Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

四半世紀の時間を超えた体験

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生きていると、人生には時々思いがけないことが起こるものだ。

2ヶ月ほど前のこと、たまたま検索した先でMax Billのドキュメンタリー映画がスイスで作られていたことを知った。Max Billとは、スイス生まれの画家/彫刻家/デザイナー/建築家であり、バウハウスで学び、その後継であるウルム造形大の設立時の学長をつとめたモダンデザインの世界的巨匠である。

https://cdn.shopify.com/s/files/1/0204/1770/products/Junghans-Max-Bill-Automatic-Watch-J800.1-38mm-White-027-3500.00-2_f436502b-ba62-40e5-ade3-e7de520532a8_2000x.jpg?v=1537963087

時計好きな人には、ユンハンス社の色あせない美しさを持つ腕時計のデザインで知られている。

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また、日本ではそれほど知名度はないが、アーティストとしても優れた作品を制作していて、4年ほど前に、千葉工大の山崎先生は「マックスビルの会」というのを開催されている。(僕は行けなかった・・・)

マックス・ビルの会 レポート

 

造形の手段としての「構造」という概念をはっきりと表したのがマックス・ビル
その構造は「数学的思考方法」という言葉で表現されていましたが、
数字を直接利用する難しいものではなく、視覚的に捉えることのできる「数学」です。

他の言葉に置き換えるならば、リズム・法則性・連続性・・・といったところでしょうか。

http://tokyo.metrocs.jp/wp-content/uploads/2014/11/81.jpg

 

 身近なところでは、箱根彫刻の森公園にも彫刻作品がある。

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僕は大学生だった頃、billの数学的な美意識を持つ絵画が好きすぎて、パク・・・いやインスパイアされた抽象作品なぞ作っていたのである。

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Requiem for Bill  by Takahito KAMIHIRA (1994.12)

これはちょうどbillが亡くなった時に制作した抽象画で、ビルの造形言語を別のルールで再解釈して、テンションによる線で構成したもの。2次元なのか3次元なのかわからない錯視的な造形を目指した。まあ今見てみれば青い若者の習作である。

 

自分にとってそんな思い出深いbillのDVDがウェブサイトから買えるようだったので、短いメッセージを添えて購入申し込みしてみた。すると、映画を撮った監督のエーリッヒ・シュミットからメールが!なんと12月に日本に撮影に来るのでそのときに渡せると思う、夜にでも会えないか?とのこと。エーリッヒの奥さんのangelaはなんとbillの前妻で、ふたりでbill hausというビルの記念館を運営しているそう。

 

 二つ返事でOKしてなんどかやりとりするうちに、僕はいつのまにか帝国ホテルの彼の部屋にいた。

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 With erich and angela at teikoku hotel, dec 3 2018

まさか四半世紀経ってbillの奥さんに当時の真似事の作品を見せる日が来るとは思わなかったな。当時の自分に「いつかそんなこともあるぞ」と励ましてあげたい。

 

彼の部屋でDVD とともに、翻訳の許諾と英語のサブタイトル(字幕)データを頂いた。 来年はバウハウス100周年で、日本でもいろんなイベントが企画されている。その一環としてこの映画を上映できる可能性を探ってみたい。どうなるかまだ決定している話ではないので具体的なことは公開できる話ではないけれど、こういった貴重な映像を日本に紹介するために、ちょっとでもお手伝いできればと考えている。

 

追記:

なんと、実現しました!

kmhr.hatenablog.com