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みえないものを、みる視点。

視覚障害者をデザインパートナーにする:Blindes Arbejde訪問

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11月19日(木),友人のRosaが招待してくれて,視覚障害者のみなさんの工房を見学してきた.9月末にKolding Design Schoolで開催されたカンファレンスの際に彼女が講演してて,取り組みがとても興味深かったので挨拶したのがきっかけである.

 

Rosaは視覚障害者とのCoDesignによってテキスタイルをデザインする,という独自性のある活動をしていて.先日はデザインミュージアムの企画展でも作品を出品しているのを偶然見つけた.日本企業とのコラボレーションも行っているそうだ.Kolding Design Schoolの卒業生だそうで,やはりあの学校は良い人材を育成しているのだな.

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彼女の働いているBlindes Arbejde(英語でBlind Work)というのは,目の見えない人達が職人として働いている工房で,ハンドメイドでいくつかのプロダクトを生産している.

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彼女はここの職人さんを巻き込みながら,テキスタイルの設計プロセスを考慮した触覚ツールキットを開発したそうだ.視覚障害者のみなさんは指先の感覚を活かして,このテキスタイルのパターンをつくっていくことができる.型どおりにつくるのではなくて,職人さん達が自分なりに発展させてつくっていけるようにしたところが本当に素晴らしい.

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この「織機」なる機械,どういう仕組みでできていくのか解説してもらって初めて知った.手だけをみれば単調だが,足でのチョイスが大事なのだな.しかし,ひとつひとつ縫い目をつくっていくのは,ひたすら繰り返しで気が遠くなるような大変な仕事だ.

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ブラシ工房.一つ一つ丁寧につくっていた.「この作り方では,それなりの値段になってしまうと思うが,安価な中国製のものに勝てるのか」と聞いたら,品質がよいから多くのファンがこのブランドを選んで買ってくれている,と答えてくれた.いくつかオリジナル店舗も開設していて,口コミでも評価されているので品質がよいというのは本当のようである.

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家具工房.ウェグナーの名作Yチェアを修繕中.この職人さん,本当に目が見えないのかまったくわからないぐらいに熟練していて,おもわず唸った.

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座面はオリジナル通りに組み立てるだけではなくて,いろんなパターンを試しているようだ.そのへんも職人さんが考えているんだそう.テンションによる座面は,板やクッションよりも通気性がよく座り心地がいいらしい,

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工房は結構大きい.奥の人はインターンだそう.

 

いろいろ見させてもらってとても興味深かったついでに,ちょっと気になったことを議論してみた.障害者の就労支援というのは日本でもいろいろ取り組まれている.例えば日本で言えばキットパスの「日本理化学工業」の取り組みは有名で,ワークプレイスのデザインを変えることで多くの知的障害者を立派な戦力として雇用している.でもキットパスが売れているのは水拭きで消せるという特徴であって,障害者がつくっているというストーリーが全面に出ているわけではない.それに対して,ここは「Blindes Arbejde」と作り手のストーリーがブランド名になっている.障害者がつくったという付加価値を消費者に訴求してそれがブランドになるとすれば,どこか引っかかるものがないか?これはゼミでもたまに議論になる話だ.

 

彼女はそれは大変重要なポイントだ,とした上で,「そういった背景なんか何もなくても『それ自体が美しく,価値を持つこと』が一番大事だ,価格が高くても(実際Blindes Arbejdeのプロダクトはかなり高価である)それは善意の寄付のようなものではなくて,品質に惚れ込んで購買者はお金を払うのだ(意訳).というようなことを答えてくれた.

 

ぼくもそうあるべきだと思う.対等なデザインパートナーとして仕事出来るようなツールをつくりあげた彼女を尊敬するし,工房の職人たちも立場に甘んじることなく日々品質を高める努力をしていることがよくわかった訪問だった.

 

■Rosaのウェブサイト

Rosa Tolnov Clausen