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みえないものを、みる視点。

個人的な知識はいかに管理できるのか

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一昨年、コペンハーゲンビジネススクールで友人のlianaと議論したときに、「パーソナル・ナレッジ・マネジメント」という言葉を教えてもらった。個人情報(電話番号やパスワード)などではなくて、もうすこし経験則も入ったやり方やテクニックなどの実践的なものが該当する。

組織の中での知識管理については、それぞれ決まり事をつくって他人が分かるように共有できるように努力することは普通だし、経営学の分野でも多く議論されているが、個人的なものはそもそも共有されないし、ちゃんと管理する習慣をもっている真面目な人はたぶんそこまで多くない。なのでみんなそれぞれ属人的な方法で解決していると思う。日々の生活ではあまり意識されないが、パーソナルコンピュータが普及して20年以上経ち、どんどん物忘れが激しくなっていく我々中年はだんだん膨大な過去の自分の知識にどう対処するか、という問題と向き合わざるを得なくなっている。

 

例えば、

1)増え続けるメールや写真データをどのように管理するか。外部記憶装置に保存しっぱなしではなく、取り出したい状況でただちに取り出せるような方法をつくるか。

 

2)ネットで購入した本やモノなど、購入したきっかけや文脈などを思い出せるようにするか。「これは、たしかだれかが薦めていたのでぽちった気がするんだけど・・・何で見たんだっけ?思い出せない・・・」と苦しんだことがある人は、僕だけではないはずだ。リアル店舗の買い物は体感した分手がかりが残ることも多いが、ネットショップは注文履歴しかのこっていない。

 

3)仕事の自分用メモ(例えばなにか作ったものの制作物のレシピや、ソフトや機材のパラメータや設定などの記録)をちゃんと記録を残せるか、忘れた後でもすぐに引っ張り出せるようにするか。

 

4)テキスト検索できない情報(たとえば顔は思い出せるがどうしても名前を思い出せない知人のメールアドレス)をいかにして見つけるか。

 

などなど。リチャード・ソール・ワーマンが唱えた情報の整理整頓や見つけ方はいまや専門家だけでなく個人でも必要になっていることがわかる。考えてみれば若者達はこの先およそ50年分以上の個人データや知識の管理と向かい合わなければならないわけだ。他人が干渉しえない領域だから誰も助けてくれないし、誰にも指摘されないだろうけども、みんなどうやっていくんだろうね。

 

あと、今はSNSが発達して、いろんなネットワークが個人を拡張して共有されている分、人間関係のメンテナンスはめんどくなっている気がする。この間、とある人が恋人と分かれたそうなので、(酒飲みながら)「分かれた後でもお互いSNSでそれぞれが何しているかが見えてしまうことに、どう対処しているのか」という疑問について聞いてみたのだが、やはり簡単に割り切れない葛藤があるようだった。いろんなことがITによって便利になっているけど、我々の脳の感情的な部分も総容量も、一日で使える時間も、友人に会える時間も増えているわけではない。目に見えにくい歪みはそれぞれの個人の中でどんどん大きくなっている。