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みえないものを、みる視点。

廃棄物専門スーパーWeFoodでの顧客体験を考えた話

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先週のこと、世界初の廃棄物専門スーパーマーケットwefoodが大学の近くにオープンした。いわゆる賞味期限間近のものを格安で仕入れるディスカウントストアとは違って、「廃棄物」扱いになった品物を提携先から寄付してもらって売る、という世界初の試みらしい。

 

ほとぼりさめた頃に行こうかと思っていたのだけど、日本の皆さんもすごい勢いでシェアしているので気になってちょっと予定を早めて行ってきた。人気で品薄との噂を聞いて開店(15:00)と同時に行ってみたら、すでに結構な行列がw 地元でも話題になっているのでみんな物珍しさで来ているんだろうな。

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たしかに品数は少なく、日本の農産物直売所よりもだいぶ少ない。いくつか野菜買ってみた(葱、パプリカ、レタス)けど、普通に見切り品ぐらいの値段である。

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スタッフはみんなボランティアだそうだ。まだレジにも慣れてないようで一生懸命操作していてほほえましかった。

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パイ生地のアイス(?)箱入りで3DKK(50円ぐらい)。

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瓶入りジンジャーエール。10DKK(170円ぐらい)。デンマークは元が物価高いので我々にとってはあまりお得感を感じないw

こんな感じでロットがやたらと多いものを並べてあるのが印象に残るが、基本的にはこういう在庫処分品をどこまで集められるか、ということにかかっているのが実状か。

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ただ、デザインにはだいぶこだわっていて、しゃれた店舗設計やショップのグラフィックもクオリティ高い。・・・・なのでなおさら実際の運用が負けている感じが際だつ。

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まだ部分開店なのだが、まだオープンしていない部分の窓から大量に先程のジンジャーエールが積まれているのが見えた。一体どれだけ売れなかったんだろうか。

そしてなんと隣は八百屋で、閑古鳥鳴いている。店主は複雑だろうw

 

www.independent.co.uk

・日本のメディアはスルーしているけど、転載されてバズってる記事の写真の女性、皇太子妃のメアリーだ。日本で言えば雅子様の立場の方で、佳子様ぐらいの絶大な人気がある。この店の先週のオープニングセレモニーに出席したらしいが、王室まで見に来るってのは相当関心高いのだな。

 

・ライターっぽい女性が写真とっていたので、話かけてみた。なんとチェコから(何かのついでらしいが)取材に来たそう。チェコでもこの取り組みは話題を呼んでいるの?と聞いたら「もちろん!この間フランスが法律つくったように、ヨーロッパ中が食品ロスの問題には関心高いわね」と答えてくれた。「日本はどう?」と聞かれたが・・・・うまく答えられなかった。このスーパーができたという話題は、いろんな人がシェアして何度も流れてくるから関心高い人はきっと多いはずだが。

 

・日本でも食品ロスの問題に一人一人の人間が関心をもつ地点までは来ているとしよう。しかしそこからさらにデンマーク人はそういうアイデアを「仕組み化」するのがめっぽう上手い。単純な利益以外の目的を持つNPOやソーシャルベンチャーが盛んだし、そういう人達だけでなく政治家や企業トップもすぐ即決して行動に移す。このあたりのスピーディな動きや社会のポジティブな解釈を見ていると、日本のがんじがらめの法規制や、お腹壊したら誰が責任とるんだ的な世論からはだいぶ先を行っていると思わざるを得ない。

 

・さて、お店自体の印象としては、上でも書いたように企画運営者のオペレーション以上に社会の期待もあって話題性の方が先走っている感じだが、それに加えて、よく考えればこの店は難しい問題を抱えている。

 

・まず顧客に求められている商品は大体売れてしまうわけで、大量に残って寄付されるのは不評だった(?)商品が中心だろう。そうなると、お客さんが面白がってお店に来てみたはいいが、不人気商品ばかりで買いたいようなものがない、ということになる。安いとは言っても、あのくらいの値段なら他のディスカウントストアでもそれほど変わらない。

 

・同じように食品ロスを減らす活動をしているRub&Stabの場合は、売れ残りの食材をコックによってその時その時の食材の組み合わせによって可能な、どこにも代替のない美味しい料理、という即興的な創造性によって作られた体験をサービスとして提供している。

 

・つまり期待値が低いことを逆手にとった驚きを作り出しているわけだ。食品ロスを減らす、という目的は同じでも、このwefoodのコンセプトがこの後も持続できるかは、そういう意表をつける体験をつくりだせるかどうかだろう。チャリティーだけではリピーターをつくっていくのはちょっと難しそうだ。

 

・これらはあくまで現状の問題だし、まだスタートしたばかりで、これからトライアンドエラーを繰り返してしていくんだろうけど、むやみに不人気商品で棚を埋めるよりも、まずそのあたりを考えることが鍵になりそうだ、と思った。

 

www.noedhjaelp.dk