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Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

独裁者は民衆がつくりだす

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 ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く (岩波新書)

 

熱狂的なトランプ支持者はアメリカの都市部ではなく、地方都市にいる。どんな人々がトランプを支持しているのか、どんな期待を抱いているのかについて、統計からは見えてこないリアリティのある声が、新聞記者による丹念な取材で記録されている。トランプは没落しつつある白人達の絶望と怒りを自覚させ、鋭い暴言を繰り返しながらそれを焚きつけていった。読んでいるとアメリカはもはや別々の国に分断されてしまっているのだな、ということと、独裁者を望み作りだしているのは、本当に普通の人々なんだな、ということを思わされる。

 

闘うべき共通の敵(アメリカの場合でいえば、不法移民や自由貿易)を描き出されると、人々は問題意識に共感する。敵を倒せば問題が解決すると素朴に思い込んでしまう。そして敵を倒すために結束し、高揚感に浸る。

 

こういったことは、遠い場所の話しではなく、実際に身近な場所でも簡単に起こりうることだからこそ怖い。今では忘れられているかもしれないが、以前、日本の地方自治体でも実際に独裁者が誕生した。

 

ある地方の街において、閉塞感にあえぐ人々は改革を求めて、鋭い物言いをする政治家を選ぶことになった。彼が使った方法は、(共通の敵としての)「公務員叩き」だった。彼は地元民にうっすらと横たわっていた不公平感や、行政への不信感を激しく煽った。実際には新規産業をつくって市全体の雇用や税収を増やすような未来のビジョンを示しているわけではないのに、ぼんやりとした不満の正体のようなものをえぐり、人々の目の前に差し出した。多くの人がそれまでの鬱憤をもとに「それは許せない」と共感し、特権階級を引きずりおろすことが自分たちの役割だと思い込んだ。特に善良な農村部のお年寄りたちは、そうすることで自分たちの不満は解消され、よい社会が訪れると錯覚した。熱狂的に支持する側と冷静に反対する側に分断され、家族でさえも対立させた。議会とも激しく対立して市政は混乱した

 

先のアメリカの問題とも結構似ている。

 

「あのどこにでもあるような街でも、たった一人の人間が刺激するだけでこんな風になっちゃうのか」と遠くから絶句したことと、ゴタゴタを経て同じ学年だったN君が新しい市長になるまでのハラハラは、たぶん一生忘れない。