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みえないものを、みる視点。

習慣を自然につくるには

先日、卒業研究発表会で子供の片付けをテーマにしている学生と話したあとに考えたこと。片付けは一時的に整頓して解決するようなものではなく、日々のルーチンとして「習慣」を作ることの意味が大きい。たとえば、収納する場所をつくること、その対応を覚えること、タスクが切り替わるときに片付けモードを思考に組み込むことなど。経験デザインの対象としては、一時的にハッピーな気持ちになる、というものに比べて地味だし結構難易度が高いものと言えるけれど、たまに感心するような事例に出会うことがある。

 

先日、うちの3歳児が歌っていて知った、「あわあわ手あらいのうた」(ビオレ)は大変良くできていると思った。手洗いの最中に歌を歌いながらあわせてポーズをとっていくと、終わる頃には洗い残しのない手洗いができるというもの。

 

youtu.be

あわあわ手あらいのうた | ハンドシリーズ | ビオレu | 花王株式会社

どうやら2011年頃につくられた映像のようだが、なにより凄いのがまだちゃんと読み書きも出来ない小さな子供たちが最後までフルコーラスで歌えて、自分から楽しそうに進んでやる、という動機までデザインできていることだ。

歌→ストーリー→ポーズ→手洗い→感染防止 が同時に成り立っているわけだが、本当は逆なんだろう。特に小さな子供にとってはもともと身体経験は一体なのだ。

 

年長組ぐらいになるとクラス全体で30分ほどの演劇ができるようになるが、台本もないのに全員がセリフを完全に覚えられているのも、個別の言葉ではなく一連のストーリーのあるパフォーマンスをステージ全体の位置づけでつかむかららしい。たしかに気を付けて観察すると、ひとつひとつのセリフを発する際にはオーバーなほどのふるまいが同時に行われている。子供に方法をインタビューしてみたら、やはり「個別のシーンじゃなくて、ストーリーの最初から最後までを、遠し稽古としてくりかえしくりかえしやる」とのことだった。

 

考えてみれば学生時代の勉強の工夫だって同じようなポイントがあった気がする。書くなり発話するなり物語にするなり、個別の知識ではなく複合的に捉えることが大事だというのはみんな経験していることだ。そうして全体として捉えることで自然に身体化されて習慣にもなっていく。日々パソコンに向かっていると、たまにそういうあたりまえのことを忘れそうになる。

目をあわさないコミュニケーション

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2/5(日)は用事の合間を縫って横浜まで、慶応SFC加藤研の「フィールドワーク展:たんぽぽ」を見に行ってきた。学生達の研究も大変密度が高くて素晴らしかったのだが、加藤先生自身の活動もいろんな取り組みが僕よりも何歩も早くて、活動を知る度に驚きと悔しさを同時に感じる。例えば、来年学生達と屋台をやってみようって計画を進めていたら、それは「カレーキャラバン(の影響)だね」と同僚の先生に見抜かれてしまうし、その話を加藤先生に話したら、「いや屋台はでかいから、なんだかんだで機動力に難がある。だから屋台じゃなくて僕は今『おかもち』やっている。これならどこでも持って行ける」とあっさり新作を目の前に出されてしまった。

うう。おかもちが「出前」の意味合いをもったままコミュニケーションを生む道具に変化するとは。しかもおしゃれだ。写真はOkamochi ABSINTHE(フランスのリキュール) 。

 

 

vimeo.com

こちらはおかもちコーヒー。(Okamochi Coffee) 素晴らしい。

 

で、「学生達が『自分たちはコミュ障だけど、ワークショップでなら街の人達と喋れる気がする、それを通してコミュニケーションを生む場をつくりたい、なんて健気なこといっているんですよね」という話していたら、加藤先生が「それはとても大事なことで、例えば料理していれば、目をあわさなくても済むじゃないか!」と(カレーの鍋で肉を一生懸命炒めながら)仰っていて、ものすごく納得した。

 

なるほど同じ状況を共有しながらも目をあわさなくても済むから、ドライブ中の運転席と助手席の会話は気楽なのか。逆に言えば目をあわさなければならない状況はコミュニケーションの逃げ道がないから圧力(プレッシャー)が高まるわけだ。バーベキューや料理教室のような、なにか別のものを一緒を見ながら会話が起こる場が最近の男女の出会いのきっかけとして流行しているのも繋がる気がする。

