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みえないものを、みる視点。

ラーニングフルエイジングとは何か

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新刊「ラーニングフルエイジングとは何か—超高齢化社会における学びの可能性」,編著者の森さんからご恵投いただきました.ありがとうございます.

本のコンセプトは,

死ぬまで学び続け成長する存在として高齢者を位置づけ、高齢者特有の学習課題に焦点を当てる。そして、多様な高齢者像の視点に立ちながら、高齢者の学習にはどのような方法をとりうるか、国内外の豊富な取材事例と、研究者・実務家との領域横断的な議論によって探り出す。

とのことで,森さんが創り出した"ラーニングフルエイジング"という新しい概念について,さまざまな分野の専門家が参加して多角的な議論を行っている.学校の外において,人間は加齢と共に如何に学んでいくのかについて,クリアな軸が通っているところがさすがだが,特に誰もがいずれ考えなくてはならない「死への向き合い方」まで踏みこんでいるところが素晴らしい.

人が死を意識するとき,それは生きる意味を考える良い機会ではないでしょうか.しかし,人という目線だけで,あるいは宗教や従来の哲学で,人は生きる意味を見出すことができるのであろうか.私には自然科学が証明してきた真実を無視した物語では生きる意味を見出すことは出来ない.<中略>

人という個体から遺伝子に目線を移すと,私は「人はなぜ死ぬのか」という問いの答えをはっきりと感じ取ることが出来る.

第5章「がんと生きる」岩瀬哲 pp.94

 

ところで,実はこの本,僕もほんのちょっとだけ取材に協力したことを思い出した.森さんがコペンハーゲンまでGive&Takeプロジェクトの調査に来られたので,代表者のLoneへのインタビューをセッティングしたのだ.取材されたことは,「多世代共創社会に向けたワークショップ」(森さん執筆の第10章)の海外の実践事例部分として紹介されている.Loneたちの取り組んでいた考え方や方法が.日本語の書籍に残ったのは嬉しいことである.忙しいLoneがたっぷり時間取って対応してくれたことは僕としてもとても有り難かった.

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 Loneに取材する森さん(2015.11.6 IT University of Copenhagenにて)

 

共著で本を書くと,どうしてもまとまりが悪くなりがちだ.でもこの本では軸となるコンセプトを明確に打ち出していることで,逆に共著の長所として議論の幅の広さが生まれていることがよくわかる.情報を編集する視点として勉強になった.まだ時間がとれずちゃんと読めてないが,他の章も読み込んでみたい.