク第二の街,オーフスにある建築学校の中にSocial innovationのスタジオがあります.卒業制作展をみる限り、社会性も高くてレベル高いです。

 

 

■大学で学ぶ

デンマークでは9つしか(本当の意味での)大学はないのですが,医科大を除いて全ての大学に参加型デザインにルーツを持つ情報・ビジネス系の専攻があります.これは参加型デザインが学問的に探求されているスカンジナビアの国が持つ独自の文化だと言えるでしょう.下のリストは教育組織ではなく研究組織も混じっていますが,専門の先生がいるということは小さくてもどこかの専攻の中で学べるだろう,ということでまとめました.


4) コペンハーゲン大学 Center for IT innovation
5) オーフス大学  Participatory Information Technology
6) 南デンマーク大学 IT Product Design
7) オールボー大学コペンハーゲン校 Service system design
 オールボー大学 Human Centered Health Informatics & Participation
8) ロスキレ大学 User driven IT innovation
9) デンマーク工科大学 Design&innovation
10) コペンハーゲンIT大学 Interaction design
11) コペンハーゲンビジネススクール Design and Entrepreneurship

 

 

 

■プライベートスクールで学ぶ

世界的に知られている私立の少人数制スクールです.学位がどう扱われるのかが不明ですが,それぞれの分野で教育の質はとても高いですし,築ける人脈は大きいようです.

12) Copenhagen Institute of Interaction Design
13) Kaos Pilot

 

■ユニバーシティカレッジで学ぶ

デンマークの高等教育は2007年に再編されて,UniversityとUniversity Collegeに住み分けされました.Universityはグローバルを意識した研究大学で,University Collegeは専門職大学で地域や専門的な仕事に関わる人材育成の教育を主に行っているようです.11校あるこの教育機関でもデザインを学べるところがあります.

University colleges in Denmark - Wikipedia, the free encyclopedia

 

■フォルケホイスコーレで学ぶ

デンマーク独自の国民学校です.ここも学位がでるわけではないですが,半年ほどの滞在で濃い異文化体験をしたいなら面白い所だと思います.いくつかデザインに特化した学校もあります.

hyggelig-news.com

フォルケホイスコーレ一覧
※タブで選択して目的の学校を探すことが出来ます.

danishfolkhighschools.com

 

 

■その他の国の場合

 スウェーデンでは,

14) Malmo university K3

15) Umeo Institute of Design

16) Göteborg University, School of Design and Crafts

 あたりでしょうか.

 

 オランダでは,

17)Design Academy Eindhoven Social Design

が面白そうです.(kamihira_log記事).

 

他の国の情報は申し訳ありませんが僕もほとんど知りませんので,マスターの学位を出す教育機関を探すポータルサイトを紹介します.(すでにご存じでしたらすみません)1年で修士号を取れるというお得なのは英国以外では少ないようですね.

www.mastersportal.eu

www.findamasters.com

 

 

 さて,ここまでリストアップしたところで,いくつかコメントしたいと思います.

 

◎ここまでまとめるまでは僕もよく分かってませんでしたが,「Co-Design / Participatory Designが学べる」ことと「Social Innovation / Social Designが学べる」ことはけっこう違います.デンマークでは対話カルチャーが根付いているので何を学ぶにおいても社会民主主義の精神は関連してくると思いますが,前者が専門に学べる教育機関はあまり無いようです.ただ濃いところは濃い実践と理論化を行っています.オーフス大のPITからITUに移ってきた僕の同僚は「Participatory Aesthetic(参加の美学)」というものを専門に掲げていてそんなものまであるのかと驚きました.

 

◎そして各学校でプラスの点やマイナスな点もいくつか見聞きしたことがありますが,僕やその人の思い違いであることも多いかもしれませんし,関係者が読んで気持ちいいものではなく,文字にしておくことで公式情報になってしまいそうですのであえて記載してません.