 

帰り道にぼんやりと場を分類するためのマトリックスが浮かんだのだが、そういえば10年前にそんな共同研究をしていたことを思い出した。

皆さんも実感したことがあるかと思いますが、マテリアルがなく「会話自体がコンテンツ」となるコミュニケーションの形態では、お互いの立場がすでに決まっていることが多くて親密なコミュニケーションは生まれにくいでしょう。

 しかし、食事などのリラックスした場に「ごはん」というマテリアルがある場合は、それがコミュニケーションを発生させる要素となり、活発な会話が生まれてお互いの親密度がアップするのです。

 (「テーブルを介したコミュニケーション分布図」。観察調査は、専修大学ネットワーク情報学部の上平崇仁准教授と同学部の学生の協力を得て実施された

テーブルを介したコミュニケーションデザイン − @IT

 

過去の経験をもう一度分解して、アップデートする必要があるな。

 

あと、「継続課題」は以前自分も学生に出したことがあるのだが、自分はやってなかったので挑戦してみよう。春休み期間が終わる(3/31)まで、簡単な記事でも1日1本をブログ書いてみるか。

 

加藤先生、そして加藤研究会のみなさん、大変素晴らしい研究発表で刺激になりました。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

16年前の小さな接点

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年末に開かれたコミケに同僚のHくんが行くというので、お願いして小さな特製本を買ってきてもらった。売れっ子の写真家である著者による最初で最後の教則本だそう。

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twitterで質問を受け付け、それに対する返答というかたちでコンパクトにまとめられたもので、まあインターネットで全部公開されているものだから一部紹介しても怒られはしないだろう。このページのやりとりが一番笑った。たしかに雰囲気に逃げないで「ちゃんと」撮る練習するのが上達の一番の近道だと僕も思う。

 

さて、実は僕はこの著者とは16年ほど前に小さな接点がある。当時、僕は助手として東京工芸大芸術学部に勤め始めた頃で、写真学科の1年生にデジタル表現の基礎(いわゆるAdobeソフトの入門みたいな奴)を教える授業を持つことになった。始めて持ったその授業にいたのが彼だった。その頃から写真に向き合う姿勢はとても真摯だったし、写真学科の全体講評の際には先生方にも議論を挑んだりする挑戦的なところがあって、同世代のクラスメイトたちからはちょっと浮いているところがあったように思う。なぜか所属学科も建物も違う僕の研究室にはよく遊びに来てくれて、一緒に本厚木に酒飲みに行って写真や現代アート談義をしたりした。

 

その後、僕は大学を移り、彼は卒業してプロの写真家になった。そしてあっという間に駆け上がるように一流になっていき、もう気軽に話せる関係でもなくなり、僕は遠くから1ファンとして活躍を眺めているだけになってしまった。彼の仕事は、ウェブサイト(SUZUKI Shin photographs)で見ることが出来る。たぶん誰でも見たことがあるような影響力のある広告ばかりだ。さらにクライアントワークだけでなく写真家として自分の活動も精力的に行っているところもすごい。

 

そんな彼が自分のノウハウをまとめた教則本を(コミケで売るためにw)作ったというので、それは是非手に入れなきゃ、となった次第。

 

Hくんに「もし彼が俺のことを覚えていたら、よろしく伝えておいて」とお願いしていたところ・・・。

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なんとサインじゃなくて思い出のメッセージをくれた。ひねりをいれるところまで変わっていない・・・!(涙)

 

彼が書いているのは「デジャ=ヴュ (第14号) 『プロヴォーク』の時代」amazonでも結構なプレミアついている。この号で特集されていたのが僕の好きなアーティストのアンゼルム・キーファーだった。たしかにそういえば彼に勧めて貸したんだっけ、ずいぶん昔のことなのにちゃんと覚えてくれているものだなぁ。

 

彼だけじゃなくて、昔は学生だった若者達が立派な姿で活躍している姿を見ると、嬉しい反面で自分も頑張らなきゃと思わされる。なによりも、人は毎日変わるものだからこそ、だれが何をきっかけにしてどう化けるか、誰にもわからないし、今は「まだ何者でもない」若者達に日々接することに対して、気が引き締まる思いがする。

防犯装置としての隣人

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この記事をお読みのみなさんに質問です。あなたは、日本の都市部のスタバでパソコンを広げて、たくさんのメールに返事してる最中に、ふとトイレに行きたくなったとします。さて、このような状況になった時、どうしますか?

