これは何に見えるだろうか?
泥?そう、なんてことのない乾いた泥である。
実はこの泥、落下したツバメの巣である。
毎年うちの大学の棟にはツバメが巣をかけ、ある時期はとても賑やかになる。でも今年はヒナの声がしないなぁ、と思っていた。エレベータで乗り合わせた警備員さんによると、これまでつくっていたところに巣を作っていたところ、カラスに襲われて卵が食べられてしまったそう。
それでもツバメたちはめげずにカラスに見つかりにくい場所にこっそり新しい巣を作っていたのだ。僕はせっせと巣作りするツバメたちを見るのが毎朝の楽しみだった。彼らが巣作りに賭けている健気さを見ていただけに、悲しい。
前後の文脈を知ると、それまで見えなかった過酷な生存競争のドラマが浮かび上がってくる。我々にとっては情報が断片化すると「ただの泥」以上の意味を見出しにくい。
この散乱している泥も、休み明けには何事もない様に掃かれて無くなってしまうんだろうな、と思った。
追記:また巣作りに再挑戦していた。たくましい。