 

◎ちなみに北欧の大学院に,日本みたいな少人数制で教員と濃いやりとりをする,みたいなことを過剰に期待しないほうがよいように思います.マスプロ授業も多いですし,教員との距離も日本ほど近くないことが多いようです.

 

◎CoDesignは基本的に現地の参加者との議論や対話がものすごく大事になってきますので,コミュニケーションの問題がとても大きくなります.英語は日本人には大きなハンデですが,言葉が拙くても例えばさくっと図がかけるとか,いい写真を取れるとか,ビジュアルのスキルがカバーしてくれることも多いですので,流暢に喋るのが難しければそういうスキルを身につけておくと自分の役割を持ちやすいですし,チームに貢献できることも増えるかもしれません.(僕はその作戦を強く意識しました)

 

◎僕はもうデザインの専門分野の知識はだいたい持っていた(?)ので何かカリキュラムにそって授業受けようという気にはなれませんでしたが,上のリストから今の時点で僕が留学することを選ぶとするなら・・・,Malmo大学のK3でしょうか.この答えはかなり主観入っているので参考にはならないと思いますが,ここは僕が知るかぎりフィールドと大学の関係がベストです.Malmoはもともと多国籍な街なのに,昨年積極的に受けいれた難民がかなり深刻な問題になっています.中には9割が移民というとんでもない地区もあるそうで,そういうバラバラな国の人々を繋いで街の共同体をどうつくっていくのかという問題には,街の人々が積極的に取り組んでいる印象を受けますし,そこにはCoDesignの知見が大きく貢献できるでしょう.そんな場所におけるデザインの可能性を見たい,という好奇心が一点,もう一点は,Malmo大学のMEDEAというリサーチグループは参加型デザインの一大拠点でもあって優れたアクティビストが何人も在籍しています.彼らのMalmoでの活動は「Making Future」という本にまとめられていますが,社会と大学が協働してつくりあげている活動は素晴らしいと思います.

impactdesignhub.org

 

◎日本でのネームバリューと面白い学校は必ずしも一致しません.学校と学校のある街をあわせて考えるとちょっと広がりを持ってみえてくるでしょうし,1年間色々なヨーロッパの街を見て回って,大都市よりも小さな街の方が興味深い活動をしているように思いました.

 

まだまだ書き足りない気もしますが,以上で終わります.質問の第二弾は「いわゆる"デザイン"のバックグラウンドがない者ができることには,例えばどんなことがあるのか」については,また時間を見つけて書いてみたいと思います.

 

遠い遠い出口

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中央駅近くに行った際に,受刑者たちによるカフェ,CafeExitを再び訪問してみた.

昨年の秋に一回訪問したものの,ちゃんと話聞けなかったことが心残りだったのだ.

kmhr.hatenablog.com

 

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ここはカフェでありながらコーヒー無料だ.見るからにカタギではない感じの,コワモテの二人がなにやら料理している.受刑者の本物の雰囲気にビビリながらも話を聞けないか交渉してみた.

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マイケルというお兄さんがいろいろ話を聞かせてくれた.

 

ここは受刑者と対話できる場である・・・とは言っても実際にはなかなか一般の人は来ないらしく,社会から取り残されてしまった受刑者同士の交流の場として利用されているそうだ.彼は○○(伏せておく)の犯罪で半年牢屋に入っていて,そのあと半年の期限でペンション(?)にいれられているという.この間は日本で言う保護観察みたいなもので自由に外出はできるが,ここで再犯すると再び牢屋に戻ることになるらしい.仕事があるわけでもないのでこうやって気晴らしに来ている,そうだ.

 

デンマークの受刑者は暇なので刑務所でもペンションでもみんな絵を描くらしい.スマホに撮りためている自分で描いた絵の写真(見るからに凶悪な内面世界と葛藤しているモチーフばかり)をたくさん見せてくれた.絵を描くと言うことには,表現することで自分と向き合うセラピーの意味もあるからこそ推奨されているのだと思う.そして何かに打ち込めることがあるということは精神状態が不安定な時には大事なことだ.こんな風にアートを活用しているとは思わなかった.

