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みえないものを、みる視点。

目的と手段の幸福な取り違え

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春に頂いた本シリーズNo.2. 「市民参加の話し合いを考える」村田和代 編 (2017.4.3発売).共著者の福元和人さんからご恵投頂きました.ありがとうございます.

本書は,龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンターの研究成果で,「話し合い学をつくる」という構想のもとで生み出されているそうだ.本の概要は以下の通り.

まちづくりの話し合いやサイエンスカフェ、裁判官と裁判員の模擬評議など、専門的知見を持たない市民と専門家が意見交換や意思決定をする「市民参加の話し合い」を考える。話し合いの場で行われる言語や相互行為に着目したミクロレベルの研究から、話し合いによる課題解決・まちづくりをめぐる話し合いの現場での実証研究や話し合い教育をめぐる研究まで。「市民参加の話し合い」の現状と課題について学問領域を超えて論じる実証的研究論文9本と座談会を収録。

この書籍で,研究報告のトップバッターとして福元さんが執筆されている.福元さんは対話ツール「カタルタ」の開発者として知られるが,この一連の対話ツールは実は鹿児島から発信されている.地元繋がりで以前から親近感があったのだが,4年ほど前,上京された際にお会いする機会があった.

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渋谷のスペインバルでワインを飲みながら,たいへん濃い議論をしたことを思い出す(2013年2月).写真はその時に見せてもらった,ラブな対話を引き起こす変化球ツール「LOVEカタルタ」.その夜,僕は楽しく酒飲んだことしか覚えてないのだがw,福元さんはその日に議論した内容をとても大事にしてくださっていて,その後の理論化にもつながっていったそう.そういう経緯で謝辞にも僕の名前を挙げてくださっていた(汗).感謝.

 

さて,収録されている福元さんの論考「対話を活性化するツール」のチャプターは大変興味深かった.カタルタを通して起こっていること,開発過程の試行錯誤の裏話は,さすがに人生かけてずっとこのツールと向き合って来られただけあって,とても深い.特に「目的と手段の幸福な取り違え」という概念に共感した.

これらの例に見るように,語り手は意識の中で優先される目的に引っ張られるようにして,本来なら同時に満たそうとする別の目的を疎かにしてしまうことがままある.その際,手段に過ぎないことの精度を追求した結果として,意図せず望ましい結果を得ることが起きる.普段の思考から外れ,意識の持ち方がずれることで,目指した目的に紐づく結果ではない,また別の望ましい結果を得るのである.問題は,結果が吉と出るか,凶とでるかである.

(p.40 強調は引用者)

 

人間は必ずしも事前のプラン通りに目的を達成していくわけではない(たとえばSachman1999).その意味で僕自身も,偶発的なきっかけを生む環境や,強制的な視点チェンジを起こす道具立ては重要であると思っていて,いろいろヒントになる. "かたちから入る"ことも,(真面目な人は許容できないかもしれないが)結果的にいいパフォーマンスになるのなら,そういう動機付けの効果は考慮していいのではないか.

 

カタルタは,使い手が考案したものを含めるとなんと70通り以上の使い方があるという.こういう開かれた道具を作れるように自分も頑張ろう.

 

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