Kamihira_log at 10636

みえないものを、みる視点。

図書館におけるもうひとつのアクセシビリティー

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用事を終えてちょっと小暇ができたので、パソコン作業のために近所の図書館に寄ってみた。このOrdrup図書館は小さいけれども軽快な色合いの内装でとても美しい。本棚の上に施されている傾きは、寝そべって本を読めるようにだろう。

 

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なんでデンマークではあちこちにこんなにユニークな建築があって実際に好感をもって利用されるのか、そもそもそんな(明らかに金かかっている)案が公共の建築のコンペで勝てるのか、について、先日お会いした方から面白い話を聞いた。

 

図書館はこちらの方々にとっては自分たちの利用する公共サービスの代表格として、とても愛されている施設らしい。その地域のための図書館をつくるのだから、ちょっとリッチな体験ができる建築や、心地よい什器や照明を入れよう、そのためには予算をちょっと多めに税金から支出しよう、というのは市民の総意らしい。

たとえ自分の家ではいい家具を買いたくても経済的な問題でイケアの家具で我慢している人も多い。でも、図書館に行けば、身分を問われることもなく誰でもいい椅子に座って心地よい空間でくつろぐことができる。いわば万人がリッチな読書体験にアクセスできるための場所でもある・・・、というわけだ。

 

日本なら「公立の図書館にそんな贅沢な」という反対の声もありそうだが、こちらでは結果的に、まったく逆の「公立の図書館だからこそいい空間を」となる。しかしながら、だから日本はダメだ・・・、と愚痴になるのもまた早計というもので、デンマークには平等をつよく意識する社会民主主義の背景もあるだろうし、さらに言えば、過酷な長い冬を過ごす中でメンタルを健康に保つためにはインテリアは死活問題という気候の問題もあるんだろう。公共の建物ひとつとっても、なぜそうなのか、をよく見ていけばいろんな背景がある。