 

ここ(CafeExit)で何か面白い経験したことがあったら教えてくれないか,と聞いたらしばらく考えたあと,ぽつりと「無いな」と寂しそうに答えてくれた.

 

こういった受刑者の社会復帰を支援する団体や施設があるということは評価できることだが,それでも一般社会とはかなり距離が遠いようだ.このカフェは「出口」という名前で,すぐ近くは繁華街の喧噪だというのにとても孤独な空間に見えてきた.

 

受刑者と対話できるカフェ.というコンセプトを最初に聞いた時には驚いたものだが,さすがにデンマークでも一部の支援者以外が接点をもっているわけではない.そのあたりの感覚をちゃんと一次情報で確かめることができたのは収穫だった.

 

デンマーク人はレゴを水のように使う

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2月21日,レゴワールドがコペンハーゲンに期間限定でオープン(2/18〜21)したので子供達を連れて遊びに行ってみた.会場は大学の近くのBella Center.このヘンな建物はその北欧最大のコンベンションセンターである.

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広い会場は凄まじい量のレゴ! みんな狂ったようにレゴと戯れている.もっと混んでいるかとおもったが,意外なことに来客数は大したことはない感じだ.

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レゴによる巨大ピタゴラ装置.これをビー玉ぐらいのボールがエンドレスで回り続ける.思わず見とれた.

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スターウォーズ関連のブース.

この人数でライトセーバーを振り回して遊ぶらしい.

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レゴブロックのプール.よく見ると水色のグラデーションになっているのと,プール脇に置いてあるリゾートチェアが細かい.親はここで寝転びながら子ども達を見ている

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レゴマインドストームも今はかなり進化しているんだな.この蛇ロボットはスマホでコントロールして戦ったり出来る.

ところで僕は一番レゴ・シリアスプレイを見たかったんだが,あれは大人向けなので今回の展示では用意されてないそうだ.残念.

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プロダクションエリア.この機械ではレゴ人形のフィグの足のパーツが自動的に組み立てられる.

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レーザカッターでレゴのパーツに名前を刻んでお土産にしてくれるコーナー.

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一番笑ったコーナー.雨具を着用して通るウォークスルー.しかし水ではなく,降っているのはレゴの小さなパーツ!

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上の子が挑戦したが,細かいレゴが頭上からバシバシ当たってとても痛そうだ.

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真っ赤なレゴのコーナー.ここは大きな建物を作るという縛りがあったのかな.

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ビフォーアフターで比較.帰り間際の風景.人力で街に変わっている.

 

しかし,こう「水のように」大量のレゴを用意することで子供だけでなく大人も本気を出せるというのは素晴らしいことだ.無限の創造性を開放するためには,小さな赤バケツごときで満足してはいけないんだろう.レゴはデンマーク人の大人にとっても,子供の頃から親しんだ大事なアイデンティティとなっているようで,そんな世代を越えた共通言語があることは本当に羨ましい.

 

この日の感想:

1)下の子が本格的にイヤイヤ期で手が付けられない.5歳以上の遊具に乗れないことを悔しがって地団駄をふんで大泣きし,展示専用のレゴの電車に乗れないと言って大泣きし・・・.もはや「なぜ世の中は俺様の思い通りにならないんだ」と言わんばかり.

 

2)おむつ替えに行って戻ったら,こんどは上の子が行方不明に.この日は妻は一緒ではなく僕だけだったので,反抗しまくる下の子を連れて会場内を慌てて探し回った.30分ほど探して見つからず,ギブアップして近くのスタッフに相談して会場のインフォメーションまで一緒にいく.すると「Rくんなら保護されているよ」とのことで,指定されたコンベンションセンターの受付までいったら,ガラスの向こうでスタッフさんに遊んでもらって楽しそうにお絵かきしていた.僕とはぐれたことに気付いて,自力でスタッフに「お父さんがいなくなりました.僕の名前はRで,お父さんの名前はxxです」とデンマーク語で伝えたらしい.彼は時々行方不明になるのだが,いつの間にそんな成長したのだ・・・.