 

1)そのまま放置して行く

2)怖いのでノートパソコンをトイレまで持って行く

3)隣の人に「パソコンを見ててもらえますか」とお願いする

 

日本人だと1)が多そうな気がするが、もちろんそんなことをしていると他の国では速攻で盗難されてしまうだろう。安全な日本でも盗まれないとは限らない。海外で日本人が盗難に遭いやすいのはそういう環境に慣れて気がゆるんでいるからでもある。かといって、2)もなかなか面倒くさい。そもそもトイレまで持って行ったとして一体パソコンはどこにおかれるのか。

 

デンマーク図書館では、みんな3)の手段をとっていた。前の人や隣の人に監視をお願いしてから、席を立つのである。地元の人から頼まれて戻ってきてお礼いってくれるのは、ちょっと信用されている気がして嬉しかったことを覚えている。話によるとイギリスでもみんなそうしているらしい。

 

というわけで、僕はノートパソコン(もっと正確に言うと中身の情報)が心配だったので、3)を試してみることにした。同じようにパソコンで作業していた隣のビジネスマンは急に話しかけられて心底びっくりした顔だったが、お願いを聞くと、快く「いいですよ」と言ってくれた。面白かったのが、それをきっかけに軽いやりとりが始まったことだ。日本ではカフェで他人同士が会話することは極めて珍しい。そして30分ほど経って先に向こうが去るときには「じゃ」と笑顔で別れの挨拶してくれた。

 

こういう時、我々の発想では、「他人には決して迷惑をかけてはならない」という社会通念がまっさきに発動されるし、そうでなくても「パソコンは心配だけど声をかけにくい」という理由もあったりして、解決策としては人が関わる必要のないデバイスとかアプリで人工物をつくる方向に行ってしまうような気がする。でも、こういう時に隣の人という(適当な?)リソースを使うという方向もあったりするわけだ。

 

実際に試してみたら、見知らぬ隣人は快く協力してくれたし、それをきっかけに会話が起こり、カフェらしい一期一会の交流があった。我々は他人との干渉を避けるあまり、他人にお願いする先にそういうことが起こることをほとんど知らないのではないか、という気がしないでもない。

トークイベント:「デザイン思考“以後”と、クリエイティビティの行方」開催のお知らせ

周辺の方々の声を受けて、トークイベントを企画してみました。時代は刻々と変わる中でデザインのありかたも少しづつ変わっていきます。そんな中で見落とされがちなことや今うっすらと立ち上がりつつあるようなことなど、まだ体系化されていないようなことを議論したいという考えです。すぐお仕事に役立つようなお話しではないですが、思索的なテーマに関心をお持ちのみなさま、是非ご参加下さい。

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21世紀に入って広まった「デザイン思考」という言葉は、社会の多くの領域に影響をあたえました。これまでデザインがあまり重視されてこなかった領域や組織の人々にも、創造的な問題解決の可能性を広げた功績は大きいといえるでしょう。

 しかしながら、ふりかえってみて日本の社会において期待されたような進展があったかと問われれば疑問が残ります。たしかに、近年多数のデザイン関連書籍が出版され、失敗の少ないデザインの方法を試すことは容易になりました。その一方で、デザインという行為は形式知のみで構成されているわけではなく、視野を拡げて俯瞰してみると、あちこちに「語られにくい問い」や「見落とされている視点」が存在しているように思われます。

 そこで、本トークイベントを企画しました。デザインという概念そのものが、時代と共に流れる水のようなダイナミズムを携えており、絶え間なく問い続けることが重要です。デザイン思考という言葉から新鮮さが消えた現在のタイミングだからこそ、これまで言語化されてきたことを越えた立場で、改めて人々の創造性に対するクリティカルな議論ができるはずです。それらの論点や課題を洗い出すことで、今後のあるべき社会を描いていくための手がかりも見えてくるのではないでしょうか。

