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みえないものを、みる視点。

「コロンブスの卵」的なテーマパーク

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先日,妻が招待券をゲットしたので豊洲キッザニアに行ってきた.平日の夕方ということもあって割と空いている.ここは子持ちでない限り来ないところなので,僕はオープンから10年経って初めて来る機会が出来たのだが,以前噂に聞いた通りに「よく出来ているなぁ」と今頃になって感心した.

 

まずいろんな仕事のパビリオンは,ヤマト運輸モスバーガーなど普段から街中にあるような企業のものなので,子ども達にとってかなりリアリティがあるわけだけど,各企業がスポンサードすることで利用者は安く体験できるというビジネスモデルになっている.つまりここで子ども達が行う活動(アクティビティ)は,アトラクションでもあり,一種の「広告」でもある.

 

次に,一般的なテーマパークというのは子ども達はお金を使って体験を買う消費者側になるわけだけど,ここでは仕事する側に回り,アクティビティを通じて通貨(キッゾ)を稼ぐことが出来る.うちの子はお金を稼ぐことにものすごくこだわってアクティビティを選んでいたw さらに,働いて稼いだ通貨は銀行(三井住友)に貯めたり,デパート(三越)で買い物したりすることができる,という資本主義社会の仕組みまで忠実に模されている.

 

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消防士は実際に水を出して火を消している.

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車は,運転免許センターで免許を発行してもらうことで乗ることが出来る.乗ったらガソリンスタンド屋さんがガソリンを入れてくれる.免許を発行してもらう手間を惜しんでいるのか,この日はあまり乗っている子はいなかった.

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うちの子が一番楽しがっていたのは,東京メトロの地下鉄運転手.最近出来たらしい.内部はドライブシミュレータみたいになっていて,結構長い距離を電車の運転を体験できる.なお,大人は基本的にアクティビティ内には入れないのでモニターやガラス越しに見るしかない.なので,子供は自分だけが体験したことを興奮して伝えようとするし,保護者はいろいろ聞きだそうとするので,親子の会話はとても増える.

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こちらは眼鏡屋さん.指折りの人気の理由はオリジナルなサングラスを組み立てて自分でもってかえることが出来るからだ.

 

写真に見えるように,どれもコスチュームが本物に忠実に作られているので,仕事人に成りきることで,こどもも親もとても喜んでいる.やっぱり職業への憧れというのはかたちから入るのだな.

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コールセンターのアクティビティまであるw.さすがにあまり子供はおらず・・.ただ人気のアクティビティの待ち時間に人気のないところには飛び込み参加できるので,その意味では先入観だけでない偶然の出会いをうまく活かしたサービスの設計になっているとも言える.

 

というわけで,あちこち観察しながら,「仕事する」という,通常は快楽的な消費とは結びつかないような体験でも,子ども達はここまで夢中になるんだなぁ.ということを思い知った.トムソーヤの,壁塗りでお金を稼いだというエピソードを思いだす.

 

みんな主体的に「する」ことを欲しているし,自分が担う役割を求めているのだ.それを(この頃は嫌われ者の)「広告」という形で実現してしまうとは,体験を売るテーマパークにとっては,まさしく「コロンブスの卵」的な優れたアイデアだ,と思った.

 

東京に進出した2006年は日本のテーマパークビジネスの競争が激しく少子化が見込まれる時期でしたが、「早くから子供のキャリア形成に関心を持ち、教育投資に積極的な家庭」へターゲットを絞り、「教育」と「リアリティ」を軸として事業を考えることで、子供の職業体験というブルーオーシャン市場へ参入することができました。新市場を切り開いた結果、競合が存在せずに価格戦略やプロモーション戦略を独自の形態で築くことができました。既存のテーマパークが投資しない部分や苦手な部分にあえて投資したことが成功の要因だと思います。

 

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