Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

瞬間の"ひらめき"と,続ける"根気"と.

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一つ前の記事の続き.STPLNの中で展開されているåterSKAPA Projectを主導されている方が,このプロダクトを前にして解説してくれた.子供向けのキャンディボックスを見て,「こんな風に,眺めることや選ぶことを楽しめるような箱をつくりたい」と素材バンクのことを思い付いたんだそうだ.あまりにかたちに馴染みすぎて分からなかったが,これはたしかにキャンディやグミが入っている容れ物だ,それを流用して自分でリメイクしているんだろう.これだと中に詰まっている素材は,一見まったく産業廃棄物だとは分からない.こどもたちがワクワクしながらつかみ取りしている姿が浮かんでくるような,とても素晴らしいアイデアだと思う.

 

一方で,アイデアだけあっても実践するのはなかなか難しいことだ.彼女の場合は偶然仕事を探しているときにある研究者と知り合い,国から予算をゲットし,一緒にそれを実現していったという.

 

実はここを訪問する前に我々はMalmo大学でanNa という参加型デザインの研究者の方とミーティングしており,malmoの市民を巻き込んだ活動について聞かせて頂いていたのだが,そのコラボレーションした研究者というのがまさにanNaだったという.

 

そしてanNaの取材で印象に残ったのが,教育でも参加型デザインでも,長いインクルーションのプロセスを「根気強く続けていく」ことだった.

www.impactdesignhub.org

Our approach is heavily influenced by Donald Schon’s ideas on design education, like those he explores in his book, “Educating The Reflective Practitioner.” We don’t work according to a hard and fast plan and we try to avoid providing students with prescriptive methods. There is no magic toolbox.

引用した彼女のインタビューもあるように,ドナルド・ショーンの「反省的実践家」の理論に影響を受けているそうで,厳密に決められたプランに従って行動しない,学生に規範的な方法論を与えることを避けるようにしている,「魔法の箱」はないのだから,と.泥臭く実践を積み重ねる中で見えてくるのものが大事だという立場で,これはその通りだと思う.

博論のリリース記事でも,

“What’s important is local approaches, to deal with ethical and practical concerns appearing during the way, but most important is long time involvement and the opportunity and space to try out, change and try again.

https://www.mah.se/english/News/News-2014/New-thesis-on-design-for-social-innovation/

 やはり長期間のインクルーションを強調している.

 

インスピレーションと継続性,両者とも,ものづくりのコミュニティにおいてはどちらも欠かすことは出来ないが,それをコラボレーションによって達成していることが面白いし,大事なことなんだろうと思う.

 

 

 

なお,Malmo市のリビングラボの取り組みは,Pelleらによって編集されたこの本に丁寧に解説されている.

 

mitpress.mit.edu