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みえないものを、みる視点。

デザインの国際会議、4D-Conferenceが大阪で開催

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2019年10月21日から23日まで、大阪国際会議場にて国際会議4D-Conferenceが開催されます。欧州のデザイン研究者達が来日して濃い議論が行われる予定です。この会議をオーガナイズされている立命館大の八重樫文先生は研究の話題が合う数少ない研究者で、彼の使命感に共鳴するかたちで私も実行委員会の末席に加わってお手伝いしています。

カンファレンスは英語になりますので、ちょっと敷居が高いかも知れませんが、意味のイノベーションやソーシャルイノベーションなどのエッジの効いたデザインの話題に関心をお持ちの方、是非ご参加下さい。(※オープニングのトークイベントは同時通訳もあります)

公式サイトの重要なところを日本語にしてみました。

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 ■4Dとは、社会的な存在、技術の発展、ビジネスの創造と刷新のための価値を開発するためのデザインの役割を議論することを目的とした国際会議です。

この会議は、ふたつの視座から議論されます。ひとつめは、社会的価値を高め、新しい技術パラダイムを拡げ、新しいベンチャーを作成するための実行可能な条件を作成するための主なインプットとしてのDesigning Development(開発をデザインすること)もうひとつは、社会的、経済的、技術的に力をサポートしそれらの相互作用の中で行われる、アウトプットとしての Developing Design(デザインを開発すること)。

 

 ■キーワードは、 デザイン全般、デザイン思考、美学、クラフトマン精神、起業家精神、ネットワーク社会、ソーシャルイノベーション、オープンイノベーション、サスティナビリティ、技術開発、ポストヒューマン時代、ローカルとグローバル、となっています。

 

 ■会議は3つのトラックで構成されています。
トラック1:社会の開発におけるデザインの意味

  1.1:未来のクラフトマンシップのためのデザイン

  1.2:第三セクターの設計と社会イノベーション

トラック2:技術の開発におけるデザインの意味

  2.1:生産における新しいパラダイムの設計

  2.2:テクノロジーの人間化におけるデザインの役割

トラック3:ビジネスの開発におけるデザインの意味

  3.1:グローバルな市場における伝統のデザイン

  3.2: ポストヒューマン時代のビジネスのためのデザイン

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さて、この国際会議がなぜ日本、しかも大阪で開かれるのか?八重樫先生から興味深い話を聞いたので、ここにも記しておきたいと思います。

 

もともとこの組織が設立されたのには、リトアニアという国が大きく関わっています。

リトアニアは、日本人にはあまり馴染みがない国ですが、バルト海に面したバルト三国エストニアラトビアリトアニア)のひとつで、ソ連崩壊に伴って1990 年に独立した国です。独立から30 年ほど経過しましたが、国民の意識はなかなか旧ソ連時代から抜け出せていないという問題があるようです。

 

 社会主義国家に属してた頃は、共同体の中の理屈に従っていればそれほど目的を考えずに済みました。しかし、いまのグローバル化していく世界の中では小さな国だからこそ大国に負けないような、自分たちの国民性や独自の価値基準を確立していく必要があります。そこでリトアニアの人々は「デザイン」に着目します。自国の理念の再構築と、ソ連時代を知らない若者達のアイデンティティ構築のために人々と共に創造していくことを狙って、国を挙げた政策としてデザイン教育を取り入れ始めたのです。

 

国際会議「4D Conference」は、その一環として始められました。カウナス工科大学(リトアニア)と、ミラノ工科大学デザイン学部(イタリア)が提携し、世界のデザインの研究知をリトアニアに集め、デザイン文化を育成することを目的として2017年に第一回が開催されています。そして2 回目以降はその理念を元に、世界各国を巡って同じような困難を抱えた国の人々と共有しながら議論していく・・・・。そんなリトアニア人研究者の計画に八重樫先生は深く感銘を受け、所属する立命館大でホストする役目に手を挙げた、という経緯があるようです。

 

たしかに課題先進国として知られる日本も、同じく今後のアイデンティティをどう作っていくかには大きな困難を抱えています。リトアニアの悩みが日本とオーバーラップした、という八重樫先生の気持ちはよくわかります。

 

しかし、大阪は地元と言えども八重樫先生は現在ミラノで在外研究中。わざわざ一時帰国してまでこのような国際的な議論の場を作るとは・・・欧州の活発な交流を間近に見ていると、日本のデザイン界(アカデミア、ビジネス含めて)が世界に取り残されていくような危機感もあるんだろうな、と思うと、その真摯な姿勢に僕もまた感銘を受けたのでした。

 

僕自身もこの会議をきっかけに国を跨いで議論を共有し、少しでも新しい次の時代への種を蒔くことに貢献できればと思います。

 

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4D Conference公式サイト:参加登録受付中

4d-conference.com

 

4D Conference 2019 オープニングイベント(※同時通訳有り)

10/20(日)13:00-19:00

4d-conference2019.peatix.com

オープニングイベントは、キーノートスピーカーのペプシコCDOペプシコCDOや、サービスデザイン理論の第一人者、ソーシャルアントレ、ソーシャルデザインの重要人物が一堂に会する場ですが、学会参加者でなくとも誰でも気軽に参加できます。また情報交換会では世界のデザイン研究者と交流できます。