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みえないものを、みる視点。

参加型デザインの原型

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先日訪れた国立博物館で興味深い事例を見つけた。1902年からから1964年まで存在したコペンハーゲンのビール醸造所「STJERNEN」(英語で「STAR」の意味)。北欧は古くから社会民主主義の背景のもとで労働運動が盛んだったことは知られているが、ただ権利を叫ぶだけではなく、理想的な社会を実現していくために実際にいろんな試みが行われてきたらしい。

 

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労働者たちはたくさんビールを飲む。ということは、ビール好きの労働者を雇って彼らに仕事として自分たちも飲むビールを醸造させようじゃないか、そうすればいわゆる雇用者/労働者の上下関係ではなく、自分たちが生み出す製品に誇りが持て、会社とももっといい関係になるに違いない・・・という思想をもとに、いろんな人々がお金を出し合ってこの協調的アプローチによるビール醸造所が作られた、という。

 

いいアイデアだと思うが、実際に運営してみると、労働者たちは飲み過ぎで苦しんだりしたらしい(笑)が、安価で高品質のビールを提供し、第二次世界大戦後まではけっこう知られたブランドだったという。

 

http://modkraft.dk/sites/default/files/styles/span-8/public/det-kooperative-alternativ_0.jpg?itok=fYi_dXOb

この試みは、労働者に権限移譲してモチベーションを上げるという利点と、愛飲者をスカウトして製造工程に参加させて一般大衆にも支持されるビールを作った、という品質向上の利点を同時に成り立たせていたところが面白い。マス・プロダクションに労働運動として労働者を参加させた60年代のころに参加型デザインが発祥した、というのがよく言われている説だが、それよりずっと前からあったのだな。

 

ビール作りとしても、日本でも最近サッポロビールがユーザ参加型の企画「百人ビール・ラボ」を実施しているが、なんと100年以上前のことである。

 

 

www.arbejdermuseet.dk