Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

デザイン・ウィズ・ノンヒューマン:Xデザイン学校公開講座より

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 ちょっと前の話になるが、9/10にXデザイン学校公開講座で講演してきた。Xデザイン学校では他の講師陣が豪華なこともあり、僕は変わった問いを投げかける変化球投手の役割だと理解している。昨年度は「デザインすることはGiveすること」で、今年の題目は「デザイン・ウィズ・ノンヒューマン」。ほとんどの人が「ん?」と戸惑うような切り口である。しばらく時間経ってふり返ってみると、色々と言い足りてないことにも気付くもので、今回のスライドは非公開としておきたい。(連絡頂ければお見せします)

 

大まかな講演概要は以下の通り。

 

 人類学はデザインリサーチの方法にも大きな影響を与え、人間とは何かを探求する学問として、デザインとは相互関係にある。その人類学は、21世紀に入って大きく変化していることはあまり知られていない。実在している「何か」を、特定の人々がどう認識しているかを調査・記述するという古典的なスタイルを経て、現在は、動植物やモノなど、非人間との相互作用によって生み出される連関的な世界の中においての人間を捉えようとする、いわゆる「存在論的転回」という潮流が起こっている。このような問い方の転回は、遠からずデザインの人間観・世界観にも影響を与えるだろう。そして「デザインの次に来るもの」を示唆するといえる。

 

 人類学では、かつてのように「文化」と「自然」を二元論的には扱わなくなっている。翻って現在隆盛している「デザイン」の概念を再考してみると、デザインは人為で、人に対して行われる人間中心の視点が一般的な共通認識であることが浮かび上がってくる。一方で欧州のデザイン研究では、近年はノンヒューマン(非人間)に言及されることも増えている。例えば、ミシェル・カロンによると、「非人間は、デザインコミュニティのおける戦略的プレイヤーと見なすことが出来る」。

 

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とはいえ、我々は人間同士の関係(ビジネス、社会、文化など)しか真面目に考えていないのかもしれない。そこで、デザインの協力関係を、人間以外に拡げて考えてみる。この境界こそが面白い。

 

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ここでは、4つの領域(動・植物/微生物/人工物・人工知能/無機物)に分けて、興味深いコラボレーションの事例を蒐集してみた。

紹介した事例からいくつかピックアップ。

High-Line(NYC)

Oyster-tecture (NYC)

犬と人が出会うとき 異種協働のポリティクスミャンマーでのWSから気付いたこと)

BIO LOGIC:MIT Tangible Media Group

発酵の技法―世界の発酵食品と発酵文化の探求 

Locally noisy autonomous agents improve global human coordination in network experiments (日本語記事)

断崖クルージング(鹿児島・甑島)

The Mushroom at the End of the World: On the Possibility of Life in Capitalist Ruins日本語記事

 

これらの事例から見えることとして、4点。

 

1)非人間との協働は、東洋では昔から当たり前である。農業はそもそも微生物とのコラボであるし、仏教的な世界観では生命の価値は等しい。しかし、産業革命期に生まれた西洋的な概念であるデザインが輸入されて以降、もともとあった文化は上書きされて力を失いつつある。

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2)気候変動期に入り、年々過酷さを増していく地球で人間は生き延びていく方法を探していかねばならない。非人間という観点で世界を見ると、都市部と地方ではリソースの豊かさが逆転する。都市の中では何かを作れるようなリソースがとても少ない。

 

3)(人間中心)デザインは、製品開発のモデルとして生み出された考え方であり、地球全体から見れば、局所的な解に過ぎない。人間は人間だけでは生を持続できないわけで、一段階フレームを拡げてバランスを取り直さなければならない時期が、近々来るだろう。

 

4)例えば、里山は人間の手が入ることによって、原生林よりもエコシステムが豊かになる例として知られる。極端に考えるよりも、中庸のバランスの取り方はあるのではないか。

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最後にまとめ。(これを言い忘れた・・・)

非人間にフレームを拡げる理由は、エコロジーやサスティナビリティという観点だけでない。例えば天気の話題で初対面の人でも仲間になれるように、災害時には連帯するように、視点を人間同士の外側に置いてみることは、考え方が違っても共通して取り組める問題となる。結果的に人間同士が協働していく機会や可能性を広げるのではないか。

しかし、その外来植物によって緑地にある4つの組織は繋がることができました。我々は徒歩10分圏内のご近所さん同士でありながら、普段はなかなか接点はないのですが、彼ら(外来植物)が、普段出会わない人間同士が協働する機会をもたらしてくれたわけです。

"厄介者"をめぐる、ご近所協働。 - Kamihira_log at 10636

 

今回の講演の主題は、視点提示が主目的のため、個人的にもう一息。もう少し考えて、熟成させながら実践していきたいと思う。引き続き情報収集継続中につき、面白い事例をご存じの方、教えていただけましたら幸いです。