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みえないものを、みる視点。

言葉を使わないストーリーテリング:ハンブルクのミニチュアワンダーランド

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ハンブルクでの目的のひとつ、ミニチュアワンダーランド。ここを訪問した大人達がみな鼻息を荒くして「本当にすごい」「うん、マジですごい」と興奮した感想を語り合っているので、子ども達を連れて行くふりをして実は僕が楽しみにしていた。事前にネットで予約した上で平日の朝イチで到着、という準備のお陰でご覧のようにガラガラの中で心ゆくまでじっくりと堪能できた。(まあ昼過ぎには身動きとれないほど混雑して来たのだが)

 

確かに、ここの作り込みは大人の目で見ても素晴らしかった。世界各国のステレオタイプをうまくカリカチュアライズ(戯画化)しつつ、とことんディテールまで精巧につくられているばかりでなく、人々の波乱万丈を含んだ生活の様子まで丁寧に描いている。これはまるで言葉を一切使わないで表現される物語だ。特に「見付けた人だけが楽しめる」ようなユーモアをあちこちに埋め込むことに特にこだわっているようで、見る側としても、能動的に見つけよう、その場で何が行われているか解釈しよう、わかったことを共有しよう、という気にさせるところがとても良くできている。

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電車待ちをするペンギンの親子。ペットのシロクマも同行しているようだ。彼らはどこに行くのだろう。

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スイスのLindtという高級チョコレート工場。ボタンを押すとベルトコンベアに乗っているチョコが実際に出てくる。

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アメリカでは発掘された砂金が、そのまま繋がって金ピカの車に変化している。

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ベルリンの壁が出来ていく過程。時代を分けながら同じ場所が変化していく様子が作られている。

他にも山ほど細かい仕掛けがあるのだけど以下省略。

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制作中のイタリア模型。制作プロセスを公開していて、これも興味深かった。

 

たぶんだけど、この制作チームは、メンバーの「冗談」を促し、それを吸い上げるいくような組織の仕組みを作っていると思う。ディレクターのトップダウンではなく、メンバーの相互関係で練られていくインプロ的なカルチャーの匂いを感じた。

 

ここの模型は、

1)どんな順番でも読める

2)見る側の態度・好奇心に応じて見え方が変わる

3)特定の言葉に頼らない非言語コミュニケーションによる

4)その地域の文化や成り立ち、科学技術などの正しい知識に基づいていて、

  新たに学ぶことが出来る。

5)見付けられた秘密のストーリーを誰かに語りたくなる

という意味での一種のインフォグラフィックス、と僕は解釈した。

 

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