10/22(日)は,ここ半年ほど進めてきたサイエンスミュージアムでの研究室ワークショップ「ヒコーキが飛べる理由を試して考えてみよう」を実施.研究室の4年生,F君の卒業研究でもある.CoDesignは相互の信頼関係づくりから,ということで彼は毎週ミュージアムが開催している実験工房のスタッフとして出入りを重ね,インストラクター講座を受けて資格までとってしまった.その成果でさすがに余裕のあるファシリテータぶりだ.
当日は台風が近付くかなりの悪天候.それでも事前予約してくださった親子のみなさんはちゃんと集まってくださった.感謝.家族みんなでノリノリで工作を楽しんでいるw
事前に用意したバルサ材(レーザカッターで切り出したもの)に,紙を加工して羽を接着する.みんな楽しそうに工作していたが,この子の創造力には驚かされた.この子はその場にあるパーツをどんどん流用しつつ,自分で工夫を重ねて作っている.凄いね.
負けじと,お母さんたちも不思議なヒコーキをつくる.
鳳凰をイメージしたヒコーキだそう.こういうのも,尻尾をなびかせながら優雅に飛んでしまうから不思議だ.
あまり最初は知識を与えず,自分でトライ&エラーを重ねながらなぜ飛ばないのか,どうすれば飛ぶのかを発見していくというのが,このワークショップの狙いである.ワークシートではどのように飛んだかを記録して,プロトタイピングの軌跡が見えるように繋げていく.
半分ほど過ぎたところで,共有と振り返り.上手に飛ばせているお父さんに,施した工夫を解説してもらう.この方はエンジニアらしく実験からポイントを見抜く眼力が半端無い.
終盤になると,いつのまにかお父さんお母さんの方が童心に戻って夢中になっている.やたらとよく飛ぶ機体を作れて,息子さんに自慢しているお父さんw
トライ&エラーを重ねる中で,だんだんと「ある程度の重さ」と「浮き上がる」力のバランスが取れた時にキレイに飛ぶことが見えてきた.機首には角度を下げるための重りがあった方がちゃんと飛ぶのだ.
最後は全員によるレース(冒頭の写真)で盛りあがったあとで,物理学者の小田切先生による「ヒコーキはなぜ飛ぶのか」の解説.小田切先生とは同じ学部の同僚で,この企画をいっしょに立ち上げたのだが,全く専門も違う彼とこんな形でコラボ出来るとは思わなかった.このワークショップは,デザインだけでも物理だけでも成り立たない.プリミティブなヒコーキの模型は,専門領域をつなぐ「バウンダリーなオブジェクト」でもある.
なかなか良い感じでまとまった.
とりあえず参加者へのアンケートもまずまずで,彼の研究題目「コミュニティの力を援用した親子向け科学学習キットの作成」にも大きな成果となったように思う.実はこのワークショップの背後には,場所としてのサイエンスミュージアム,そこに乗り入れている複数の科学教育のボランティア団体,専修大学など,いくつかのコミュニティが存在して,それらをF君が繋ぐことで実現されている. F君もまた境界線上の存在だ.最近はこんな「それまで接点の無かったコミュニティが繋がっていく」実践的な活動が面白い.