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みえないものを、みる視点。

【LOUISIANA #3】こどもたちは、自己満足でないものづくりはできるのか?

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9月28日(月)の早朝。またもルイジアナ美術館近くにある学校へ。この学校は、広くて緑の多い遊び場に、教室は全部1階だけでつながっている。なんという贅沢な土地の作り。「ビレッジ型のホテルみたいだよね」と先生も笑っていた。

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というわけで、今日はArki_labによる、ルイジアナプロジェクトの第2回目のワークショップ。こどもたちに説明するJeanette先生。(過去記事:イントロWSの模様第1回WSの模様)。今日は前回までのインプットを引き継ぎ、自分たちでアイデアを具体化していくようだ。この子達は前回会ったことがあるので覚えていてくれている子もいた。

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最初のワークは、ボードゲーム風の、Arki_noply。グループになって、特定の場所をテーマに改良を試みていくもの。シートはホワイトボードと同じような素材でのラミネートになっているので上からマジックで書き込んでいける。

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このゲームは、ボードゲームを意識してつくられた彼らオリジナルのツールである。

周囲に書かれているミッションをみんなで分析しながら議論し、ひとつづつクリアしていく。そして最終的には、自分と他の市民にとってよい場所になるような解決案のアイデアを生み出すことがゴールとなる。デンマーク語なのでゲームの指示がほとんど分からないんだが、でてくる単語や写真から推測すると、今回のテーマにあわせた特製だ。毎回彼らは目的に沿って用意しているんだな。ログブックという個人リフレクションできるシートも用意されているという至れり尽くせり。当然ながらこどもたちはかなり盛りあがって取り組んでいた。

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 カメラを向けると喜ぶ女の子達w。見知らぬアジア人のおじさんが教室にやって来ても人見知りしないってのはちょっとびっくり。

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ゲームでアイデアをまとめた後は、「Prototype1:1」という実寸でプロトタイプを作ってみる、というワーク。Arki_labのワークショップはいつもはブラスチックのソーダドリンクのケースを使っているのだが、大量に必要な今回はどうするんだろう、と思っていたら、なんとダンボールw。たしかに、これなら軽いし、運搬のスペースもとらない。

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こどもたちはアイデアの一部を実寸で作ろうと、トライし始める。試行錯誤しながらだんだんかたちが見えてくるようなチームもあれば・・・。

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この期に及んで意見がまとまらずに作り始めることもできないチームも。作るためには、なんとかして決めて、思い切って進める勇気を身につけていくしかないのだよね。それを13歳で学べているのは羨ましいことだ。

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思い切りの良いチームはダンボールだけで吃驚するようなものをつくる。これは円形のブランコのような遊具なんだそうだ。これを作り進める時にもこのチームはすごく工夫していて感心した。

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駐車場から芝生の上へと、土俵をかえてしまったチーム。前提にとらわれるのではなく、自分たちで変えてしまうのはすごい。

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教室に戻り、ダンボールのプロトタイプを写真に撮り、別の写真素材などをプリントアウトする。

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それをコラージュして具体化し、一枚にまとめてこどもたちの側は最終提出作品ということになるようだ。

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Jeanetteからルイジアナ美術館での展示風景の説明。最終局面をイメージして、心なしか子ども達もやる気が高まっているよう。

 

この日、思ったこと。
1)日本でも小中学生にデザイン教育を、という議論はあるし、自分も何度か挑戦してきた。そして、これまで僕は、子ども達がデザインをするのは、他人の問題を想像する以前に、自我もまだできてないわけだから、自分と切り離して考えるのは難しいよな、と思っていた。けれどもそれは思い込みだったのかもしれない。Arki_noplyでは「あなたと、他の人にとって」よくなるようなアイデアをと示している。チームでやるから「あなた」も複数だし、"他の人"というのも対象となる利用者を摺り合わせる必要がある。彼らはそういう考え方を促すような仕組みとして、このボードゲームを作っている。

実際に出てきているアイデアはどれもプリミティブなものではあるのだが、彼らなりに自己満足ではない考え方で生み出した結果だし、十分に彼らが新しい視点に気がつくきっかけとなっていることは間違いなさそうだ。

どうやら、足りないのは、自我ではなく、そういうことを考える機会であり、必要性なのかも知れない。


2)彼らは半日の2つのワークのために、特製のボードゲームのシートをカスタマイズし、そして大量のダンボール(軽く100個以上)を組み立てている。一体どれだけの時間をかけていることか。鮨名人の小野二郎氏(すきばやし次郎)は「仕込みをすませて、厨房に立った状態で仕事の9割は終わっている」と言っていた。妥協しないで準備すること。そこまでしているからこそ、参加者は短い時間でも創造の最も大事な部分に集中できているのだ。

 

 

↓公式サイトに今回のプロジェクトについてのページが出来た。
(ブラウザ使って翻訳すると、内容は分かると思います)

www.louisiana.dk

 

ちょうどルイジアナ美術館では、企画展として草間彌生展がはじまっているが、ワークショップで会った美術館のスタッフによると凄い人気のようだ。