 ここでは、デザイン理論にも詳しく、かつ新しいデザイン領域を拓くことに挑まれてこられた第一線の実務者の方々をお招きし、それぞれの立場から、狭義のデザイン思考では語られることが少なかった視点から話題を提供して頂きます。その話題をもとに、次の段階に進むためのステップとして参加者の皆様を交えて深く議論出来ればと思います。また、ただ聴くだけではなく議論に参加しやすくするためにiPadを用いたビジュアルミーティングの方法を取り入れ、当日の議論に反映していく予定です。このような思索的なテーマに御関心をお持ちの皆様、ふるってご参加下さい。

 

 

■日時

2017年2月24日

■会場

インターナショナルリエゾンセンター(東京ミッドタウン・デザインHUB内)

 

■プログラム

 

1)はじめに

  開催主旨:上平崇仁

  ビジュアルミーティングについて:富田誠

 

2)話題提供(トーク15分+質疑5分)

・佐宗邦威(株式会社ビオトープ 代表取締役):有機的変化のデザイン(仮)

・武山政直(慶應義塾大学経済学部 教授):「欧州の政策デザインにみるアプローチの変化」(仮)

・柴田厳朗(GKデザインリサーチイニシアティブ 取締役)「野生・その他・異邦の鳥」

 

3)参加者のみなさまとのオープンディスカッション (軽食しながら)

 

 

■登壇者紹介

佐宗邦威 株式会社ビオトープ 代表取締役

東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけた後、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニー(株)クリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。B to C消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザインやサービスデザインプロジェクトを得意としている。「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」著者。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授

 

武山政直 慶應義塾大学経済学部教授・コンサルタント

慶應義塾大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科に進学。1992 年カリフォルニア大学サンタバーバラ校大学院に留学後Ph.D.取得。2003年より慶應義塾大学経済学部准教授に就任。2008年より同教授。都市メディア論、マーケティング論を背景に、ICTを活用したサービスデザインの研究に着手。サービスロジックに基づく事業イノベーションをテーマに、企業と顧客の価値共創プラットフォームの構築など、産学共同プロジェクトを多数推進。同時に企業研修やコンサルティングにも従事。2013年、サービスデザインの国際機関SDNの日本支部設立、共同代表に就任。

 

柴田厳朗 GKデザインリサーチイニシアティブ 取締役

1986年にGKインダストリアルデザイン研究所に入社後、博覧会展示企画、地域開発調査、商品開発等に携わったのち、2000年から2007年までGKデザインヨーロッパ(アムステルダム)にて、欧州人デザイナーとの共創型デザインプロジェクトのマネジメントやデザイン調査を担当。現在はデザインリサーチ、プロダクトイノベーションブランディング領域を中心にプロジェクトを推進。一橋大学社会学部卒業、イリノイ工科大学 Institute of DesignにてMaster of Design Methods修了。共訳著に「現代デザイン事典 -変容をつづけるデザインの諸相-」(鹿島出版会)。

 

■ビジュアルミーティング ファシリテーター

富田誠 東海大教養学部専任講師

武蔵野美術大学 基礎デザイン学科卒業、早稲田大学大学院 国際情報通信研究科修了。IT&デザイン系のスタートアップ創業、早稲田大学政治学研究科 助手などを経て、現在は、東海大学教養学部芸術学科専任講師、早稲田大学ジャーナリズムコース非常勤講師。専門は情報デザイン、特に情報の視覚化とデザインプロセス。

 

■企画 / モデレーター

上平崇仁 専修大学ネットワーク情報学部教授

鹿児島県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了後、グラフィックデザイナー、東京工芸大学芸術学部助手を経て、2004年専修大学赴任。2012年より現職。情報デザインの教育・研究を行う。近年は社会性への視点を強め、デザイナーだけでは手に負えない複雑な問題を人々の相互作用の中で創造的に解決していくための協働デザイン(CoDesign)の仕組みづくりについて取り組んでいる。2015-16にはコペンハーゲンIT大学インタラクションデザインリサーチグループの客員研究員として、北欧流参加型デザインの現場で調査研究を実施。人間中心設計専門家。

 

■お申し込み

peatixからチケットを購入できます。

満席になりました。(1/30 12:10追記)

peatix.com

 

