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みえないものを、みる視点。

リスクを取らなきゃ創造はできない

先日のこと、カリキュラム改訂のための学部内の勉強会でうちの学部長が配布した参考資料がとても興味深かった。その資料は、全米カレッジ・大学協会(Association of American Colleges & Universities)が開発したVALUEルーブリックである。

 

ルーブリックとは学生が"何を学ぶのか"を示す評価規準と、"どこまで到達したか"のレベルを示す具体的な評価基準を示す評価指標のマトリックスのこと。

 

VALUEルーブリックは、全米の大学を代表する専門教職員が、学習の成果に関する各大学のルーブリックや関連文書を調査し、教職員からのフィードバックを参考にして作成されたものである。このルーブリックは、段階的達成レベルを示す能力指標により、各学習成果の原則的な基準を示すものである。このルーブリックは、各大学が学生の学習を評価し考察する目的で使用するものであり、成績をつけるために使用するものではない。

 

AAC&Uは全部で15個のルーブリックを開発したのだが、注目はその中のひとつ、「創造的思考(クリエイティブシンキング)に関するVALUEルーブリック」。

 

  

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上の図は学修評価・教育開発協議会によって日本語訳されたもの(PDF)

原文はこちら

 

日本語的に怪しいところが一部あるが、一番左側の列、クリエイティブシンキングを示す6つの評価基準のひとつとして、「リスクテイキング」(Taking Risk)が位置づけられているのが見える。

 

  最高レベルの創造的思考をするためには、各領域の制限要因について確固とした知識を持ちながらも、新たな、独自の、非典型的な方法でいろいろなものを再度結び付け直すことで、その境界を超え、新たな統合を発見して批評的にとらえ、解決法を生み出すために創造的なリスクテイキングを行い認めることが必要である。

 

 リスクテイキング」(Taking Risk):個人的リスク(困惑や拒否に対する不安)や、課題達成に失敗するリスク(課題の本来の制限を超越、新たな材料や形式を導入、論争となっているテーマを取り上げる、一般的でない考え方や解決法を擁護)を含む。

 

創造するということはこれまでにない組み合わせを探ることである。だからその活動を行うためには当然リスクはつきまとうものなのだけど、こうして学習の評価基準として明確に示されたものを見ると、なかなかハッとさせられる。

アメリカの高等教育では、結果を出したかどうかだけでなく、その以前に「失敗するリスクをとってでも、挑戦しようとしたかどうか」を奨励して、それをちゃんと学習の評価に含めているわけだ。

 

日本でも創造的思考に関する学びは強く求められている。そこでは我々にこんな評価指標(=それを「よし」とする社会的合意)をつくれるのかが問われていると言えるだろう。こうすればいい、というような安定したテーマややり方に安住し続けていないで、自分なりに新しく挑戦しようとするかどうか。育てる側は、創造性は伸ばしたいけどリスクは取りたくないとか虫の良いことを言ってないで、それにふさわしい環境を用意できるかどうか。

 

あなたは、若い人達や子供達が、「不安や失敗のリスクをとってでも挑戦しよう」としたことを褒めていますか?