Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

民藝運動が持っていた「将来への志向性」

https://www.meiji.ac.jp/press/list/la_sciende/6t5h7p00000ib39h-img/poche3_shoei.jpg

 

先日,ACTANTの南部さんと話している際,昭和初期の民藝運動と近年のデザインの民主化の潮流との関係の話になった.その時彼から薦められた鞍田先生(明治大)の本が面白かったので,ちょっとメモ.

______

 

民俗学と民藝の関係というのは,たいへん興味深い点であり,もうすこしだけ当時の議論を紹介しておきましょう.いま引用した論考で主張されている内容は,昭和16年(1941)に東京帝国大学人類学教室で行われた講演要旨ですが,その前年に行われた柳田国男との対談をふまえたものです.いうまでもなく柳田は我が国の民俗学を確立した人,対談は柳の支援者である式場隆三郎の司会で行われました.

式場:[前略]つまり民俗学という学問は,過去を知るための学問なのですか.それとも現在あるいは将来につながる学問ですか.

柳田:それはもちろん,民俗学とは過去の歴史を正確にする学問です.だから将来のことはわたくしどもの学問の範疇ではないんです.[中略]

式場:そうすると,たとえば民俗学というようなものには,直接的な文化的行動性というようなものはないんですね.

柳田:ええ,そういうものはないんです.今の歴史には将来のことを論じたり,現代人の心得方を論じたりしているものがあるけれど,あれはわれわれから見ると,歴史という学の方法に入るものではない.[中略]われわれは事実を正確に報告するだけで充分です.

柳:つまり民俗学は経験学として存在するのですね.
式場:すると民俗学というものはわれわれの民藝とは大部ちがったものですね.柳先生いかがですか.

柳:僕の方は経験学というよりも規範学に属していると思います.かく在るあるいはかく在ったということを論ずるのではなくて,かくあらねばならぬという世界に触れていく使命があると思うのです.そういう点は民藝と民俗学は違います.

柳田:それははっきり違う.われわれのほうにそうしたものはない.

柳:だから民藝の方でゆけば,価値論が重きをなして,美学などに関係するようになってくる.

柳田:結局そういうことになるでしょうね.

(民藝と民俗学の問題 柳田國男柳宗悦:対談)
月刊民藝第13号,1940 26-27頁

規範や価値の追求の有無という点で民俗学と民藝は決定的に相違します.先に示した民藝の2つの基本要素はまさにそうした価値や規範に関わるものといってよいでしょうが,ここであたらめて確認しておきたいのは,とりわけそのうちの現代性こそが民藝の価値・規範追求の駆動力となっているということです.現在を論じ,そうして将来を志向することこそが,民藝の本旨です.

 

「民藝のインティマシー—「いとおしさ」をデザインする 
鞍田崇 明治大学出版会2015  p51-52

 

ふむ,不勉強でよく分かってなかったが,民藝運動は人々の普段づかいの民具の中にある「用の美」を見出しただけでなくて,その奥には「現在から将来への志向性」があったのか.そこは確かにアーツ&クラフツ運動にあったように,「デザイン」として現代に引き継がれている思想と一致している.