■主催

専修大学上平研究室

 

■協力

公益財団法人日本デザイン振興会、株式会社ACTANT、株式会社Biotope、東海大学専修大学

 

 

親の意識を変えていくための試み

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1/24のお昼頃、横浜市の小学校で保護者向けに講演してきた。お世話になっている「さかえdeつながるアート」という市民コミュニティからの依頼で、なかなかない貴重な機会である。というわけで「不確実な未来において、子どもたちが自分自身の生き方をつくっていくために:北欧社会とデザインの視点から日本の教育の可能性を考える」という題目でお話ししてみた。

 

講演内容としては、不確実な社会の中でのリスクの考え方や、未来の社会での能力をどう捉えるか、といったようなこと。人工知能の発達で今後、仕事内容が大きく置き換わっていくと煽られることが多いけれども、そんな未来の社会では、自動化されにくい"知"として創造性や社会的知性が重みを持ってくる。このふたつの能力をいっぺんに育てるためにも、子供達も社会に出てデザインをする/学ぶことは意味があるのでは、というようなストーリー。もちろん一方的に聞いてもらうだけではなく、簡単なワークもやってもらう(こういう時には、普段やっていることの積み重ねが活用できてよい)。

 

さかえdeつながるアートさんは、JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)神奈川支部と連携して、過去にあまり取り組まれてない中学生向けのデザイン教育の場を作るために「ティーンズクリエイション展」や関連ワークショップを開催したりと、とても興味深い活動をされている。

sakaeart.exblog.jp

そういう場を重ねてこられた中で、「子供がデザインを学ぶことはもちろん大事だけど・・・やっぱり親の理解が無いと、いくら機会作ったところで創造力はうまく育たないし、親の考え方こそが変わらないことには流れはなかなか変わっていかないね」というシニカルな意見がでることもあって、そこで議論が止まってしまうことが何度かあったそう。そこで今回の講演が企画されたという経緯だそうだ。

 

たしかに、子供たちにとって親は直接的なステークホルダーなのであって、なにはともあれ、「親の意識を変える」ための機会を作ってみよう、という試みは賞賛に値する。ちょっと一部の人にお話ししたぐらいでその大役を果たせたかは微妙なところだけど、まずは第一歩を進められたということを前向きに捉えたい。

 

実は、僕はこの前の週から気管支炎を発症してて体調は最悪。1時間以上も喋れるのか、と自分自身思えなかったが、やっぱり途中から声が出なくなり、息も絶え絶えになり、聞いている皆さんにもご迷惑をかけてしまった。体調管理は大事だ。ついでに写真を取り忘れた。

 

「不確実な未来において、
子どもたちが自分自身の生き方をつくっていくために
~北欧社会とデザインの視点から日本の教育の可能性を考える~」

 

◎日時:平成29年1月24日(火)11時~12時30分
◎会場:栄区小山台小学校
◎講師:専修大学  ネットワーク情報学部 教授 上平崇仁氏
◎主催:さかえdeつながるアート 
   ※さかえdeつながるアートは、2008年より栄区で地域とアートをつなげる活動をしている市民グループです。
◎共催:小山台小学校PTA
         ティーンズクリエイション組織委員会
  ※神奈川県内のデザイン団体メンバーと栄区内の学校、青少年施設、
   地域活動団体関係者による、子どもたちの豊かな未来を考える委員会。
◎協力:横浜市立小山台小学校
◎助成:横浜市地域文化サポート事業「ヨコハマアートサイト2016」
◎問合せ・申込み:さかえdeつながるアート事務局

 

 

他者が手助けすることでまわる仕組み

 

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最近書いていて面白いのは「オブザベーション」カテゴリである。オブザベーション(観察)はあたりまえのものごとを微細に見てデザインの発想源にするトレーニングとして知られているが、僕の場合は特に現象の背後にある「見えない因果関係」を見いだすことに関心を持っていて、そこにブログコンテンツの独自性を作ろうとしている。そういうわけでこのブログのタグラインは「見えないものを、見る視点」なのだ。

 

