Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

かわさきコンフィズリープロジェクト

f:id:peru:20160524190706j:plain

僕がチーフとして担当している2年生向けのIxD基礎演習は、多様なプログラムの履修者が130名近くいて、4クラスで同時展開するという教員も学生もヘビーな演習である。

この演習で、今年は製菓会社のブールミッシュさんとのコラボ企画を進めている。地域性を持ったコンフィズリー(砂糖菓子)の中に埋め込まれた体験をデザインするというもので、単なる商品企画というよりは、パッケージ+インタラクションをふくめて、食べることを介したストーリーテリングに着目しているところがポイントである。

 

ちなみに企画とパッケージはグループで行い、プロモーション用のWebサイトは個人で実装するという二重の課題である。我々は情報学部なので、デザインするだけじゃなくて実装技術はちゃんと全員習得しなきゃ、ということで。

 

さて、ブールミッシュさんといえば日本中に100店舗以上展開する高級スイーツのショップで、社長の吉田菊次郎さんは有名パティシエとして知られ、NHKの朝ドラの技術指導もされている方。どんな接点でコラボしているのか、というのは関心もたれるかもしれないので、ちょっと書いておきたい。

 

話は4年前のことに遡る。吉田さんは、4年前のこの演習の前身の課題で「MY ROLE かわさきの食をつくる人々」のインタビュー集を作ったときに、学生達の取材に協力して下さった。

http://blog.kmhr-lab.com/photo/IMG_7336.jpg

MY ROLE 2012 が出来ました - kamihira_log

それは大学と社会の新しい関係性を探ることでもある。学生が取材に行くだけでは、学習に協力してもらうという(よくある)関係で終わりがちである。そうで はなく、学生からも社会人に向けてプレゼントを送り届けるような、お互いにとって嬉しい相互贈与関係が作れれば、より幸せなかたちで関わることができるの ではないか。そして、その関係性を誰でも取り組めるような仕組みに落として発信していくことで、おおげさに社会変革を唱えなくても、埋もれている小さな価 値を改めて見直していけるような、ささやかなきっかけになるのではないか。この試みの背景には、そんな願いがある。 

 (上平の序文より)

 

 

その時に贈呈した本を大変評価して下さり、「何冊か頂けないか」とご希望され何度か電話とメールでやりとりした。それがきっかけで、「私にできることなら協力するよ」と演習へのご協力を約束して下さった次第である。こちらから「ギブ」できることがあったことで、それをもとにして4年後に新しい接点ができたわけで、感謝の気持ちを感じるとともに、演習で御世話になる方との関係は大事にしよう、と改めて思わされた。

 

そういうわけで、帰国早々、このコラボを活かした課題準備を急ピッチで進めてきたわけであるが、最初は既成商品で代用した架空の商品のつもりだったのが、パティシエの村松さん(ブールミッシュ製菓アカデミー主任講師)が何度も実験重ねて、ムーンライト(大学の最寄りの小田急向ヶ丘遊園駅近くにあるビール醸造所)さんのクラフトビールを使ったギモーヴ(フランス風マシュマロ)を新しく開発してくださった。

 

僕がでっちあげた(架空の地域食材をもちいた)ギモーヴを、プロの手で実現して下さるとは、これにはもう、感謝しかない。

 

そしてなんとか5/23には学生たちに試食会を行うことができた。ビア・ギモーヴは黒ビールのコクをピリリとひきしめる粒胡椒の刺激が新感覚で、とても美味しかった。こんなお菓子も存在するのか、ととても驚かされた。

 

短い演習時間だが、いい成果物ができるように、学生達に頑張ってもらいたいところである。

 

www.boulmich.co.jp