Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

音に潜む共通のイメージを探る

 

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グラフィックデザイン」の授業は、前半のインフォグラフィックス編が今週で終わって、後半のイメージコントロール編に入った。視覚言語の中でも、インフォグラフィックスのように要素の意味性が強いものと比較して、もっと潜在的なイメージの共通性によって成される、いわゆる伝統的なグラフィックデザインが対象としてきた領域である。

 

上の画像は、ずっと使い回しているイントロダクションのスライドより。

左側にある「言葉」と右側にある「図形」は両方とも全く意味のない適当なものであるが、両者の感覚的なイメージを繋いでみるとどうなるか、という問題。ほぼ全員が言葉と図は並行ではなく、クロスして繋がる、と答える。意味がなくても、言葉と図に対して全員が同じ共通性を感じる(ガギグゲゴ ≒ ギザギザした形態、パピプペポ ≒ くるくるした形態)というのは、一見不思議ではあるけども、種明かしすれば音のイメージと図のイメージが重なるのは、実は我々の身体が持っている尺度が限られていることに因る・・・という理由を読み解くことが可能である。ヴィジュアルをデザインするということは、そういった潜在的に含まれている要素も含めて、適切に設計していかなくてはならない。

 

さて、パピプペポといえば。ちょうど先日読んだPPAPに関する言語的な解説がなかなか興味深かったので、ついでに昨日の授業でも少し触れてみた。

 

sasakiarara.hatenadiary.com

「P」という口唇破裂音の連続は、ヨーロッパ諸語であると特に顕著に、子どももおとなも大好きな響きだ。「ピーターパン」や「パイドパイパー」などのキャラは、Pの連続を意図的につくることで、響きをよくしている。

Peter Piper picked a peck of pickled peppers.

という有名なマザーグースの早口言葉があるけれど、この早口言葉は「言いにくい」のではなく「口にして心地よい」という意味の早口言葉の代表格。

 呪文などにも、たとえば「アブラカタブラ」など、口唇破裂音「B」がいいリズムで繰り返されるものが多い。

http://sasakiarara.hatenadiary.com/entry/2016/11/01/125822

Pen-Pineapple-Apple-Pen という言葉には、頭文字のPだけでなく、音の連続性を崩すAppleの裏の音にもpが含まれている。一見意味のないように思われている簡単な言葉の中にも、我々が意識しない領域で高度な設計が含まれていることに感心する。世界中で流行するのには、ただの言葉遊びではなくてちゃんと「口にすると気持ちいい」体験である、という共通性があるのだ。

 

こういった発音自体が持つ効果をいち早く言語化したのは佐藤雅彦氏だったように思う。氏は20年以上前に「濁音は強い」という法則を自分で見抜いて、そういった方法論を駆使したCM(例えば「バザールでござーる」)を作った、というのはよく知られている話である。

「だんご3兄弟」にも同じ方法が見える。

youtu.be

今久しぶりに聞いてみたら、ラストのあたり、濁音がくりかえしくりかえし迫ってくる感覚が強烈なパンチのように効いていてちょっと怖かった。この中毒性、当時の子供たちがみんな夢中になったわけだ・・・。

 

みんな忙しくなって深く考える時間も無くなってきている時代だからこそ、こういった潜在的な部分を活用していくことは、一層重要になりつつあるのかもしれない。