 

というわけで僕の場合はレゴを本気で楽しむどころでなくて,元気盛りの男の子の世話でとても疲れた.

 

プロトタイプをテストする

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エグモントホイスコーレンの学生さんたちに協力してもらって,現在制作中のツールキットのテストしてみた.エグモントは障害者のみなさんと健常者のみなさんが24時間生活しており,リアルな生活の状況から新しい発見をする,ことを可能にする場としてかなりよい条件を備えている場所なので,ここでテストできるのはとてもうれしいことである.

さて,何をつくったのか簡単に書くと,リビングラボのような,「デザインのための問題発見の環境をどうつくるか」を専門家と一般の参加者がいっしょに考えることを支援するツールで,

1)10のキーワードを組み込んだ,触れるインフォグラフィックス

2)それを解釈しながら作っていくための質問カード

からなるディスカッションゲームである.答えを用意してあるわけではなくて,話しながら「気がついてなかったこと」「考えなければならないこと」にだんだんと気付いていく・・・ような体験になることを想定したものである.

非常に抽象度が高いことを扱っているので若者達には難しいだろうな,とおもっていたが,やっぱり難しかったようだ.でも,実際にやってみることでいろんなことがわかるわけで,ものすごく沢山の収穫があった.

 

なんとかこの結果をまとめて発表したいところ.さて間に合うか.

ここのところ,薄めのブログ記事しかかけてないのはそういう理由なのです.

 

 

「ズレ」をデザインする

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バスや電車の座席付近で展開されているDet er go stil(それがクール)というシリーズが面白い.

上のステッカーには,「ペットを乗せるのは歓迎だけど,床に座らせるかバッグの中にいれてくださいね」と書いてある.文章はわかるが,なぜピクトグラムが恐竜なのだw

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 面白かったので他のも収集してみる.

 「席をゆずらないのは,宇宙にいるときぐらい」

 

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「あなたはこのスペースにふさわしい」

(ちょっと高くなっていて一番目立つ席にて)

 

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「音量下げYo.かっこよくないYo」

(for larmenとfor charmenで韻を踏んでいる)

 

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「笑顔は,ブーメランのようなもの」

 

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「ラッシュ時こそ,ちょっとづつピンポンのようにずらせばみんな快適になる」

(ピンポンというのはやりとりが連鎖していく喩えらしい)

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 「揺れるときには,ちいさい子を支えてあげましょう」

 (と言っておきながら,ピクトでは小さい本が大きい本を支えている)

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「ロングライフなものには,ちょっとの特権を与えるべきです」

 

こう言ったマナーを呼びかけるにあたって,ストレートに言うよりもちょっとひねりを加えるのは日本でもよく行われているが,あらかじめズレをつくっておくことで,ついだれかに話したくなる要素,すなわちある種の“ツッコミビリティ”を感じられるのが面白い.コミュニケーションにはそういったズレをデザインすることも大事だ.

 

翻訳には,デンマーク語わかる日本人やデンマーク人2名に協力していただいたが,どなたかおかしいところあったら教えて下さい.

 

このシリーズに気付かせて頂いたMさんSさん,ありがとうございます.

 

無理なく社会問題に貢献するレストラン

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2月11日(木),メディア学が専門のM先生がソーシャルデザインの調査にコペンハーゲンに来られたので,気になっているレストランに一緒に行ってみた.昨年の秋に地元っ子のMaiさんから教えてもらったのだが,なかなか行く機会がなかったのだ.

 

賞味期限切れの食材を使ったレストラン,Rub & Stubという店である.

rocketnews24.com

「それってお腹壊さないの?」「全然大丈夫,私の周りには壊した人はいない」とのことだったので,M先生にもお腹弱くないかを確認した上で食べにいくことに.