というわけで、今回のネタは、昨夏、ロンドンを訪問した際に地下鉄に乗ったときのこと。

kmhr.hatenablog.com

この時に、TUBE MAPを実際に見ることが出来て心からうれしかったのだが(上記の記事)、同時にバリアだらけで旧世代の地下鉄構内の様子に絶句した。エレベータどころかエスカレータがない駅も多く、僕らはたびたびベビーカーを担いで階段を昇った。我々のは日本製の軽くて小さなベビーカーであり、まだマシなほうで、ヨーロッパのベビーカーはかなり大型で重量もあり、女性一人で手で持てるようなものではない。デンマークは街の隅々まで車椅子もベビーカーもアクセス出来るバリアフリーが浸透していたので、欧州といっても整備具合は国によっても随分違うんだなぁ、と思ったことをよく覚えている。

 

あの整備の悪さは問題にならないのか・・・という話をイギリス人に会った時にしてみたところ、「うん、良い質問だ。ちなみにロンドンでは、ベビーカー押して移動する際は、通常はバスを使う。バスも発達しているからね。だからTUBEに乗るのはよっぽどそうしなきゃならない時だけになる。ではそういう時にバリアにどう対処するかというと、"みんなで持ち上げる"と言う方法でカバーしているんだ。イギリスの男はたちは誰もが、それこそ腕に入れ墨入れているガラの悪そうな兄貴まで、階段で困っている人がいたらみんな協力する。それでちゃんと回っているんだから、それほど問題無いだろう?」というようなことを教えてもらった。

 

全ての選択肢をアクセシブルにせず住み分けさせることと、どうしても必要なら他人同士で手助けしあうというソリューション。考えてみれば、人々が協力しあうマインドによってカバー出来るのなら、人工物化するという方法ばかりが最適解というわけではない。

 

じゃあそのマインドはどうつくるんだ、ってのが最大の問題だが。イギリス人の場合は、社会全体で、「Knightship(日本語でいえば騎士精神?)」という、他者に対してふるまうべき規範を作りだしたのだろう。安藤先生が提唱している利他的UXってのも似たところを見通そうとしている気がした。

 

レゴ本店での写真

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下書きのまま残っていた記事(写真だけ)を発見したんだが、何を書きたかったんだっけ・・・。

 

この写真はコペンハーゲンのストロイエ(一番華やかな歩行者天国)の一等地にあるレゴ本店。レゴパーツを量り売りしているコーナーがある、レゴの突起を模したディスプレイが素晴らしい。へぇ、と思ったけど、日本にもすでに5箇所あるらしい。

 

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フィグをお好みの組み合わせで買えるコーナー。ここはみんな真剣に選んでいるので、なかなか近づけない。でも3体で59.95DKK(約1000円)はちょっと高いね。

 

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レゴのロゴ変遷。1953の頃のロゴから今に繋がるテイストを感じるが、リファインが繰り返されているのだな。

 

レゴ関連記事。

kmhr.hatenablog.com

kmhr.hatenablog.com

 

大学生と小学生がいっしょにデザインする試み

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12/19(月)、後期でいちばん力を入れていた2年生のコンテンツデザイン演習で近隣の小学校へ。午前中をまるまる頂いて小学6年生の全4クラスに学生達がワークショップを実施した。

 

この演習はもう10年間小学校と提携して実施しているもので、同僚のK先生と一緒に育ててきたが、今年からやりかたを大幅に切り替えてみた。これまでは理科の教材を開発して「ユーザー」として子供達につかってもらうというのがゴールだったのを、今年からは子供達の役割を「パートナー」という位置づけに変え、地元民代表として参加してもらいながら協働デザインアプローチで学習キットを開発することにしたのである。

 

概念図としては以下の通り。

 

http://www.ne.senshu-u.ac.jp/~cd/2016/cd_log/image/about/fm_model2.png

 

About | FIELD MUSEUM 2016 | コンテンツデザイン応用演習

 

豊かな自然の中には、机の上では学べないことがたくさん存在しています。
フィールドミュージアムでは、この自然をまるごとミュージアムに見立てて、その中で実際に体験しながら自然の仕組みに気づき、サイエンスの学びを促すことができる楽しい学習キットの作成を目指しています。
ミュージアムの舞台となる生田緑地は、首都圏では珍しい自然環境が多く残されており、季節ごとの変化が楽しめるスポットです。

