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みえないものを、みる視点。

雑草による花壇を見て考えた

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子供といっしょに歩いて居る時、ナガミヒナゲシがあちこちに繁殖しまくっていることに二人で気がついて、"悪い植物"の話になった。

 

「このお花はなぜ悪いの?」という小1の素朴な質問に、善い奴・悪い奴を人間の都合で勝手に決めるのはなんだか思考停止な気がして、いろいろ冗長な説明を試みたのだが、うまく言葉に出来ず悔しかった。

 

写真でオレンジ色っぽい花を咲かしているのがナガミヒナゲシで、白い花がハルジオンである。この狭い空き地は、アスファルト化を免れたせいで雑草が生い茂っているが、何も知識がない状態で見ると、「かわいい花が咲いているな、このスペースはまるで花壇のようだ」と思うだろう。

 

いままでも目にすることがあったであろうこのナガミヒナゲシ、今年になって急に気になったのは、本当に恐ろしいほど増えていて、囲まれている印象があったからです。ほんの少しでも土が露出しているところなら、ところ構わず大量に生えている。そんなナガミヒナゲシに恐怖を覚えたんですね。

「これはやばいのかも」

と思って調べてみたらさもありなん。危険外来種として取り扱われている、典型的な「ヤバイやつ」そのものでした。

ナガミヒナゲシが幹線道路沿いを埋める…危険外来種を超えるオレンジ色の悪魔 [エアロプレイン]

 今、ちょうど花が咲いている真っ最中なのでよくわかるが、ナガミヒナゲシは本当に都内で増えまくっていて、根にはアレロパシー(他の植物の成長を抑制する物質を出す)があるというし、しかも花が落ちた後の実には1個体につき15万粒の種子が入っているという話で、花の横に実がたくさんついているのを見ると、思わずぞっとしてしまう。

ナガミヒナゲシが道路沿いを中心に急速に増えているのは、どうやら自動車のタイヤによって種子が運ばれているということ,コンクリート付近のアルカリ性土壌を好むということらしい。現代のモータリゼーションや都市環境が繁殖することを媒介しているというわけだ。

 

一方で白い花をつけているハルジオンは、これもまたどこでも生えている草である。もともと100年ぐらい前に観賞用として持ち込まれたもので、1970年代に度重なる除草剤被曝を受けた結果、生き残った除草剤に耐性を持つ株が繁殖し日本中を席巻しているんだそうだ。刈り取りや踏み付けなどの物理的負荷にも耐性があるとのこと。不気味なほど強い草だが、気の毒なことに「貧乏草」とも呼ばれているらしい。

 

そんな知識を持って上の写真の雑草による花壇を見れば、決してのどかな状態とは言えないことが見えてくる。でも、人間によって悪者呼ばわり(侵略的外来種)されているわりには、経緯を知れば、結果的に人間社会が繁殖するのを手助けしていることは、なんだか考えさせられる。「雑草という名の草はない」というのは昭和天皇の名言だが、植物もよく見てみると、それぞれいろんな生存戦略があることに気付かされる。

 

最近、植物をちょっと真面目に見るようになったのは、実は今年の研究室で「やっかいもの外来種にもうひとつの役割を与える」ことに挑戦しはじめたからでもある。例えばセイタカアワダチソウで草木染めすると、けっこう良い感じの黄色に染まるのだ。染め物だけだと従来の小物や衣類程度しか展開できないので他のデジタル造形技術と掛け合わせることを模索しているところ。これは尊敬する若杉さん達のスギダラケ倶楽部の影響なのだが、やっかいものに違う価値を見出すには、デザインの知恵はいろいろと活かせるんじゃないか、と思っている。

 

 追記(2017.5.8)

ナガミヒナゲシについては大騒ぎするようなことじゃないという意見も多いようだ.なるほど.

togetter.com