Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

16年前の小さな接点

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年末に開かれたコミケに同僚のHくんが行くというので、お願いして小さな特製本を買ってきてもらった。売れっ子の写真家である著者による最初で最後の教則本だそう。

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twitterで質問を受け付け、それに対する返答というかたちでコンパクトにまとめられたもので、まあインターネットで全部公開されているものだから一部紹介しても怒られはしないだろう。このページのやりとりが一番笑った。たしかに雰囲気に逃げないで「ちゃんと」撮る練習するのが上達の一番の近道だと僕も思う。

 

さて、実は僕はこの著者とは16年ほど前に小さな接点がある。当時、僕は助手として東京工芸大芸術学部に勤め始めた頃で、写真学科の1年生にデジタル表現の基礎(いわゆるAdobeソフトの入門みたいな奴)を教える授業を持つことになった。始めて持ったその授業にいたのが彼だった。その頃から写真に向き合う姿勢はとても真摯だったし、写真学科の全体講評の際には先生方にも議論を挑んだりする挑戦的なところがあって、同世代のクラスメイトたちからはちょっと浮いているところがあったように思う。なぜか所属学科も建物も違う僕の研究室にはよく遊びに来てくれて、一緒に本厚木に酒飲みに行って写真や現代アート談義をしたりした。

 

その後、僕は大学を移り、彼は卒業してプロの写真家になった。そしてあっという間に駆け上がるように一流になっていき、もう気軽に話せる関係でもなくなり、僕は遠くから1ファンとして活躍を眺めているだけになってしまった。彼の仕事は、ウェブサイト(SUZUKI Shin photographs)で見ることが出来る。たぶん誰でも見たことがあるような影響力のある広告ばかりだ。さらにクライアントワークだけでなく写真家として自分の活動も精力的に行っているところもすごい。

 

そんな彼が自分のノウハウをまとめた教則本を(コミケで売るためにw)作ったというので、それは是非手に入れなきゃ、となった次第。

 

Hくんに「もし彼が俺のことを覚えていたら、よろしく伝えておいて」とお願いしていたところ・・・。

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なんとサインじゃなくて思い出のメッセージをくれた。ひねりをいれるところまで変わっていない・・・!(涙)

 

彼が書いているのは「デジャ=ヴュ (第14号) 『プロヴォーク』の時代」amazonでも結構なプレミアついている。この号で特集されていたのが僕の好きなアーティストのアンゼルム・キーファーだった。たしかにそういえば彼に勧めて貸したんだっけ、ずいぶん昔のことなのにちゃんと覚えてくれているものだなぁ。

 

彼だけじゃなくて、昔は学生だった若者達が立派な姿で活躍している姿を見ると、嬉しい反面で自分も頑張らなきゃと思わされる。なによりも、人は毎日変わるものだからこそ、だれが何をきっかけにしてどう化けるか、誰にもわからないし、今は「まだ何者でもない」若者達に日々接することに対して、気が引き締まる思いがする。