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みえないものを、みる視点。

講演記録:社会のものさしがかわるとき

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7月16日(日)、横浜市栄区の市民団体である「さかえdeつながるアート」のお招きで講演してきた。これは横浜市の地域文化サポート事業のヨコハマアートサイト(というものがあるそうです、横浜市羨ましい)の支援を受けた市民向け活動の一環で、昨年度に引き続き大人世代が学ぶ場としての「おとなのキャリア教育講座Part2」という位置づけである。

たいへん暑い日、しかも3連休のど真ん中にわざわざ来て下さったオーディエンスは栄区の一般の保護者の方々・・・かと思っていたら、地元PTAの役員や地域コミュニティで重要な役割を担っている方々、専門職の方々が中心で、みなさんとても熱心に聞いてくださって感謝。

 

内容は大きく3つ。

1)デンマーク社会の事例をもとに、自分たちの社会を構成している"ものさし"(価値基準)を再考してみる。

2)AIの発展予測にともなう社会の変化と必要な力の変化を知り、自動化されにくい(人間の強みである)「創造性」「社会的知性」について考える。

3)議論ではなく、「対話」の方法と意味を考える。

 

この講座は午後の2時間。結構長いかもなぁ、と思っていろいろ準備してみたが、途中に対話や共有を取り入れたら意外にあっという間にすぎてしまい、消化不良でもったいなかった。産技大の卒業生でもあるSさんに、「デザインではなくてコミュニケーションに特化した話をされたのがとても新鮮でした」と言われたが、何を隠そう、ぼくは邪道の人間なので、大学でも川崎市との連携講座でも、デザインという言葉をなるべく使わないで勝負する機会は割と多いのだ。

 

講演の中で、割とみなさんが面白がってくれたのが、「象と象使い」の喩え話。

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このメタファーについては、僕は社会心理学者のジョナサン・ハイトの「社会はなぜ右と左に分かれるのか?」で言及されていて知ったが、彼の前著「しあわせ仮説:古代の知恵と現代科学の知恵」の中で詳しく説明されている。

 

ハイトによると、人間の心は、無意識で自動的なプロセスの上に言語でコントロールできる意識的な思考回路が被さっているもので、その仕組みは、[象]の背中に乗る[象使い]のようなものだという。手綱を引くことで、象に指示をだすことはできる。しかし、それはあくまで象が素直に従ってくれたときだけである。象が他の欲望を持っていたら象使いにはなすすべがない。だからハイトは、「誰かの考えを変えたければ、まず[象]に語りかけるべきなのだ」という。

 

人は論理だけでは動かないというのはよく言われることだけど、意識的な思考と自動的な感情が協働することで心を構成している、というこのメタファーは僕自身とても腑に落ちる。これを知ってから、行動をうまく制御できない子供に接した時に「象使いがまだ訓練中なのだ」と理由がちょっと分かるようになった。我々はそれぞれ象に乗りながら対話していると思えば、対話を諦める前に、もうすこし幅広いコミュニケーションの方法を探れる・・・のかもしれない。

 

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上の写真は参加者の方から頂きました。ありがとうございます。

 

■さかえdeつながるアートのブログ

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■昨年度の「おとなのキャリア教育講座Part1」

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