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みえないものを、みる視点。

トークイベント「デザイン思考"以後"とクリエイティビティの行方」開催報告

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2月24日(金)、東京ミッドタウン・インターナショナルリエゾンセンターにて「デザイン思考"以後"とクリエイティビティの行方」を開催した。プレミアムフライデー初日ながら、勉強熱心な方々約60名に集まって頂いて大変熱気のあるイベントとなった。

 

そもそもの発端は、3ヶ月前に遡る。11月下旬に書いた「デザイン思考の今後」という記事が多くの人にシェアされて(トータルで10,000viewは行ったと思う)、意外にみんなこの話題に関心があるんだなあ、と気付かされたことと、この記事にGKの柴田さんが手短なコメントを下さったことである。

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ここからいろんな人に構想を話しているうちに、いつの間にか第一線の話題提供者および気鋭のヴィジュアルファシリテータの内諾を頂き、会場は日本デザイン振興会から東京ミッドタウン中にある品位ある場まで提供して頂く、という多くの方々の援助を得て、あれよあれよと運良くも実現に向かって進んでいった次第。チケットも速攻で完売し、なんとか開催まで漕ぎ着けることが出来た。

 

僕自身の問題意識としては、「デザイン思考」という言葉に特別な思い入れがあるわけでなくて、イベントの開催概要に書いたように、概念ややり方を得たことで安心していないでどんどん自分たちでアップデートしていかなきゃいけないはずのに、その辺を共有したり議論したりする機会が(少なくとも自分が)少ないということだった。あまり知られていないが、デザイン思考という言葉は、世界では地域性を取り入れながら独自に解釈されている。(例えばTakramの佐々木さんが書かれている「シカゴ派のデザイン思考」、 北欧の「Design Thinking (Democratic Design experiments)」など。両者とも、もともと育んできた地域の文化と融合していることがポイントだ)翻って日本の場合はどうなんだろう?本場のやりかたを有り難がるよりも、間違いを恐れずに自分たちの文化の中で受容して、そこで新しく解釈して言葉を生み出していくことが大事なのではないか、ということを時折考えていた。そういうわけで、そのヒントを得るために、自分が参加したいイベントを自分で作ったということになる。

 

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話題提供者1:武山政直先生(慶應義塾大経済学部教授)「政策および公共サービス改革へのデザインアプローチ」。サービスデザインはビジネス分野から公共分野(パブリックセクター)に拡がっており、政策決定プロセスという抽象的なものにデザインを積極的に活用していく欧州での取り組みを紹介して頂いた。

なかでも英国のPolicy Labの事例が大変興味深かった。大規模な政策をいきなり運用するのではなく、切り出したコミュニティの中で実験や学習を行い、実行のループに移行していくというアプローチを、デザイナーが主導してデザインしているそうである。先にプランを決めてしまわないで反復しながら探索していく、というのは予期できないやっかいな問題を進めていくためには重要な姿勢である。

Applying Design Approaches to Policy Making: Discovering Policy Lab. University of Brighton , Lucy Kimbel

(リンク先のレポートPDFはグラフィックデザイン的にも大変面白いので必読) 

Policy Lab uses an approach and expertise based in design to help the policy community explore and develop new capabilities in generating and interpreting early-stage insights, engaging with delivery partners, specialists and stakeholders, and closing the delivery gap between policy intent and outcomes.

こういったデザイン主導の考え方は、日本の行政ももっと真剣に考えなければならないことだろうし、ついでに立案の関与者だけではなく、失敗は絶対に許されないという社会的な圧力はもっと問題である。共有ボードのコメントに書かれた「何もしないことは後退であり、多少の失敗は学びで進化に必要なプロセスという文化が求められるように思います」というのは正しくその通りだと思う。

 

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話題提供者2:柴田厳朗氏(GKリサーチイニシアチブ取締役)「異邦の鳥・野生・その他」。文学的なタイトルで内容がさっぱり読めないことが個人的にツボで(笑)大変楽しみにしていたが、今回のイベントの問いに真摯に応えて下さって大変刺激的なトークだった。柴田さんはスライドを共有して下さったのでリンクする。

