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みえないものを、みる視点。

冊子「すべての人がデザインを学ぶ時代に向けて」を制作しました

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科研費のプロジェクトで、情報デザインの教育者に向けた小冊子「すべての人がデザインを学ぶ時代に向けて」を制作した。A4変形の全88Pで、講演録と教材5点を濃縮して収録している。日本語タイトル、そして英タイトルの「Toward an Age When All People Do Design」や裏面コピーの「Design by Ourselves」には、最近の僕の活動を反映してみた。

 

この冊子は、8/9,10に秋田公立美術大学にて開催される第11回全国高等学校情報教育研究会(高校情報科の先生たちの全国大会)に合わせて作ったもので、高校でのデザイン教育を検討するための、いわば「たたき台」である。この会場で全国の先導的な先生達に頒布する予定。内容はかなり充実していると自負しているが、時間が足りずに昨年と今年開催した高校生向けのデザインワークショップの事例を入れられなかったのは、ちょっとだけ心残りだ。

 

#この冊子、情報科の先生方や大学のデザイン教育関係者の方々に差し上げますので、読みたい方いらっしゃいましたらお問い合わせください。大会配布分以外にちょっとだけ残り部数あります。企業の方や一般の方でしたら電子版でなら差し上げます。(一部版権的な面でトラブルになりそうなところがあるので、インターネット公開はしません)

 

 

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冊子ができていく経緯としては、なかなか面白い偶然が続いたのでメモとして書いてみようと思う。

 

1)もともとは全高情研第9回大会(2016年8月)が専修大生田キャンパスでの開催で、僕は会場サインなどのデザイン周りをお手伝いすると同時に、先生達向けにワークショップを開催する機会があった。今の学部長経由で降ってきた仕事だったが、そこで熱心な情報科の先生方と出会い、そして情報デザインに関する学習が高校普通科で始まることを知る。

 

2)東京都のY先生に協力いただいて、研究室の学生達が高校生向けのデザイン学習教材開発のプロジェクトに取り組みはじめる。いろいろ先生達に話を聞き、対応を聞くと2022年開始の新学習指導要領実施の前に、まず教科書ができてしまうので、一人の教員が何かを提言するならその前の2017〜2018年ぐらいしか余地はなさそう、ということを知る。

 

3)2017年11月のAdobe MAX教育セッションにおいて、文科省の教科調査官の鹿野先生と一緒に機会を頂いて講演。そもそもは「興味深いセッションがあるらしいけど、この日は火曜で会議日だから行けないなー」とぼやいていたら同僚の望月先生から、「そんなもんAdobeに適当な名前で依頼状もらって学部長に許可もらえば一発じゃないですか」と入れ知恵をもらう。そこで知り合いのAdobeのMさんにメールで打診したらいつの間にかなぜか講演することになってしまった、という。(そうか、そもそも彼の一言がきっかけだったか・・・。)泥縄で準備したが、長年の蓄積を活かすことができたのと、割と求められているような話だったらしく、わりと好評だった。

 

4)Adobe MAXでの講演からアップデートしたものを2018年6月に東京都の都高情研の研究協議会にて講演する機会を頂く。春から始まった科研の研究を進めるためにもちょうどいいタイミングだった。

 

5)この講演はSlideShareにスライドをあげてあるが、肝心の講演ログはない。そしてAdobeのEducation Exchangeにも映像がアップされているが、あちこち説明不足のところが多くて冷や汗が出る。何よりも1時間の講演なんてかったるくて、自分でもとても聴いてられない。というわけで、この講演をベースに学生たちの活動を追加した成果集をつくり、それを「たたき台」として配布することを思いつく。冊子ならパラパラみて面白い所から読むということができる。というわけで学生2名をアルバイトで雇って文字起こし開始。

 

 

6)せっせと加筆修正し、札幌市立大の福田先生や同僚の栗芝先生、星野先生に下読みをお願いして間違ったことを言ってないかを専門家の目からチェックしてもらう。

 

7)冊子の印刷資金は科研費から。無料配布なので、まあモノクロでいいか、と思っていた頃、偶然、別件でクリエイティブ関連商社のTooさんが来研。Too社のAさんはAdobeMAXを聞いてくださっていた。作成途中のゲラをお見せしたらスポンサーになってくださり、カラーで予定よりもちょっと多めに刷れることに。

 

8)冊子の入稿データは、全部自分でinDesign(本文)とillustrator(表紙)で作成した。なので原稿書きからレイアウトまで工程の圧倒的短縮が可能に。僕にとってはWord使うよりずっと作業早い。タイトルのフォントは凸版文久見出しゴシック(漢字)+NPGヱナ(かな)。表紙写真は、演習のTAやってくれているフォトグラファーの大池康人君が撮影した我々の学部の演習の風景を使わせていただいた。僕のやっつけレイアウトでも、彼の写真は学生達の瑞々しさが絶妙に切り取られていて、実に素晴らしい。

 

9)高校のデザイン教育に何かを提言するなら期限は2018年と言われたが、関係者が集結する全高情研にギリギリで滑り込むことに成功。

 

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スケジュールはこんな感じ。僕の発表資料より。実際、教科書作りはじまったらもう提言の余地もないだろう。このたたき台は少しぐらいは何かの出発点になるだろうか。

 

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実は僕は情報科教育向けの「たたき台」は、10年ぐらい前に一度作ったことがある。科研基盤Bの「高等学校情報科における科学的ミニマムエッセンシャルズのための教育プログラムの開発」というプロジェクトでの仕事だった。

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自分の実践を元にした「情報系学部におけるデザイン教育ケーススタディ」という冊子で、[vol.1視覚伝達編][vol.2 基礎学習編][vol.3 協調学習編]の3部作をつくった。三冊合わせて230Pほど。プロジェクト代表だった香山先生(信州大教授)が審議会の委員だったこともあり、ここでまとめたことはその後専門学科情報科での情報デザインのカリキュラム策定にも少し反映されている。

内容については、浅野先生がブログで紹介してくださっていた。

体験!情報デザインに行ってきました(2008.8.8)

情報系学部におけるデザイン教育ケーススタディ(2010.4.28)

ありがとうございます。それと当時千葉工大に赴任したばかりの安藤先生から要望されて差し上げたところ、かなり細かいところまで丁寧に読んでコメントくださったことが嬉しかったっけ。

 

自分の実践も、この頃よりはちょっと成長しているといいのだけど。