Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

継続的な信頼関係をつくること

f:id:peru:20160112010903j:plain1月12日(月)午後.あいかわらず天気悪い日が続くが,Give&Takeのリビングラボのお手伝いでフレゼリクスベアにある老人ホームへ行く.デンマークの老人ホームには初めて訪問したが,立派な建物だ.こういうところまで洗練されているとは思わなかった.

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お年寄りのみなさん10名とプロジェクトメンバー(2名+僕)が集まって,まずはみんなで散歩へ.

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ざくざくざく,と凍った雪道を歩いて行く.のんびり歩くのかとおもったら,早すぎで笑った.しかも極寒の中を40分.みなさん70overな年齢のはずだが,健脚すぎるw

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もちろん,ただ歩いているわけではなくて,RasmusもLineもいろいろと世間話しつつ近況を聞き込んでいる.これはお年寄りとのお互いの信頼関係(ラポール)づくりにおいて重要なプロセスでもある.ラポール形成にはいろんな方法あるわけだけど,「極寒の中を一緒に散歩する」というのもデンマーク人にとってはCoDesignの一部なのだね.Rasmusは以前レポートしたコソボのプロジェクトのリーダーだった若者で,やっぱり溶け込むのがうまい.

なお,この世代は英語喋れない人も多いのだけど,僕に日本語で話しかけて来たお婆ちゃんがいて吃驚した.家族でしばらく恵比寿に住んでいたそうだ.

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ホールに戻ってきた.みなさんここに住んでいるわけではなく,スペースとして借りているだけらしい.

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この日はブックレットつくり.

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リビングラボは毎週月曜に行われており,この方々を巻き込みながらシェアリングエコノミーのサービスを実験しているわけだけど,これまでの6回(6週の)開催された各回をファイリングしている.

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その場でプリントしている.面白かったのが,この男性が写真好きで一眼レフを持っており,積極的に自分で撮りためてアーカイブに協力していること.こういう参加者の手持ちのスキルを逃さないで発揮させるのはいいな.

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なるほど,こうやって継続的に実験していることをふりかえる,というのは大事なことだ.だれもが日々の経験は忘れていくもの.経験を目に見える形でファイリングし,それが毎回増えていくというのは,出来事を再確認することに加えて,(一緒にプロジェクトをつくっているという)自己効力感の形成という意味でも興味深い.

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デンマーク語が分からないと雑談しているようにしか見えないが,どうやら前回まで設定したアカウントや学んだ使い方を踏まえて,今どんな感じかをシェアしているようだ.それにしても(日本と同じで)女性のお年寄りは元気だ・・・.男性は孤独になりがちだけどね.

 

1時間ほど話しして,この日はお開き.

 

リビングラボは「場所」が必要と思われがちだが,このプロジェクトでは目的に応じて場所に縛られないで活動している.このフェーズでは自宅訪問もしてどう使いこなしていくかの実験を繰り返しているという.ただ散歩やブックレットが表しているようにけっして受け身の被験者というわけではなく,おなじ目的を共有するコミュニティを意識していることは明らかだ.

 

この共創プロセスに参加しているお年寄りの方々について,お金が出ているわけでもないのに,彼らのモチベーションは何なのかをLineに尋ねてみたところ「みんなバラバラだとおもうけど,新しいことを学べる機会でもあるし.コミュニケーションが増える場でもあるし,そういう好奇心なんじゃないかな」と言っていた.なるほど,このサービスを使うことは,アプリの使い方だけじゃなくてシェアリングエコノミーの考え方を学ぶことで,自分ができることを問い直し,自分を変えていこうとするプロセスでもある.

 

以前Leneが「(スカンジナビアンな)参加型デザインはロングタームが前提だよ」と言っていたが,逆に言えばある種類のデザイン実践では,参加者が変わっていくという過程が存在するということであって,それをよく考慮する必要があるということである.よい関係を築いていくためには同じ人間同士,それなりの時間を費やして同じ経験を重ねながら検討することが大事なのだと気付かされた.