Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

巨匠達のデザイン態度

 デザイン態度のリサーチを初めてから、過去の偉大なデザイナー達の発言が目に留まるようになった。時折ハッとさせられる真摯な言葉ばかりなので、メモとしてまとめていきたいと思う。そんなわけでDesign Attitudeのタグを作ってみた。いまのところ記事2つ。

 

f:id:peru:20180717171830j:plain

 Helmut Schmid(1942-2018)

伝説的タイポグラファー、ヘルムート・シュミット。未だに古びないポカリスエットのロゴを作った人と言えば、一般の人にも伝わるだろうか。彼はつい2週間前にこの世を去った。彼の作品集は、Helmut Schmid: Gestaltung ist Haltung / Design Is Attitudeと題されている。

 

it is not coincidence that makes a designer but his continuity. and continuity means working and searching, working and fighting, working and finding, finding and seeing, seeing and communicating, and again working and searching. designers must challenge the past, must challenge the present, must challenge the future: but first of all, designer must be true to themselves. design is attitude.

fortunate is the man who, at the right moment, meets the right friend; fortunate also the man who, at the right moment meets the right enemy.

デザイナーがデザイナーになるのは偶然ではなく、その人の継続性である。継続性とは、働いて探索して、働いて闘って、働いて見つけて、見つけて見て、見て伝えて、そしてまたもや働いて探索して・・・を繰り返すことである。デザイナーは過去に挑戦しなくてはならない。現在に挑戦しなくてはならない。未来に挑戦しなくてはならない。しかし何よりもまず、デザイナーは自分自身に対して正直でなくてはならない。デザインは態度である。

適切な瞬間に適切な友と出会える人は、幸運な人である。 そしてまた、適切な瞬間に適切な敵と出会える人も、また幸運な人である。

(Helmut Schmid: Gestaltung ist Haltung / Design Is Attitude)

 

f:id:peru:20180717171847j:plain

 Josef Müller-Brockmann (1914-1996)

スイス・スタイルを生み出したジョセフ・ミューラー=ブロックマン。彼もまた真摯にグラフィックデザイナーの持つべき姿勢、態度を真摯に考えていた。

 

50年代末。私は自分の職業的活動をより意義深いものとするため、あらたな方針を定めた。それは造形者として一般社会に害となり得る仕事の依頼は全て断るというものである。当時、私はトゥルマックたばこの宣伝を手がけており、チューリッヒ中央駅構内の左右全面に、さまざまな社会階層の人々が喫煙する姿をモンタージュした大型の写真壁をデザインしたのだが、タバコの作付けから収穫、工場での加工、梱包までを説明する12のショーウィンドウをデザインすることで喫煙が健康に与える悪影響を知った。
(ヨゼフ・ミューラー・ブロックマン 遊びある真剣、真剣な遊び、私の人生 P49)

 

感情というものは、人間は十分に持っています。ことにデザイナーになろうという人で感情を持たないものはいないでしょう。だからグラフィックデザイナーに必要なのはインテリジェンスです。それを私は訓練させたいですね。[・・・]学校の使命というのは感情と同時に、考え方、態度をひっくるめたものを養わせなければいけないんで、それはある特定な作業過程を経て助長されるものだと思います。プロパガンダ(広告の意)の仕事が良いか悪いかは、考え方が決めるので、考え方というのはその作者と結びつき一体にならなければならないことです。まずそれを養うことですね。
(大阪で行われたシンポジウムでの発言1960, 前掲書P226)

 

現実にはだれもが感情と理念のバランスをとりながらデザイナーとして活動している。今も昔も感情と理念を両立させることは、デザイナーに求められる重要な資質と言ってよい。だが、肝心のバランスの取り方は個々のデザイナーに委ねられているのが常で、そのために曖昧で、不確定で、言語化されることさえ滅多にない。
グリッドシステムはこの問題に正面から向き合った、筆者の知る限り唯一のデザイン美学である。
(解題:美学としてのグリッドシステム 佐賀一郎, 前掲書P228)