3年生向けの情報キャリアデザインで「私のキャリア」についての講演を依頼されました。学内で知っている学生たちなので、ちょっと攻めたことに挑戦してみようと思って、学生や先生の協力を得てコント5連発をしてきました。5つめのコントの台本を公開しておきます。実際にはこれに各自のアドリブ芸が加わっています。
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#5「情キャリでコントする」の巻
ナレーション=福田さん
小林先生=小林先生
川上=川上くん
ナレーション(ここは専修大学10号館。静まりかえった6階の研究室のフロア)
小林「(コンコン)上平先生、いますか?」
上平「はーい、おや小林先生、どうされました?」
小林「実は、僕の担当している情キャリで、専任の先生に自分のキャリアを話してもらう、という枠があるのだけど、7月2日の回、そこで1コマ講演してくれない?」
上平「え!情キャリ!あの大教室で3年生全員集まるやつですか?嫌です!」(即答)
小林「そこをなんとか」
上平「いや、それだけじゃなくて、実はその前の週末にデザイン学会の発表があって、あと火曜の情報表現演習も新規内容になっていて、とてもじゃないですけど、その辺は時間ないんですよぉ。」
小林「そこをなんとか。というか、僕が聞きたい」
上平「うーん」
小林「いきつけの『鬼のかくれば」で酒を奢ろうじゃないの」
上平「飲み仲間の先生にそう言われれば、断れるはずがない・・・・わかりました。やります」
小林「頼んだよ!じゃ」(笑顔でドアを閉めて退出)
上平「とはいえ・・・困ったなぁ。どうしよう・・・。普通にパワポ使って話したところで彼らが聞くわけが無いんだよな。うーん。いや、まてよ。2年前に講演に来てくれたお笑い芸人が、若手は何万かお金払ってステージに立っているって言ってなかったっけ。金払わないでオン・ステージを二百人以上の若者達が聞いてくれるってのは・・・よく考えれば、おいしい機会なのかも知れないな。しかも普通のお客さんは外しまくったら席立つかも知れないけど、彼らは逃げない。僕がどんなに寒いことを言っても、逃げない。いや正確には逃げられない。
よし、逆に考えてるんだ。請け負いの講演ではなく、新しいことの実験の場と考えるんだ。そうすれば前向きに考えることができる。(ぽちぽちと携帯でメッセージ打つ仕草)うん、まずはステージ衣装が要るな、いつも黒い服を着ているけど、たまには派手なシャツを買ってみよう」
川上ステージに来る
川上「(コンコン)先生、お邪魔します」
上平「おお、兄ちゃん、じゃなかった今年の上プロのリーダー、アクティビティに定評のある川上君じゃないか。呼んで10秒でやってきれてくれるとは。さすが。急に呼び出してごめんね」
川上「どうしました?」
上平「いやー、実はさ、今度の情キャリで講演することになってさー」
川上「マジっすか。それは笑える」
上平「笑うなよ!」
川上「すみません」
上平「でもね、せっかくの機会なので、自分を超えようと思ってさ」
川上「先生が自分の限界を超えるってことですよね・・・うーん、滑舌と早口が倍速に・・・壊れかけのラジオみたいになっちゃいますね。」
上平「壊れ〜かけの〜Radio♪ って、違うわ!次僕の滑舌について触れたら上平プロジェクトは全員単位あげないからな! そうじゃなくて!せっかくなのでこの機会を通して、デザインの大事なことに気付かせられるんじゃないか、って気がしてるんだよね」
川上「はあ」
上平「例えば講演っていうとさ、なんだか偉そうな人がやって来て、自分の自慢話をして、なんか教訓めいたことをまとめて、それを箇条書きにしてパワポめくりながら話す。っていう、そんな型ができちゃっているじゃない」
川上「だいたいそうですね」
上平「学生達にしても社会人にしても、もう普通に進行する話なんて聞きたくもないんじゃないかと思うんだよね。パワポ使った予定調和な話だと、眠くならない?」
川上「なりますね」
上平「あれは実は講演者を助けるために作られたツールなんだよ。自分の姿に視線を集中させなくて、スクリーンの方にそらすことができるだろ?それで恐怖感から逃げることができるってわけだ。でも、本当はそうじゃなくて、プレゼンを届ける側の、観客や学習者が良い時間を過ごせるかどうかを問い直すことは必要だよね」
川上「そう思います。そこをもう一回定義しなおそうとすることが、たぶんデザインする人が持つべき姿勢ですよね」
上平「そうなんだよ!安易に既存のフレームに乗らないで、例え失敗するかもしれなくても、その怖さを背負った上で、古い自分を乗り越えるために立ち向かうこと。僕はそれこそが大事だと思っているんだ。大学の教授とかだと、過去に得た知識だけで過ごしていると思われているかも知れないけど」
川上「え、違うんですか?」
上平「いやいや、専門家ほど、それまでの必殺技を捨てて闘うのさ。オーディエンスの3年生たちに『俺もゼロから挑戦して居るぞ』と、自分が恥かきながらも新しい伝え方のデザインを探っている姿をさらすのなら、パワポには決して書かれないような意味が読み取れるんじゃないかな・・・」
川上「いやどうでしょう。みんなツイッターで晒して笑うんじゃないでしょうか」
上平「そうかもね、まあそれでもいいや。」
川上「先生!そういえば、前に芸人なりたいって言ってましたよね。それなら、聞く側が楽しくなるような、コントをするってのはどうですか」
上平「うん、それな。スライドでは寝ちゃう奴も、コントなら何故か自主的に動画まで撮るだろうから、今の出来事に集中するって意味ではありだと思う。僕も一部コント形式を取り入れようかな、ぐらいまでは思いついたんだけど・・・いまいちまとまらなくてさ。」
川上「講演全部をコントにしてしまえばいいんじゃないでしょうか。全編フリップブック。それでどうですか?」
上平「おお、それだ!全部コントにしてしまえばいいのか!よしイメージ湧いてきた。そうだ、ついでにお前らも出てくれるよな。そういえば、こないだカンパしたキックオフ飲み会の時の酒はうまかったなぁ」
川上「え」
ナレーション(そうして私たち上平プロジェクト全員も、この講演にいつの間にか協力させられてしまうはめになったのでした。おしまい)
終