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みえないものを、みる視点。

【Give&Take Project】ソーシャルワーカー向けのワークショップ

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 6月9日は、参加しているEUプロジェクトのワークショップ。ワークショップと言っても、よくある体験学習的な単発イベントではなく、プロジェクト全体のマイルストーンの中で利用者を巻き込みながら開発していくために位置づけられているもので、プロジェクトメンバー総動員して綿密に設計を進めている。僕自身、このプロジェクトの一員としてのワークショップは初めてなので、一体どのように実施されるのかとても楽しみにしていた。

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朝8時にコペンハーゲン近郊の住宅地にある会場のカルチャーハウスに集合する。フレゼレクスベア市の所有している建物でワークショップ等の小規模の会合の目的に使われているようだ。参加者は市職員のソーシャルワーカーさん12名。「平日に終日参加必須のワークショップやるなんて・・・」と驚いたら、業務の一環として参加するので問題無いんだそうだ。これはフレゼレクスベア市の公的なプロジェクトでもあるので、かなり手厚くサポートされている。

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 始めに4名が手短にプレゼン。プロジェクト全体の狙い、市の目的、これまでの活動、今回のゴールなど。そして「質問は?」に聴衆がビシバシ手を挙げているのが、さすがに議論慣れしている国民性っぽい。上の写真のマリアはこのフェーズの責任者でもあり、ここ最近、準備に相当力をいれていたのを我々は知っている。デンマーク人もやるときはやるようだ。

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午前の部がスタート。集まったソーシャルワーカーのみなさんは、思ったよりとても若く、ファッショナブルな方々だ。そもそも「ソーシャルワーカー」とは高齢者の世話をする人達で、この国では基本的に公務員なのだけど、今回の高齢者向けサービスデザインにおいては、例えばAさんがあることで困っている、それに対する解をBさんがもっている、普段の接点のなかでそういった事情を仕事を通してよく知っていることから、AさんとBさんと人的にマッチングしていく、キーとなる人々と位置づけられている。結構興味深い議論をしているはずなんだが、今回は全てデンマーク語で進められているので我々はほとんどわからず・・・。ビデオ係のメンバー(ベルギー人)も辛かったようだ。

 

それにしてもこちらのワークショップではグループに1人ずつファシリテータがつく、というのは本当だった。ビッグネームの教授や市の偉い人が同じグループでも、みんなまったく物怖じしないんだな。縦の力関係は一切無くて、全員に平等が根付いていることが日本人としては驚き。

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 模造紙には簡略化した市の地図が書かれており、それを手がかりにソーシャルワーカーたちは街のどこで、どこでどんなことがおこりうるか、を「自分の経験を元に」洗い出していく。みんなベテランなので嘘っぽいシナリオにはならないわけだ。

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わずか90分ほどでもかなりいろんなデータが集まった。そしてレイヤー毎にキレイに整理されている。観察していて思ったんだけど、これはワークショップと言っても、ほぼフォーカスグループ(グループインタビュー)だ。そしてものづくりとして位置づけていることで、聞き取り一方向だけの場よりもはるかに情報が濃くなっているところが面白い。そして地図ふくめ、写真や似顔絵などのツールを事前に全部綿密に準備しておくことで、素人のものづくりに対する心理的な抵抗を下げているところは、さすが。

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ランチは、市の提供。デンマーク名物のスモーブロー(オープンサンド)。「我々にとってスシみたいなものだ」と説明された。

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午後からは、ある特定のシーンを元にしたデザインゲーム。ボードにUIとユーザのコンテクストを貼りながらチームでシナリオを考えていく。ストーリーボーディングに近い。午前中のワークよりも参加者にはクリエイティビティが要求される。

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画材のモデル人形ツールが大活躍している。この使い方は面白かった。少し頭の部分を工作するだけで、なんだかそれっぽくなるから不思議。

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プレゼンは、人形を使ったスキット(即興劇)。全員が恥ずかしがらないで真剣に演じるので、かなり上手に感じる。ビデオでスクリーンに映すと小さな人形もかなり映像的なシーンになる。新感覚の映像プロトタイプである。

 

普段デザインとは関わってない人々が創造するのはちょっと難しいとおもうが、彼らには単にデザインの成果物を求めているわけではなく、プロジェクトに積極的にプロとしてコミットさせることで権限委譲していくということだろう。そして我々スタッフに「どんな発話データも逃さないように最新の注意を払え」と指示がとんでいることをふまえれば、もの作りの結果ではなくて、そのプロセスの会話の中にこそ重要なインサイトの種が埋め込まれているはずで、彼らはそこを見ているのだろう(と僕は解釈した)

 

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終了後、メンバーはさっそくリフレクションというかフィードバックをまとめるミーティング。今回だけで10人以上がワークショップ運営に関わっている。ワークショップ中はデンマーク語だったからわからなかったが、ソーシャルワーカーたちからはかなり厳しい突っ込みも入っていたらしい。

 

プロジェクトは急ピッチで開発が進んでおり、これから大事なイベントが続く。参加型デザインプロセスで進めるのは当たり前だが、普通に開発者だけで進めるのと比較して何倍も時間が必要だ。かくも大変なのか、と思うことしきり。