 

speakerdeck.com

当日のアンケートでも反響が一番大きかったのだが、われわれが聴き入ったのは漠然と思っているようなことを次々と言い当てていくようなコンテンツに加えて、語り口も大きかったと思う。長年デザイン業界にいらっしゃる経験や幅広い教養をもとに、思索を重ねられていることがよく伝わってきた。デザイン思考も長い歴史を参照してみれば取るに足らない概念だし、人の観察や共感でわかる「不満」なんてものはほんのちっぽけなもので、その水面下には膨大なことが埋め込まれているという指摘はその通りで、表面的なデザインワークでは問題点をすばやく解決しようと急ぐあまりしばしば「無いこと」にしてしまうが、(素人もプロも)その厚みをよく考慮する必要があるはずだ。

 

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話題提供3:佐宗邦威氏(株式会社ビオトープ代表取締役) 「ビジネスとデザインの交差点の先にみえてきたもの」。デザイン思考と言えば、佐宗さんは大きな存在感を放つ人。多忙を極めており、基本的に講演の類は受けていないとのことだが、今回のイベント主旨に共鳴して下さり、かなり無理してお越し頂いた。

さて、佐宗さんの著書「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」はベストセラーにもなっているが、執筆を終えた時には著者はもうそのテーマからは卒業している、というのはよく聞く話。佐宗さんもやはり「"創造的問題解決"と言ってきたけど、今やっていることには合っていない」と認めていた。顧客視点から事業を始めたが、現在経営者視点で組織風土開発を中心に手がけているきっかけとして、岡田監督(元サッカー日本代表監督)とのお仕事での出会いと岡田氏の語る言葉に感銘を受けた経験を挙げられた。一般の人々の持つイメージを脱ぎ捨てて大きく取り組みを変えていることが印象深かった。

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 ここで軽食。ドリンクとサンドイッチ、フリートークで気分転換。

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 第二部のディスカッション。申し込みされた方々のリストを眺めながら、ここまで面白い方々がたくさんいらっしゃるのだから、話題提供者のパネルディスカッションではなくて、いろんな人にマイクを振りまくっていこうと決めた。富田さん、佐宗さんと相談しながらシートをつくり、来場者のみなさんから事前に集める。1枚名は「デザインに対してもやもやしていること、物申したいこと」など。2枚目は、「"これまでのデザイン"と"これからのデザイン"」に関する持論のキーワードを書いたもの。多様な回答が集まって見応えがある。これをもとに来場者を含めて議論していく、というものである。そして、ある疑問に対してもっとも適切なコメントをするであろう人をピンポイントで指名したりしながら、無理矢理進めてみたけど、結果的には僕の司会力不足で撃沈。そもそもこの多様な話題をまとめるのは無理があるが、発言者の話を聞きながら次の内容を同時進行でさばくのはとても難しかった。でもみんなが今何を考えているのかが見えたのは、自分で主催したからこそというか、大きな収穫だったと言える。

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 この日の話題提供、議論、参加者のシートなどの全記録は、東海大富田研究室によってリアルタイムで記録された。6名のカーソルがミツバチのように飛び交い、記録されていく様子はなかなか壮観だった。(記録はちょっと文脈が途切れているところもあるので、データは一般公開はせず、来場者のみの共有となります。読みたい方は富田先生にお問い合わせ下さい)

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 最後はフリートークとネットワーキング。

反省点ばかりであるが、みなさん大目に見て下さり、なんとか盛りあがってよかった。こういうイベントは普段の行動範囲では会わないような人と出会えることも魅力の一つである。(内閣府経産省の方も来られていたので、武山先生はじめこの場に集ったデザイナー達のネットワークも霞ヶ関へと繋がり、新しい接点が生まれることも期待したい)

 

長くなりましたが、最後に。いろんな人から「まとまってないから、是非続編を!」との叱咤激励を頂きましたが、続編は考えていません。次にまたなにか新しいネタがある時に企画を考えたいと思います。参加者のみなさま、関係者のみなさま、ご協力ありがとうございました。

 

過去の上平企画のイベント

vol.1 DESIGN GAME from Denmark to Japan ( 2013.2.2 コクヨ)

vol.2 Sociology meets UX モバイルUXを分析するWS  ( 2013.9.11 ロフトワーク)