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みえないものを、みる視点。

オンライン研究室の挑戦 / 作り手側の立場になってわかること。

 オンライン授業について。先日書いた1,2年生の大規模演習の記事はわりと読んでいただけたようだが、今回は4年生の研究室のことを書いてみようと思う。ここ3年ほど7〜10名程度でちょうどいい人数から、本年度は13名の学生を引き受けることになり、久しぶりの大所帯、かつオンラインでの研究室活動という難題が加わっている。

 

 4年生たちといっしょに使っているツールは、リアルタイムコミュニケーション用のDiscord+非同期コミュニケーション用のScrapboxという組み合わせ。(結局2〜4年生全部がDiscordになった)。卒業研究はグループワークではないので、いまのところコラボレーション用ツールは検討中だけど、これからStrap(β版)に期待しているところ。

 

さて、 みんなやる気のある学生たちだから、こんな状況でもなんとか自分たちでできる範囲で研究を進めてくれているが、研究の初期は他者とたくさんディスカッションしてリサーチクエスチョンを固めていくことがとても大事なので、いかんせんゼミの時間だけでは時間が足りない。どうしようかなぁ、とミーティングしながらおもいついたのが、「トーク番組」を自分たちでやってみる、という方法である。

 

 オンライン授業の受講生は、とにかく言葉を発する機会が少ないし、何かしながらの作業になりがちで、集中しにくい。その一方で授業する側は、喋る文脈に全神経をつかい、集中力がはね上がる。準備に準備を重ねてちょっとでもアクシデントあれば汗がだらだら流れるような緊張がつづく、そんな非対称性がある。

 

 そういった真剣さは、おおいに学ぶ経験へと直結する。自分が実際に「つくる側」に回ってみると、自然な文脈の中で話題を深堀りしていくために、他者の話を傾聴することがいかに大事か、テレビの司会者やラジオDJ、Youtuberらの話術テクニックがいかにすごいか、よく見えてくるはずだ。ということで、みんなが話せるゼミの機会だからこそ、全員でトーク番組的なスキルを学んでみよう、と提案した。

 

2回ほど僕を交えてパイロット版を行う。初回のテーマは、「笑い×デザイン」。笑いに詳しいメンバーが出演する。

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 そうして感覚を掴んだのちに、3〜4人で1組になり、ゲスト役、司会者、コメンテータを割り振り、司会者とコメンテータが協力してゲストの研究テーマを深掘りしていく。そんな役割分担で全員のトーク番組を収録することを事前課題とした。(ちなみに大学の学期は5/11からだったが、3,4年生はすでに配属が決まっていることもあり、フライイングして4月から進めている)途中で、ある学生が壁紙やオープニング映像、BGMをつくってくれて、某国民的トーク番組のテイスト、というかパロティで統一された。

 

そして期限の5/13(正式な初回授業日)・・・。全員がピシッと収録も編集も済ませてきた、さすが4年生。僕の方でまとめてyoutubeに限定公開して、内部で見れるようにする。

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  視聴者に広くみてもらうことではなくて、周りに手伝ってもらいながら自分の問いを深めることと、番組の形式をかりて「自分たちでやってみる」ことが主目的なので、とりあえず研究室メンバーがみれれば問題ない。(もし見たいという方いらっしゃったら連絡ください)

 

 そして肝心のトークの話題の掘り下げは、僕がいなくても学生たちだけで脱線しないでちゃんと深められるのかなぁ、と不安だったけど、全部の回が素晴らしくて夜な夜な視聴しながら思わず感動した。みんなすごいよ。さすが4年生。なにより普通に僕一人が中心に応答していると最低1ヶ月はかかるところが、分担したことで全員分の堀りさげが同時に行われた。圧倒的時間短縮。

 

 学生たちの真剣さの混じったトークを聴きながら、いろいろと考える。このテーマを探すプロセスの悶々とする時期が、自分も知らない自分の未来を探っている感じがあって一番楽しいし、不確実な、いまこの時代に生きる一人の若者のかけがえのないリアルさが記録されているように思う。

 

 これを2月の卒業前にも、4年間を振り返ってもらって収録してみるといいかもしれない。30年ぐらい保管しておけば、きっと素晴らしいタイムカプセルになる。それまでyoutubeがあるといいのだが。