「生田緑地」、「自然科学」、「情報技術」の関わり合いの中で、いかに子ども達の好奇心を刺激し、創造的な体験をかたちづくるのか。そして、いかにしてお互いの視点の違いを知り、協力しながらデザインを進めることができるのか。私たちは学習キット製作を通して、これらの課題に挑戦していきます。

 

とはいえ、双方とも授業時間がふんだんにあるわけではないので、公式な授業だけでなく、同じ敷地内にある学童施設にも協力してもらった。こちらは放課後なので授業中の借り物のような姿でない、生のこどもたちの性格が見える。

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11月某日の様子。

何度も学生達と放課後に訪問して、子供達と交流を深めながら使ってみる。大学生達がくると子供達も大喜びだ。虹作成キットは、こどもたちの手に渡った途端に武器になってしまったが、こういうのはとにかくなんども試してみないと子供達は何をするのか本当にわからないね。でも日本でこういう協働する過程を実際に踏みながら演習をすすめられたことは、自分にとってはなかなか感慨深い。

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そんなこんなで一通り出来たものをもちこみ、まずは仮想の親子になって、校庭にでて実際に使ってみる。1コマまるまる頂くことができたので、わりと余裕をもって進められた。

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落ちている葉っぱを採集し、スピーカーに変えるキット。体験を通して、音の伝わりやすさや電磁気による振動によって音が発生している仕組みを理解する。

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使ってみて、子供達とどうすればもっと面白くなるかを一緒にディスカッション!使ってみて内容を理解することは、だいたいみんな出来ており、そこで「面白い」「面白くない」の評価はできる。けれども、そこから自分が体験したことをメタ化し、客観視して考えていくのはけっこう高度なことだ。ずいぶん難易度の高いデザインワークショップであるw 当然ながらユニークな提案ができる子もいれば出来ない子もいるわけだけど、できるかできないかよりも僕は子供達に「誰かがつくったものを消費するだけでなく、自分たちでも変えていけるんだ」と捉えることができるような、そういう「機会」を持ち込みたかった。

 

6年生達には、このワークショップには理科の単元時間として割り当ててあるそうだが、実はこっそり「デザイン」を持ち込んだつもり。正直まだまだ題材や関わり方などにはたくさん課題があるし達成できたことも完璧にはまだまだ遠いけども、僕らのわがままを許して頂いたいろんな先生方、無茶振りをなんとかこなしてきた学生達、わけもわからず巻き込まれたのに元気に頑張ってくれた子供達に感謝したい。

 

そういうわけで、もうすぐ成果公開となる発表会を企画しています。真冬につき緑地散策の条件としては良くないのですが、お近くにお立ち寄りの方は、是非ご来場下さい。

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FIELD MUSEUM展
—生田緑地で楽しく学ぶサイエンス学習キットのデザイン—

専修大学ネットワーク情報学部2年コンテンツデザインプログラムを専攻する学生たちが、子どもたちと一緒に生田緑地で楽しく学べる自然科学学習キットをデザインしました。親子でも、どなたでも、お気軽に体験して頂くことができます。ぜひご来場ください。

 

2016年度 応用演習[コンテンツデザイン]成果発表会
日時 2017年1月22日(日) 10:30〜15:00
場所 かわさき宙と緑の科学館 2F学習室
   (小田急向ヶ丘遊園駅下車徒歩10分)
主催 専修大学ネットワーク情報学部コンテンツデザインラボ
協力:かわさき宙と緑の科学館 

 

■出品作品

1、しきめくりカレンダー(絵の色の変化で気温と湿度の変化を理解する自作カレンダーキット)
2、緑地のオーケストラ(葉っぱをスピーカーにして音と振動を学ぶキット)
3、2本の虹を見つけ出せ!(二重虹をつくって光の屈折を学ぶキット)
4、植物知恵袋(日照による葉っぱの形状の違いに着目して地図をつくるシールキット)
5、惑星タイムテーブル(1日の生活を他の惑星に当てはめたらどのくらい時間の感覚が違うかを理解する装置)
6、地層丸見え探検(生田緑地の地層を観察するためのペーパークラフト
7、りきがくらふと(「ジャイロ効果」を学ぶ紙工作キット)
8、もぐベタ(生田緑地の中の食物連鎖をみつけて、みんなで繋げていくキット)