Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

面白がる姿勢に,人は動かされるのだ

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慶応SFC石川初研究会の2016年度の活動記録,landwalk book2を頂いた.石川初さんといえば本業のランドスケープデザイナーとして活躍される一方で,その独特の視点で見過ごされがちな都市の楽しみ方を我々に教えてくれている偉大な人である.僕は2004年に開かれた"地図Night"という地図マニアの小さな集まりで石川さんと始めてお会いしたのだけど,その時に東京湾にある中央防波堤外側埋立地(通称「中防」)の誰も知らないような濃い魅力について,クールに説明して下さった姿を今でもよく覚えている.

 

その石川さんは,2015年の春からSFCの教授として着任されて研究室を持たれることになった(石川初研究室サイト).彼の展開する教育が面白くないはずがない.ところが普段のゼミの様子などはなかなか外側には出ないもので,ファンとしては遠くから残念がっていたところ,春に昨年度の活動冊子をまとめられたことを知って速攻で送って頂いた次第である.

 

中身は徳島県神山町でとりくまれたプロジェクトや住民参加型の公園プランニング,研究室で実験的に取り組まれていることなど,全66P.  どのプロジェクトもとても面白い.1年間でこんなに活動されているのだなぁ.(うう,同じ時間を持っているはずなのに・・・)

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うまい,と思った,東京オリンピックに関する学生の課題作品.マラソンの42.195kmを体感する文房具.鉛筆は一本使うと約50kmの線が引けるらしい!定規は地図上に42.195kmの半径がかけるように縮尺に応じた穴があいていて,42.195kmでどこまでいけるかが一目でわかる!

 

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街の隙間にひまわりの種を蒔いて,咲いた人が勝ち,というひまわりレース.

こっそり蒔いて観察記録をつけていく.日当たりや土壌の悪さなどの"育たない"という環境の壁と,人の手で駆除される管理の壁を越えてわずかな学生(2人?)だけが花を咲かせることが出来たらしい. 経験を通して,環境が良好だが管理が薄い,人々が見落としている「街の隙間」に気付くというストーリー.最近,人為と環境の関係を考えていることもあってこれはツボだ.

 

研究室の活動には,バラバラであっても行間から教員の思想がみえるものだが,この活動記録一冊通して見ると,やはり石川さんの独特の視点を学生たちが戸惑いつつも発展させながら学び,共有していく姿が見えてくる.やっぱり最後は「好奇心」だ.普通に生活していると街は当たり前にしか見えないけれど,視点を変えれば様々な面があることに改めて気付かされるし,それを共有することはとても刺激的なことである.なによりも,それを自ら発見して面白がる姿勢こそがまた人に影響を与えるのだ,と思った.

 

石川さん,遅くなりましたが素晴らしい冊子をお送り下さりありがとうございました.