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夕方の開店と同時だったのであまりお客さんはいなかったが,帰る頃には結構埋まっていたのでそれなりに人気あるんだろう.接客も素晴らしかった.

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普通にとても美味しい料理で,廃棄食材だとは言われてもまったくわからない.彩りも素晴らしい.お値段は,スープとメインにビールをつけて200DKK(3500円)ぐらい.デンマークにしてはかなり安い方だ.

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壁にコンセプトを書いてあった.

1,提携しているお店から廃棄予定の食材を寄付してもらう.

2,その食材をボランティアが運ぶ

3,ボランティアが料理する.

4,ボランティアがその日のメニューからオーダーをとり,サーブする.(※当日のメニューはその日に集められた食材によって決められる)

5,売り上げは、議論した上で寄付先(例えば難民支援)を決めることができる.

 

つまり,材料も人件費も無料で,我々が払ったお金はシリア難民の人々への寄付にまわる,ということか.

(※全部の食材が廃棄食品というわけではないらしい)

 

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もう一枚のパネルには特徴をまとめてある.

非営利,ボランティア,日替わりメニュー,お代わり可.持ち帰り可.だそうだ.

 

なるほど.お客さんは普通にレストランで食事したのと同じ美味しい経験を得て相応の対価をはらう(僕も寄付したとは思ってなかった),ボランティアたちは難民キャンプまでいかなくても、実生活の中でスキルを活かして働いてお金を稼げる.そして寄付しようにも持ち合わせがなかったとしても,実際に寄付できる.店が繁盛すればするほど,大量に発生している食品ロスは減り,難民は救われる.

うむ,うまい,誰一人無理なことをしていないし,こまかく分業することで持続性のあるモデルが作られている.

 

こういった「無理をせず」「それぞれが小さな行動範囲で出来ること」はソーシャルデザインのセオリーであるとも言えるけども,ちゃんと噛み合う仕組みをつくるのはなかなか難しいものだ.社会貢献というとなにか苦しいことをしなければならないという強迫観念にとらわれている人も多そうだが,そういうわけでもなく,アイデア次第なのである.

 

日本でも食品ロスは大きな問題だが,日本だとこのレストランのコンセプトはどう捉えられるんだろうな.

 

www.spisrubogstub.dk

 

どうやって街の情報収集をするか?

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コペンハーゲンは小さな街なので,「地球の歩き方」レベルの観光目線で街を歩くと1週間も滞在すると見るところが無くなってしまう.そんなわけで日本からデザインを勉強したい,と期待して視察にやってきても,ミュージアムやショップ以外の面白い場所を探すのはなかなか難しいと思う.たまに「どうやって情報みつけているんですか?」と聞かれるのでちょっと書いてみたい.

僕の場合,人づてに聞くことは多いけど,やっぱり基本はフィールドワークだったように思う.面白い場所には情報も人もあつまってくるものだ.まずは気になった場所に突撃してみてそこから広げていく,という方法が一番好きだったし.実際,RasmusともRosaとも出かけた先で偶然出会って,そこからオフィスを訪問して話を広げることができた.

 

もっとも大きな出会いだったと言っても過言ではないArki_labのRasmusとの出会いはこんな感じ.

kmhr.hatenablog.com

 

上の写真は4月にNさんと一緒に来たコワーキングスペースのRepubkken.

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この間ここのカフェに行った際にStart Up Guide Copenhagenというマイナーな本を手に入れた.コペンハーゲンのスタートアップシーンについて,どの場所にどんなカルチャーがあるか,今どんなユニークなビジネスが立ち上げられているか,などのホットな情報がまとめられている.外国人はなかなかこういうのが見えないが,こういう本をうまく見つけられると「街の中でみかけたアレはそういうことだったのか」と観光ではない面白さが倍増するので便利である.

 

startupguide.world