今年の春に告知された新学習指導要領で、普通科の高校生も必修でデザインを学ぶ時代になるという記事を過去に書いたところ、大きな反響があった。
実は情報デザインという項目は、専門学科「情報科」においては、一足早く現行の指導要領に入っていてすでに独立した科目として運用されている。専門学科「情報科」というのは、いわゆる高校の普通科ではなく職能育成をねらった学科で、商業科、工業科、と同じような感じで情報科というカリキュラムが組まれているもの。全国で19校設置されている。
こちらも指導要領も変わるはずなので、どうなったのか学習指導要領を見てみると・・・思わず驚いた。デザインの重点化が凄い!
もちろん沢山ある科目の一つとしてだけれども、かなり細かいところまで学ぶことになるようだ。情報デザインだけで70時間の授業(おそらく1単位35時間を2学年にわけて学ぶ)。
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第9 情報デザイン
1|目標
情報に関する科学的な見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して,情報デザインの構築に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
- 情報伝達やコミュニケーションと情報デザインとの関係について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付けるようにする。
- 情報デザインの手法,構成,活用に関する課題を発見し,情報産業に携わる者として合理的かつ創造的に解決する力を養う。
- 情報デザインによる効果的な情報伝達やコミュニケーションの実現を目指して自ら学び,コンテンツやユーザインタフェースのデザインなどの構築に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
2|内容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導する。
〔指導項目〕
- 情報デザインの役割と対象
ア 社会における情報デザインの役割
イ 情報デザインの対象 - 情報デザインの要素と構成
ア 情報デザインにおける表現の要素
イ 表現手法と心理に与える影響
ウ 対象の観察と表現
エ 情報伝達やコミュニケーションの演出 - 情報デザインの構築
ア 情報の収集と検討
イ コンセプトの立案
ウ 情報の構造化と表現 - 情報デザインの活用
ア 情報産業における情報デザインの役割
イ ビジュアルデザイン
ウ インタラクティブメディアのデザイン
3|内容の取扱い
(1) 内容を取り扱う際には,次の事項に配慮するものとする。
- 情報デザインに関する具体的な事例を取り上げ,情報伝達やコミュニケーションと関連付けて考察するよう留意して指導すること。
- 実習を通して,情報の収集,整理,構造化,可視化などの学習活動を行わせるとともに,地域や社会における情報伝達やコミュニケーションに関する具体的な課題を設定し,解決の手段を作品として制作,評価及び改善する学習活動を取り入れること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
- 〔指導項目〕の(1)のアについては,具体的な事例を取り上げ,社会において情報デザインが果たす役割について扱うこと。イについては,情報伝達やコミュニケーションの仕組みとそこで使われるコンテンツを扱うこと。
- 〔指導項目〕の(2)のアについては,形態や色彩とその働きについて扱うこと。イについては,造形や色彩が人間の心理に与える影響と,情報デザインへの応用について扱うこと。ウについては,対象を観察する方法と,その結果を表現する技術について扱うこと。エについては,レイアウトや配色などを扱うとともに,意味や考えの演出についても触れること。
- 〔指導項目〕の(3)のイについては,目的を明確にしてコンセプトを決める方法を扱うこと。ウについては,コンセプトに沿った情報の構造化と表現を扱うこと。
- 〔指導項目〕の(4)のアについては,製品やサービスの普及,操作性やセキュリティの確保において情報デザインが果たす役割について扱うこと。イについては,視覚情報の提供について考慮したデザインを扱うこと。ウについては,双方向性について考慮したデザインを扱うこと。
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おおう、こんなに体系的に情報デザインを学ぶのか。というか個人的に気になるのは、いったい誰が教科書を書くんだろう・・・。でも情報科は他にも総合的学習とか盛んなので、いくつかの科目をちゃんと専門的に教える学校が出てくればデザインスクールと呼べるものに近くなっていくのかもしれないな。
柏の葉高校の情報科教諭をしているM先生はうちの学部の卒業生で、数少ないデザインを専門とする先生である。彼女の話ではまだ情報科にデザインを専門で教えられる先生はとても少ない様子。この指導要領をどこまで実現できるかは悩ましい問題だろうけど、これまでの情報産業より創造性重視の人材を育成しようとする方向性は、攻めていて良いことだと思う。時間があればいつかワークショップにでも行ってみたい。