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みえないものを、みる視点。

よみうりランドからオンライン授業に挑戦

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10月16 日(金)。朝からよみうりランドに行く。ちなみに僕の職場からはかなり近くて、道路が空いていれば車で10分ほど。

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午前中は秋らしく、とてもいい天気だ。夏には多くの人でごったがえしていたプールには誰もいないが、きれいな水が張られている。

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さて、何しにきたかというと・・・。よみうりランドが新しいサービス始めたという話題を聞いて、野次馬的に申し込んでみたという次第である。その名も、「アミューズメント・ワーケーション」笑。ワーケーションというのはワークとバケーションを組み合わせた言葉で、最近割と流行っている。それを遊園地でどうぞ、という企画だ。平日1,900円。駐車場代まで含まれているので、かなりお得。

 

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・・・。

 

午後には寒くなってきて、正直言って仕事できる感じではなかった。とてもじゃないが集中できないので、レストランの中に避難して作業。サービスではここにも指定席を割り振ってくれている。レストランはわりと暖かくて作業も捗る。今度行ってみようかな、という人は気象条件や時間帯に快適さを左右されることは知っておいた方がいいかも。天気いい日なら楽しめると思う。

 

さて、実は、ただパソコンで作業しに来たわけではなくて、この環境を活用してオンライン授業を試みるのだ。申込時にそう伝えたら、営業さんが関心持っていろいろ応対してくださった。

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観覧車でミーティングするという人生初の体験。ちなみに、この営業のYさん、広報でもよく使われているサングラスかけたイケメンのビジネスマン(このブログ上から三枚目の写真)のモデルでもある。なんと、中の人がモデルやっているとは。

 

いろいろ話を聞いていたらとても興味深かったので、いくつか箇条書きにしてみる。

 

  • コロナ禍の中では、遊園地もいつ営業停止になるかわからない。あたらしい顧客の開拓と遊園地のあり方について社内でアイデア会議が開かれ、その中で若手社員チーム(Yさんたち)の「アミューズメント・ワーケーション」案が採用され、支配人からゴーサインがでる。
  • プールサイドの仕事場というのは、見映えだけではなくて、換気の良い屋外でブース的に使える場所であり、夏以外は使われていない場を活用しようとする発想であること。
  • 観覧車でZoom会議、というのも、「ウェーイ」とびっくりさせる出落ちギャグのためではなくて、日中はわりと空いており、遊園地の中で唯一静かな個室空間であること。(気付かなかった!)
  • 現在はまだ採算度外視で、本当に活用できるか、そして試験的に運用してみながら可能性をさぐっている段階、だという。
  • 例えば、実際に試してみたら、観覧車のてっぺんでは電話回線が弱くなることがわかり、乗り場でポケットWIFIを貸し出すなど、随時トライ&エラーを繰り返している。

 

僕は、こういう現場の人々の中から出てきた「攻め」の姿勢が大好物なので、経緯に感動した。あまりにも面白かったので、僕もいくつかアイデアを話してしまった。こないだ実施した高校生がマイクラでアトラクションをデザインする仮想遊園地をさらにMinecraft Earth(AR版マイクラ)で展開する実験とか、研究室の学生たちと議論した未来スケッチとか。

 

 

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これは、感染症は防がなくてはならないが家にいるのは飽きる、というジレンマを解消するために、近未来は緑の多い大きな公園に出勤するかたちになるのではないか、というアイデアスケッチ。電気自動車(遊園地によくあるゆっくりうごくやつ)型の防音個室空間があればカフェ的な親密な対話もできるかもしれない。考えてみれば遊園地だってこんな使い方にぴったりだ。こういう可能性をさぐるワークショップはありだな。

 

当初の目論見としては、「グラフィックデザイン」の授業で視覚言語を扱う予定だったこともあり、遊園地のサイン計画について実地から中継しながら解説しようと思っていた。でもYさんと話しているうちに違うことに気づいてしまった。プロの方々によって長年かけて洗練されてきた地図やピクトグラムなどの完成度の高いものを僕が説明することよりも、今の困難な状況の中で従来の遊園地から脱却した新しい可能性を探っていることのほうが、デザインの問題としてはずっとリアリティが高いということに。(※あくまでも初心者の学生たちが、このコロナ禍のなかで考える対象としての話です)

 

14:50。授業が始まる。最初の30分は背景を消して、普通に前回の課題の解説をしたのち、唐突によみうりランドにいることを告白する。そして園内を実際に中継しながら歩き、取り組みを紹介する(「アミューズメント・ワーケーション」だけでなく、さまざまな企業とタイアップした工場体験の「グッジョバ」エリアなど)。受講生みんなから「Youtuberか!」いっせいにツッコミが入った。

 

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(受講生のtwittterより)

 

 手振れや風防対策しなかったので、かなり見苦しい放送になってしまった。申し訳ない・・・。

 

その後は、Discordつかってグループで話し合い。

即席で考えた課題文を転載してみよう。

 今日は、よみうりランドの逆境の中の挑戦を、
現地から紹介した。

みなさんも、「リモートで受けなくてはならない」「でも家にいるのは飽きる」という葛藤があるならば、それを起点に新しい可能性を考えてみよう。グループで2つのうちいずれかを選択してアイデアを考えてください。

 

1)分散型クラス
今回は教員自身が「非日常」から中継するという方法を取ったが、逆に学生側がそれぞれの「非日常」からアクセスし、相互に共有することで、通常の教室や自宅より深く学べるというケースは、どんなものが考えられるだろうか。
学ぶ内容はなんでも構わないが、実現できそうなもの。

※この授業で実現できそうなものがあれば挑戦してみます

 

2)もうひとつの遊園地の使い方
普通にアトラクションを楽しむのではなく、このワーケーションのように、コロナ禍という状況化での「別の使い方」にはどんなものがあるだろうか?
※アイデアは全部よみうりランドの社員さんにフィードバックします

 

◎Discordで4人一組になる。1)を話したい人はDiscordの上から、2)を話したい人は下から詰めて参加しましょう。
◎音声+掲示板+必要であればジャムボードでスケッチ。
◎〜16:15まで
◎話し合った内容を元に、本日の講義内小課題として文章にまとめて投稿。
◎個人で考えたアイデア/ グループで出たアイデア、どちらでも構わない。

 

以前の記事で書いたように、後期はレクチャーはオンデマンドにして空き時間に視聴することとして、できるだけ同期する必要性のある共同作業や話し合いをする時間を増やすようにしている。学生たちも予測できない取り組みをなかなか面白がってくれたようだ(多分・・・)。人間、そのあと何が起こるかを予測できてしまうと眠くなるし、予期できない状況になると集中力はあがる。

 

というわけで、真面目に解説すると、けっしてバカンス先からつないでウケを取りたかったわけではなくて、少しづつ日常化し、マンネリ化していくオンライン授業の学習形態をもう一度問い直し、学生たち自身にも新しい可能性を考えてもらおうとする試みだった。

 

僕が担当しているのはデザインの授業なので、それをどう扱うかをいつも考えている。「こうでなければならない」という既成概念を疑い、リスクを取ってでもいろんなあり方を実験する、そして試したことに対して積極的にフィードバックを集めて再検討する、そんな姿勢から何かを感じてくれれば嬉しいな、と思う。大事なことは、固定化された知識の中にあるわけではないのだ。

 

www3.nhk.or.jp